著者
玉森 豊 西口 幸雄
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.959-963, 2014 (Released:2014-08-20)
参考文献数
7

PEGは経腸栄養の重要性の認識とともに認知度が高まってきている.PEG造設法には Pull/Push法と Introducer法がありそれぞれに利点・欠点があるが,最近はIntroducer法の欠点を補った Introducer変法によるキットが多用されるようになってきた.Introducer法では胃壁固定は必須でありPull/Push法では固定なしでも可能であるが事故抜去の可能性などを考えると固定が望ましい.交換法については瘻孔損傷をしないように愛護的におこなう必要があり,ガイドワイヤーやスタイレット同梱のキットであればそれを利用するのもよい.確認には内視鏡等の観察下におこなう直接確認法と,交換後のカテーテルから造影したり内容液を吸引したりする間接確認法があり,間接確認法の場合は内部バンパーの瘻孔内留置を見落とす可能性があることを留意すべきである.最近超細径内視鏡を経胃瘻的に胃内に挿入する確認法もされつつあり,低侵襲で確実な確認法であることから今後の普及が待たれる.

1 0 0 0 OA 栄養管理とQOL

著者
山中 英治
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.799-803, 2014 (Released:2014-06-23)
参考文献数
6

高齢社会となり入院患者も高齢化している。栄養管理とくに強制栄養が、単なる延命治療ではないかとの批判もある。高齢者は入院時栄養不良も多く、栄養不良では術後の回復も遅れ、筋力や免疫能を始めとする体力も低下しやすい。 体力低下は離床の遅れにつながり、入院中の嚥下機能低下、誤嚥性肺炎、褥瘡なども発生しやすい。結果的に動けない、食べられない、家に帰れないことになれば、QOLは大きく低下する。ゆえに適切な栄養サポートは重要である。 周術期の栄養管理についても、不要な長期間の絶食や輸液は患者のQOLを低下させることになるので、科学的根拠に基づいた栄養管理で標準化すべきである。また、静脈栄養よりも経腸栄養が生理的で安全であるが、最もQOLが良好なのは、経口摂取すなわち食事である。生命維持だけが目的ではなく、美味しく食べてこそ、生きている喜びがある。
著者
荒金 英樹 井口 美保子 見越 志麻 仁田 美由希 松本 史織 閑 啓太郎 北川 一智 宮川 淳 徳地 正純 宮本 保幸
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1381-1385, 2012 (Released:2012-12-17)
参考文献数
8
被引用文献数
1

京都府歯科医師会による口腔サポートセンター事業は歯科の併設されていない病院、施設へ歯科チームを派遣し、病院、施設、在宅間の継続した歯科治療、口腔ケアを目的に設立、当院でも2008年より介入が開始された。当院での口腔サポートセンターの活動状況と看護師への意識調査を行ったので報告する。口腔サポートセンターへの依頼は2012年4月現在250名、平均年齢は79.5歳、科に片寄りなく利用されていた。月平均利用者数も年々増加、その活動は院内で広く認知されていた。看護師からは口腔環境の改善、業務負担軽減で高く評価され、継続した介入をほぼ全員が希望した。しかし、退院後の継続利用は10%程度に留まり、院内での連携の問題や退院後の継続利用への理解等の課題も浮き彫りになった。口腔サポートセンターは、院内での栄養サポートチーム (Nutrition support team; 以下、NSTと略) 活動にとって有用な活動であり、今後、栄養を介した地域連携の核となる可能性があると考えられる。
著者
三原 千惠
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.1371-1378, 2011 (Released:2011-12-19)
参考文献数
23
被引用文献数
1

脳卒中後の神経症状として嚥下障害は頻度が高く、栄養障害をきたす原因のひとつとして重要である。また誤嚥による肺炎は予後を悪くする危険性が高い。したがって、早期より適切な嚥下機能評価と栄養管理を開始することが必要である。脳卒中の症状は意識障害と片麻痺などの神経症状が中心であり、時間とともに変化する。安全かつ効果的に経口摂取を行うためには、摂食・嚥下障害の把握が必要であるが、嚥下障害のほかに食物の認識や食事の行動にかかわる高次脳機能障害、片麻痺、同名半盲などの症状を理解して適切に対処しなければならない。ここではまず脳卒中の病態と栄養管理について説明し、脳卒中後の嚥下リハビリテーションの特徴について述べる。また、経口摂取への円滑な移行のための「食べるためのPEG」の概念についても説明する。
著者
静間 徹 石渡 一夫 福山 直人
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.723-730, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的 : 大腸炎に対するトリプトファンの効果についての知見は少ない。我々は、デキストラン硫酸ナトリウム (DSS) 誘発性大腸炎動物モデルを用い、トリプトファンの抗大腸炎効果を検討した。方法 : C57black6マウスを、通常飼料 (CE-2) を与えた対照群とl-トリプトファン含有CE-2を与えたトリプトファン群 (各群8匹) に分け、3.5%DSSを12日間投与して大腸炎動物モデルを作成した。DSS投与後、体重減少、血便の頻度について観察した。さらに12日後に大腸を摘出し、組織学的検査、大腸組織中ニトロチロシン値、尿中nitrate and nitrite (NOx) 値について検討した。結果 : トリプトファン群で、体重減少や血便頻度、大腸組織中ニトロチロシン値が有意に低下し、組織学的にも大腸炎の軽減効果を認めた。NOx値は、両群間で有意差は認めなかった。結論 : DSS誘発性動物モデルにおいて、トリプトファンの投与による有意な大腸炎の軽減効果が認められた。その機序のひとつとして、抗酸化ストレス作用が推測された。
著者
神崎 初美
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.1031-1034, 2012 (Released:2012-08-28)
参考文献数
3

ガソリン不足で食糧物資を運べないうえに、被災地域が広大、被災者は多数なため、需要に比べ圧倒的な供給不足が長く続き、災害後二週間は、被災者の食糧事情は非常に厳しいものだった。災害2ケ月後に行った栄養面での主な看護支援は、食事内容の改善への試み、ビタミン不足への対応、食中毒予防と対応であった。
著者
村田 和弘 長 卓德 境 銀子 西田 美千子
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.833-838, 2013 (Released:2013-06-20)
参考文献数
20

【目的】経鼻経管栄養法 (CNG) は使用頻度が高いが、逆流性肺炎の危険性が高いと考えられる食道上部に達する酸逆流については明らかとなっていない。八女リハビリ病院 (当院) でCNG患者における上部食道への酸逆流の頻度および程度を測定した。【対象と方法】当院のCNG患者19名 (男性5名、女性14名) で、センサーが胃内と25cm離れた上部食道内にあることをX線で確認し24時間のpHを計測した。上部食道のpHが4.0未満の時間帯が5%以上ある場合と上部食道pHが4.0未満となった時間が30秒以上続く場合を酸逆流ありと判定した。【結果】3名 (15.8%) に上部食道まで酸逆流がみられた。逆流群の年齢は85歳、チューブ径は12Frで、留置期間は47日であった。非逆流群の年齢は84歳、チューブ径は13Fr、留置期間は47.5日であった。【結語】CNG中の上部食道までの酸逆流を認めたのは15.8%で、上部食道までの酸逆流と逆流性肺炎発症リスクとの関連性については今後の検討が必要である。
著者
岩瀬 豪 稲岡 秀陽 尾木 敦子 友澤 明徳 國仲 加世子 高安 郁代 中村 真紀 北川 一智
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1377-1380, 2012 (Released:2012-12-17)
参考文献数
7

【目的】摂食嚥下障害をもつ高齢者の機能的自立度評価法 (Functional Independence Measure ; 以下, FIMと略) の点数がどの程度であれば, 経皮内視鏡的胃瘻造設術 (Percutaneous Endoscopic Gastrostomy; 以下, PEGと略) による経腸栄養管理後に日常生活動作 (Activities of Daily Living; 以下, ADLと略) の向上が期待できるかを検討する. 【対象及び方法】PEGを施行した30例について, その背景とPEG前後のFIMの点数を調べ, 後ろ向きの検討を行った. 【結果】PEG前の認知FIMの点数が10点以上の症例は, 胃瘻による経腸栄養管理の3ケ月後に運動ないし認知FIMの有意な改善を認めた. 【結論】PEG前のFIMのうち, 認知FIMの点数が良い症例は, 胃瘻による経腸栄養管理後にADL向上が期待できる可能性が示唆された.
著者
鎌野 倫加
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.1051-1056, 2012 (Released:2012-08-28)

東日本大震災は、2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した大津波及びその後に続いている余震により、引き起こされた大規模災害である。災害医療では、災害時に限られた医療資源 (医療従事者、薬品など) の中で、いかに多くの傷病者の命を救うかが求められる。そのため、傷病者の緊急度や重症度を考慮し、治療や搬送の優先順位に従い、搬送や治療を行うが、災害医療や看護の活動をしている医療従事者の殆どは救急医療や看護を日常業務から行っている。災害サイクルの経過により医療ニーズも変化し、災害医療に関わる医療従事者だけではなく、多職種による支援が被災地には必要である。災害支援には、多視角からの多職種によるアプローチが重要であり、東日本大震災の経験から災害時の栄養管理を考えると、災害サイクルに応じた栄養指導、栄養管理をすることが慢性疾患の悪化を防ぎ、合併症の予防につながると考えた。その中で、地域医療や在宅NSTの存在の大切さを感じた。今回は栄養管理に焦点を当て、平成23年4月30日~5月15日まで、宮城県気仙沼市で災害支援活動を行った時のことを交えながら災害時に栄養管理が必要とされることを述べたい。
著者
白木 亮 華井 竜徳 森脇 久隆
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1331-1335, 2012 (Released:2012-12-17)
参考文献数
11

肝硬変では蛋白・エネルギー低栄養 (protein-energy malnutrition: PEM) が高頻度に出現し、予後やquality of life (QOL) に影響を及ぼす。この低栄養状態に、分岐鎖アミノ酸 (branched chain amino acids: BCAA) 製剤や就寝前軽食 (Late evening snack: LES) などの栄養療法によって、肝機能・予後・QOLの改善が得られることが報告され、様々なガイドラインで栄養療法が推奨されている。また近年、食の欧米化に伴い日本人の肥満は増加傾向にあり、肝硬変患者においても肥満患者の割合が増えている。肥満合併肝硬変患者では肝発癌リスクが高く、肥満やインスリン抵抗性に対しての治療介入も必要である。
著者
東山 幸恵 大嶋 智子 永井 亜矢子 若園 吉裕 久保田 優
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.909-916, 2012 (Released:2012-06-15)
参考文献数
16

小児期の栄養障害は成育に悪影響を及ぼすことが懸念されており、適切な栄養アセスメントと栄養状態改善への介入は重要である。しかし小児の栄養評価に関する議論は成人に比べ充分ではない。そこで筆者らは医療機関を対象に小児栄養評価についての質問票による実態調査を行った。その結果、栄養評価を実施するための各種基準値に関する検討、及び小児栄養評価に対する情報量の不足といった課題が浮き彫りとなった。また、病児、健常児を対象にWaterlow分類による栄養評価を行ったところ、病児だけでなく健常児においても栄養障害リスクのある児が一定数存在することが判明した。医療機関において病児の栄養評価を行う際には、健常児の栄養状態の特徴を理解したうえで、判定を行う必要であることが改めて示唆された。
著者
笠井 久豊 川口 香 村林 由紀 佐久間 隆幸 森谷 勲 清水 敦哉
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.577-582, 2009 (Released:2009-05-28)
参考文献数
14

【目的】経皮内視鏡的胃瘻造設術 (percutaneous endoscopic gastrostomy: PEG) 施行後30日以内の早期死亡を予測できる指標を明らかにするため本研究を行った。【対象及び方法】2003年5月から2005年12月までにPEGを施行した170例につき年齢、術前の血清アルブミン値、トランスサイレチン値および総リンパ球数と早期死亡率との関連を検討した。【結果】PEG施行170例のうち早期死亡例は18例 (10.6%) であった。血清アルブミン値が2.5g/dl以下の症例の早期死亡率は有意に高率であり、特に90歳以上の症例では50%と極めて高率であった。多変量解析では血清アルブミン値が最も予後に相関する因子であった。【結論】PEG施行後の早期死亡の予測には、血清アルブミン値が最も適しており、本測定値が2.5g/dl以下の症例には、PEGの適応決定には慎重であるべきと思われた。
著者
田代 勝文 東口 高志 武田 悠子 冨塚 利枝 藤瀬 暢彰 中村 強 升永 博明 伊藤 彰博
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.2_115-2_125, 2006 (Released:2007-04-26)
参考文献数
27
被引用文献数
6

ペクチンにて固形化した栄養剤について、人工消化液による溶解性を検討するとともに、固形化栄養剤をラットの胃内に強制投与した場合の消化管内での形状変化とその移行、特に臨床上問題視されることが多い胃食道逆流や便性状に及ぼす影響に関して、基礎的研究を行った。溶解試験において、ペクチンを用いた固形化栄養剤は、寒天やゼラチンによる固形化栄養剤に比べ、人工胃液中では形状が維持され、人工腸液中ではゼラチンと同様に速やかに溶解することが認められた。また、ラットに胃内投与した場合、固形化栄養剤は液状栄養剤に比べ、胃内滞留時間を30分間程延長させたが、小腸内への移行後には投与栄養剤の物性の違いによる明らかな差は認められなかった。さらに、固形化栄養剤は液状栄養剤に比べ、口腔内逆流や食道内逆流を有意に抑制するとともに、下痢や軟便の発生頻度を有意に軽減することが認められた。以上の結果から、固形化栄養剤は液状栄養剤に比べ、胃内滞留時間を延長させるものの小腸内移行には影響を与えず、また胃内強制投与に伴って発生する胃食道逆流や下痢をいずれも抑制することが示唆された。