著者
増本 幸二 中辻 隆徳 間野 洋平 和田 美香 竹野 みどり 都地 里美 浦部 由紀 山口 貞子 田口 智章
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.653-657, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
15

緑膿菌による創感染では感染創の改善に時間を要することがある。われわれは、頚部手術後の手術部位緑膿菌感染による創し開に対し、感染のコントロールができた状態で創洗浄とアルギニン滋養飲料(アルジネード®)投与を含めた栄養管理を行い、創の著しい改善をみた小児例を経験した。【症例】症例は2歳女児。基礎疾患は巨大臍帯ヘルニア(術後)、肺低形成。基礎疾患のため、1歳4ヶ月時に気管切開を施行した。その後CPAP(continuous positive airway pressure)管理で呼吸状態は安定したが、頻回の嚥下性肺炎を認めた。精査にて喉頭機能不全が存在し、2歳2ヶ月で喉頭気管分離術を行った。術後7日目に手術部位感染を認め、その後創し開となった。起因菌は気管孔からの緑膿菌であった。創に対して局所洗浄を行うとともに、経腸栄養にて適切な栄養管理を行い、アルギニン滋養飲料併用投与を行った。創部は順調に改善し、術後1ヶ月で気管孔の創し開部は深部が肉芽組織に置き換わり、上皮化が進み良好な状態となった。【まとめ】小児の手術部位感染に伴う創し開例にアルギニン滋養飲料を使用した。感染のコントロールができた状態で、創洗浄を行うとともに、適切な栄養管理に加えて、アルギニン滋養飲料を併用したことで、感染部位の早期の治癒を認め、本飲料の併用は創傷治癒促進効果が期待できる可能性があると考えられた。
著者
竹浦 久司
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.797-800, 2009 (Released:2009-06-11)
参考文献数
3
被引用文献数
2

臨床検査技師は患者の診断・治療に必要な情報を臨床へ提供している。その中でも電解質は生命維持に関わるいくつかの過程で重要なデータであるため、正確かつ迅速に測定しなければならない。NSTの活動においてとかく臨床検査技師の活動する場がないように思われがちだが分析している技師だから分かるデータの違いを理解し、NSTカンファレンスなどで報告していくことが「真のチーム医療」の一員となるものと考える。
著者
矢野 邦夫
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.25-32, 2006-06-25
参考文献数
20
被引用文献数
2

最近、各医療施設において栄養サポートチーム(NST)や院内感染対策チーム(ICT)が活発に活動している。これらの対策チームは一見関連性が薄いと思われがちであるが、院内感染対策においてはNSTが重要な役目を果たしている。NST活動によって、中心静脈カテーテルのような感染性合併症を頻回に引き起こす医療器具の使用頻度を減らすことができれば、当然のことながらカテーテル関連感染症を低減できる。また、MRSA感染症のような抵抗力が低下した人に発生する疾患の患者の栄養状態を改善させれば、抵抗力の向上によって感染症がコントロールされる。このように、NSTとICTは強く関連しているので、両者の連携が重要である。
著者
深柄 和彦
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.277-281, 2007 (Released:2007-10-26)
参考文献数
5

免疫栄養(immunonutrition)は、新しい患者管理法であり、栄養によって生体反応を調節し合併症発生を抑え予後改善をめざす治療法である。その強化成分である個々のimmunonutrientはそれぞれ生体反応の調節機序が異なっており、その組み合わせ・量によって免疫増強・抗炎症作用など異なる作用の栄養製剤となる。病態に応じた栄養製剤の選択が必要となる。
著者
荒金 英樹 西村 敏 兼子 裕人 仁丹 裕子 浦底 美由希 増田 哲也 北岡 陸男 廣瀬 遼子
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.643-647, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は79歳女性。原因不明の意識障害で他院入院中、褥創の悪化、意識レベルの低下から当院転院となる。BMIは 14.6kg/m2、栄養補給は胃切除後から腸瘻より施行されていた。入院時血清銅値は正常であったが低亜鉛、高炭酸ガス血症を認め、プルモケア®にポラプレジンクを併用した栄養療法を開始、8週間後にポラプレジンクは併用のまま亜鉛、銅含有栄養剤を投与したが、6週間後に腸瘻周囲皮膚炎の悪化からTPNへ変更した。変更直後から白血球、好中球数の減少を認め、TPN開始8週後には白血球数1910/μL、好中球数343/μL、血清銅濃度は8μg/dLと低下していた。TPNに微量元素製剤添加したところ急速に好中球は増加、貧血も改善した。TPN開始から短期間で銅欠乏症が発生したことから、銅非含有栄養剤投与に加え、EN施行中の亜鉛負荷による銅吸収阻害が関与した可能性も考えられた。長期経管、経静脈栄養の際には、微量元素に留意する必要があり、その配合比率も検討が必要であると考えられた。
著者
小林 英史 田中 芳明 浅桐 公男 朝川 貴博 谷川 健 鹿毛 政義 八木 実
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.1207-1213, 2009 (Released:2009-12-21)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】緑茶カテキンには抗線維化作用や抗酸化作用があると報告されており、その効果および作用を胆汁鬱滞性肝障害モデルラットを用いて系統的に検討した。【対象及び方法】Wistar rat胆管結紮モデルをSHAM群、無治療群、治療群の3群に分け、17日後に犠死させた。検討項目は、AST、ALT値、抗酸化の評価として4-Hydroxynonenal染色と8-oxo-2'deoxyguanosine染色、炎症性サイトカイン活性化のkey mediatorとして転写因子Activator Protein-1 mRNAの定量、星細胞の活性化の指標として肝臓組織中のTGF-β1の免疫染色、線維化の評価としてAzan染色とα-smooth muscle actin染色である。【結果】緑茶カテキン抗酸化剤投与により、血清AST、ALT値の低下、転写因子AP-1の低下、酸化ストレス障害の軽減、星細胞の活性化の抑制、線維化の抑制がみられた。【結論】緑茶カテキン抗酸化剤投与により、酸化ストレス障害および転写因子の発現を抑制し、星細胞の活性化を抑制することによる線維化抑制効果が示唆された。
著者
三木 誓雄 寺邊 政宏 森本 雄貴 樋口 徳宏 小川 亜希 白井 由美子 岡本 京子 菱田 朝陽 Donald C. McMillan
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.597-602, 2013 (Released:2013-04-24)
参考文献数
31

悪液質は「単なる栄養補給では改善できない、骨格筋喪失を伴う栄養障害」と定義される。悪液質は通常の低栄養とは異なり全身の代謝異常を伴い、治療の継続性、有効性に悪影響を及ぼし、QOLの低下のみならず生存期間の短縮をも、もたらす。これまで悪液質はがん終末期の病態と考えられてきたが、比較的早期の段階から出現し、病期に依存しない予後不良因子であることがわかってきた。20世紀半ばより悪液質に対する強制的経腸あるいは経静脈栄養が試みられてきたが、有効性を示すエビデンスは得られなかった。近年全身性炎症を制御する目的でEPAが悪液質の治療に用いられるようになった。しかしながらQOLを向上させるエビデンスは示されているものの生存期間の延長に関しては一定の見解は得られておらず、今後治療開始時からの免疫栄養療法の早期導入や分子標的治療を初めとする抗腫瘍療法との組み合わせなどが期待されている。
著者
足立 香代子
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.1035-1039, 2012 (Released:2012-08-28)
被引用文献数
2

災害時には、日本栄養士会のJapan Dietetic Association -Disaster Assistance Team) (JDA-DAT) の一員として私を含め、多くのボランティアが現地に入った。このなかで、管理栄養士は、炊き出しも行ったが、主に食事支援と栄養支援活動をした。食事支援は、食材の適正手配と支援、有効利用をするための献立作成、衛生管理などであり、栄養支援は、避難所での栄養・食事相談や在宅での褥瘡ケア、起こりうる栄養障害を未然に防ぐための栄養アセスメントに基づいたケアプランなどを行った。活動が具体的にご理解いただけるように被災者との面談を通して実施した口内炎、下痢、食欲不振、便秘などの事例を示しながら記述した。災害時においても、栄養状態のアセスメントとそのケアができることが管理栄養士の役割だと思っている。
著者
伊藤 彰博 東口 高志 森 直治 大原 寛之 二村 昭彦 都築 則正 中川 理子 上葛 義浩
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.603-608, 2013 (Released:2013-04-24)
参考文献数
12
被引用文献数
2

緩和医療を必要とするがん再発症例や終末期患者が陥る栄養障害は、単なる飢餓状態だけではなく、栄養管理や治療に抵抗し、がんの進行に伴う著しい筋肉減少と体重減少を主徴とする代謝異常、すなわち悪液質 (cachexia) が深く関与している。悪液質の定義や病態は未だ明確にされていないが、2010年にEuropean Palliative Care Research Collaborative (EPCRC) において、pre-cachexia→ cachexia → refractory cachexia の3段階に細分化されたものが一般的である。その中で最終段階であるrefractory cachexia (不可逆的悪液質) は、もはや栄養投与に反応しない段階と定義され、本講座の研究ではこの時期にはエネルギー消費量が逆に低下することが知られている。このように、再発、終末期がん患者に対しては、栄養障害の要因を十分に把握し、その時々に応じた適切な栄養管理を実施することが、QOLの維持、向上に直結するため、緩和ケアNSTの活動が極めて重要であると考えられる。
著者
林 宏行
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.1345-1350, 2011 (Released:2011-12-19)
参考文献数
31
被引用文献数
1

リハビリテーションを行っている患者は、原疾患による侵襲や食思不振などにより栄養障害を呈している場合が少なくない。栄養障害を伴った場合、リハビリテーションの効果が十分に得られない可能性がある。栄養障害は飢餓や疾患による侵襲のほか、食欲不振などが要因となる場合がある。薬剤師は適切な栄養剤を選択し栄養改善を図ることや食思不振患者の薬物治療上の問題解決に取り組むべきである。またリハビリテーション患者は、身体障害から服薬自体が困難である場合も少なくない。リハビリ患者個々に適切な薬物投与形態を整えるべきである。本領域における薬剤師の果たすべき役割は大きいと考える。
著者
田附 裕子 前田 貢作 和佐 勝史 飯干 泰彦 藤元 治朗
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.929-934, 2010 (Released:2010-08-25)
参考文献数
29
被引用文献数
2

小児外科外来では、ヒルシュスプルング病・類縁疾患などとの鑑別を含め慢性便秘症の症例に多く遭遇する。基礎疾患が除外された慢性便秘症の多くは生活習慣による機能性便秘であり、排便習慣が確立するまでの根気強いフォローが必要となる。近年、予防医学の観点からプロバイオティクスの効果が報告されている。小児の慢性便秘に対してもプロバイオティクスの臨床的な投与効果が期待される。
著者
倉本 敬二
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.1071-1075, 2011 (Released:2011-08-25)
参考文献数
6

2008年に日本静脈経腸栄養学会において「NST (nutrition support team) における薬剤師の活動指針」が制定された。その第一項目に (1) 静脈・経腸栄養療法における処方支援 1) 処方設計支援、と記してある。つまりNSTにかかわる薬剤師には静脈栄養療法の処方支援が求められているのである。静脈栄養療法に用いられる輸液は医薬品である。医薬品の責任者は薬剤師であるはずである。その期待に応えNSTにおける薬剤師の役割を明確にするためにも是非とも我々薬剤師は“輸液力”を磨かなければならない。末梢輸液では食事や飲水によるバイアスがあるため、絶飲食のTPN (total parenteral nutrition) が最も輸液処方設計への導入としては適していると考えられるので本項ではTPN症例を念頭において“輸液処方設計の基礎知識”について解説したい。
著者
田村 俊世
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1297-1302, 2012 (Released:2012-12-17)
参考文献数
32

栄養所要量はハリスベネディクトの式から基礎代謝を算出しそれに活動係数、ストレス係数を乗じて必要エネルギーを算出している。しかしながら、算出の方法によりこの値が大きく変動する。効果的な栄養管理のため間接熱量計を用いて安静時エネルギー消費量、呼吸商を求める方法が検討され始めている。ここでは現在、市販されている3種類の間接熱流計について解説する。
著者
口分田 政夫 永江 彰子
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.1175-1182, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

重症心身障害障害児(者)は、呼吸障害や消化管通過障害、筋緊張の変動といった病態を合併することが多く、摂取エネルギーの決定には個別の評価が必要である。また、多くは摂食機能障害を合併し、ペースト食や経管栄養といったように特別な栄養摂取形態が必要となる。このため、長期に人工的栄養が投与されることも多く、蛋白質や微量元素、電解質の欠乏や過剰が生じる可能性があり、評価と対策が必要である。
著者
豊田 めぐみ 菊池 誠 鷲澤 尚宏 小暮 利和 川口 キミエ 皆川 智海
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.1385-1392, 2014 (Released:2014-12-20)
参考文献数
12

経管栄養の1日2回投与法は看護業務の改善に繋がるのか、また、経管栄養が安全に行えるのかについて前向きに検討を行った。2008年10月~2010年5月の間に投与回数を1日3回から2回投与へ変更をした療養病棟入院中の患者7例(平均年齢85.0歳)について変更前と変更後における血液検査とBMIについて看護業務の変化については質問紙法による調査を実施した。その結果、BMIは徐々に増加しており4ヵ月後には有意に増加した。血清Alb値に変化はみられず、TC、TG、LDLは変更1ヵ月後に有意に上昇したことから1日2回投与法では定期的に体重測定と血液検査をする必要があると考えられた。一方看護業務については、夜勤帯における看護業務が改善され繁雑性がなくなったことから業務改善に繋がる方法であると考えられた。
著者
諸富 正己
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.911-916, 2010

腸内フローラの研究からプロバイオティクスという新しい概念が生まれ、これが形となって実際に健康維持や病気の予防、治療に使われるようになった。プロバイオティクスとは、「腸内フローラのバランスを改善することにより、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義され、その代表的なものは乳酸菌やビフィズス菌である。抗生物質(アンチバイオティクス)に対比される言葉で、「共生」を意味する「プロバイオシス」から派生した言葉である。プロバイオティクスが最近注目されるのは、近代医療が抱える様々な問題–抗生物質と耐性菌の問題など–を考えると当然かつ自然の成り行きで、現代の農業にたとえてみると、農薬や化学肥料への依存から自然の生態系を積極的に利用しようという有機農法への回帰に例えることができる。ここでは最近の腸内フローラ研究の進展について、明らかにされつつある共生のメカニズムを中心に解説してみたい。
著者
柳樂 明佳 芦田 欣也 真壁 昇 宮澤 靖 富田 則明 秋山 和宏 川島 昭浩 金子 哲夫 山地 健人
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.711-716, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
16
被引用文献数
2

経管栄養時の胃食道逆流の発生に栄養剤の胃内滞留量が関与すると考えられている。そのため、本試験ではラットを用いて酸性半消化態流動食の胃排出を、類似の栄養組成をもつ中性半消化態流動食と比較評価した。流動食固形分の胃排出は中性半消化態流動食より酸性半消化態流動食の方が速かった。さらに、胃内容物の液相部分の胃排出には両者に差はなかったが、固相部分の胃排出は中性半消化態流動食より酸性半消化態流動食の方が速いことが示唆された。そこで各流動食の人工胃液消化試験を行ったところ、中性半消化態流動食では酸によるカード化のため、凝固物の形成が認められたのに対し酸性半消化態流動食では認められなかった。以上の結果から、酸性半消化態流動食は中性半消化態流動食と比較して胃排出が速く、その理由の一つとして、酸性半消化態流動食では中性半消化態流動食で観察される胃内でのカード形成が起こらないことが考えられた。
著者
谷口 英喜 辻 智大 中田 恵津子
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.731-737, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
17

【目的】経口補水液の前投与が、経腸栄養剤の胃排出速度に与える影響を検討した。【対象および方法】健常成人ボランティア7名を対象としてクロスオーバー研究を実施した。何も投与しない群 (N群) とミネラルウォーターを投与した群 (MW群) および経口補水液を投与した群 (ORS群) における、胃排出速度を、13C呼気ガス診断を応用した胃排出能検査標準法により評価した。Primary end pointとして個々における前処置ごとに最高血中濃度到達時間 (Tmax) の変化 (⊿ Tmax) を比較した。【結果】N群のTmaxを基準にして⊿ Tmaxを比較した結果、MW群に比べORS群において経腸栄養剤の胃排出速度を促進する効果が大きかった[⊿ Tmax(MW) vs. ⊿ Tmax (ORS) :-5±15.0 min vs. -17.1 ±9.1 min ; P=0.03]。【結論】この結果から、経腸栄養剤投与前に経口補水液を投与することで、摂取された経腸栄養剤の胃排出速度が促進されると考えられた。
著者
長浜 雄志 佐藤 格夫 Annemie Schols Michael Steiner Christophe Pison
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.795-818, 2013 (Released:2013-06-20)
参考文献数
207

COPDはこれまでは呼吸器疾患としてとらえられていたが、現在では全身の系統的炎症を伴っていることが明らかになった。このためエネルギーバランスがマイナスになりやすく、早期から筋肉量の減少が生じ、筋肉量の減少は全身状態の悪化の危険性と関連している。体重減少が予後に関連する重要な因子であることが明らかになっているが、筋肉量減少はタンパク質を主体とした栄養補給を行い、サイトカイン産生コントロールを目的とした治療も考慮することで、栄養学的に改善しうる可能性がある。これまでの臨床試験では栄養サポートの効果を証明し得たものはないが、呼吸リハビリテーションなどを合わせて行うことで効果的な方法であることが期待される。
著者
赤水 尚史
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.607-611, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
34

末期がん患者の多くは、食欲不振・体重減少・全身衰弱・倦怠感などを呈し、悪液質(カヘキシア)と呼ばれる状態に陥る。がん悪液質は、生命予後やquality of lifeに多大な影響を与える点で重要である。悪液質の特徴は、脂肪組織のみならず骨格筋の多大な喪失を呈することである。このような病態をもたらす要因は、単なる食欲低下とエネルギー消費の増大ではなく、その上流にサイトカインネットワークや腫瘍特異的物質の産生が存在すると考えられている。また、患者の年齢や活動度などによってその病態が修飾されることが最近指摘されている。がん悪液質に関連するサイトカインや腫瘍由来物質の同定とそれらの筋肉や脂肪などに対する作用が分子レベルで精力的に検討されているが、このような研究の進展が新たな治療標的の発見や治療法の開発に結びつくと期待されている。