著者
大槻 美佳
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.163-175, 2008-06-30 (Released:2009-07-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

前頭葉および基底核の高次脳機能を検討した。前頭葉の機能は以下の3 つの事項に関して,それぞれ臨床症状と病巣の関係,およびfMRI を検討した。1)ワーキングメモリと聴覚言語性短期記憶,2)書字障害,3)種類の限られた単語の障害。その結果,前頭葉の中で,特に中前頭回はワーキングメモリの中央遂行系に関与することが示唆された。このことは,書字やキーボード打ちなどの,音韻をtemporal に配列する機能にも関係していると推測された。基底核に関しては,1)手続き記憶のfMRI,2)鏡像書字の検討を行った。その結果,基底核は手続き記憶に関与していること,特に言語が関与する場合には左の尾状核が関与していること,基底核には書字運動機能を含めた左右可変の情報を安定化させる機能があることが示唆された。
著者
爲季 周平 阿部 泰昌 山田 裕子 林 司央子 種村 純
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.348-355, 2009-09-30 (Released:2010-10-01)
参考文献数
11

Action disorganization syndrome (以下ADS) を呈した脳梁離断症候群の一例を経験し,ADS の出現機序と関連領域について検討した。ADS は日常的生活の順序を多く含む動作において,使用対象の誤り,順序過程の誤り,省略,質的誤り,空間的誤りを示し目的行為が障害される。ADS は目的行為の概念は保たれるが contention scheduling system におけるスキーマの表象が誤ったり省略されたりし,さらにその誤って表象されたスキーマを supervisory attention system によって訂正できない結果,そのまま誤って表象された行為が出現する。本症例は脳梁膝から,左上・中前頭回にかけて損傷されており,過去の報告例では左右どちらか一方,または両側の上・中前頭回が損傷されていた。ADS は左右両側の広範な前頭葉領域内の損傷によって生じる可能性が考えられ,左右の上・中前頭回を結ぶ交連線維の損傷により,脳内における情報の統合障害や錯綜,注意機能や抑制機能の低下が加わることで生じると考えられた。
著者
小阪 憲司
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-8, 2009-03-31 (Released:2010-06-02)
参考文献数
1

亡き田邉敬貴教授と筆者の対談集「トーク認知症」のなかから,筆者の自験剖検例のうち特に興味深い非定型アルツハイマー病,特異なレビー小体型認知症,石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病,辺縁系神経原線維変化認知症,ピック小体病,非定型ピック病の症例をピックアップして提示しながら田邉教授と筆者の対話を中心に紹介した。
著者
前島 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.235-244, 2006 (Released:2007-10-05)
参考文献数
41
被引用文献数
2 1

ある基準によって区分された各項をさらに細かく分けることを下位分類という。半側無視を下位分類することは,局在診断の手段としての重要性のみならず,日常生活場面での問題点や対処法を明確にしていく必要性の上に成り立ち,完治とはいかないまでも,何らかの改善方策を見出す可能性へとつながるものである。本稿では半側無視の発現機序の解明や治療法の確立を期待して,いくつかの基準に基づいた分類を行った。すなわち,原因疾患からみた分類,半球優位性からみた分類,重症度の分類,病巣の違いによる分類,無視空間の違いによる分類,無視する感覚様式の違いによる分類,認知·遂行過程による分類,発現機序からみた分類などを行い,それらについて解説を加えた。