著者
石塚 毅彦
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
日本総合健診医学会誌 (ISSN:09111840)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.25-30, 1992-09-10 (Released:2010-09-09)
参考文献数
14

(1) The effect of twice-daily meals on the body weight and blood pressure (BP), (2) the effect of night shift on the BP, and (3) the relation between the meat diet and pollinosis were statistically investigated. The subjects consisted of (1) 650 males and 370 females, (2) 102 males, and (3) 576 males and 288 females, who had periodic medical examinations. The cases of twice-daily meals were comparable to the cases of thrice-daily meals regarding the age, BP, and frequency of hypertension. But statistically significant differences existed regarding the frequency of habitual cigarette-smokers and the frequency of habitual alcohol-drinkers, and the cases of twice-daily meals were superior to the other cases. Early-shift workers who biweekly changed from the night shift, and late-shift workers were comparable to day workers in regard to the age, BP, and frequency of hypertension. The BPs of night-shift workers who biweekly changed from the early shift were higher than those of the other cases, but not statistically significant. “Every day” cases, “2 to 6 days” cases, and “a day or null” cases, who were classified by the frequency of days of eating meat a week, were compared in regard to the prevalence of pollinosis. Statistically significant differences were noted in young cases below 30 years of age between“a day or null” cases and the other two groups of cases, and the former cases showed the lower prevalence. A sex difference was not noted regarding the prevalence of pollinosis. As a result, it was concluded that the effect of smoking and drinking on the BP might appear in the long run, that the effect of night shift on the BP was not serious, and that a close relation between the prevalence of pollinosis and meat diet in youth or something connected with the meat diet was suspected.
著者
田内 一民 松浦 成子 佐藤 祐司 谷崎 隆行 児玉 由美子
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.334-338, 2003-05-10 (Released:2010-09-09)
参考文献数
9

ここ数年, サプリメント (健康補助食品) を摂取する受診者が急増している。健診の最終目的は生活習慣の改善であることから, サプリメント摂取という生活習慣についても正しく把握する必要があると思われる。しかし, 健診受診者に対してサプリメント摂取についての調査, 報告はない。今回, 我々は健診受診者を対象に, サプリメントの種類, 摂取期間, 摂取開始年齢, 摂取動機などについて問診票による調査を行った。調査結果からサプリメントの摂取率は男性10%, 女性20%で, その動機は「疲労回復」, 「人に勧められて」の順であった。ビタミン摂取が全体の47%を占めていた。サプリメントの効果は明らかにされなかったが, 検査値に影響があると思われる例が認められた。受診者のサプリメント摂取の有無について問診票等で把握しておく必要がある。
著者
堤 明純
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.313-319, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
41

職場におけるメンタルヘルス不調のスクリーニングについては、スクリーニング効率がさほど高くないこと、スクリーニングの有効性を示すエビデンスが乏しいことに留意する必要がある。調査対象のセグメンテーションや層別尤度比の活用は、こういった課題解決のキーとなりうる。職場におけるスクリーニングの対象となる障害としては、頻度が多く、適切なケアによる対策の効果が、障害を有するケースと職場ともに認められているうつ病性障害の優先順位が高いが、最近は自閉症スペクトラム障害や適応障害なども注目されている。自閉症スペクトラム障害は、以前考えられていたよりも頻度が多く、職場不適応や難治性うつ病のハイリスク要因として認識されるようになっている。適応障害も長期の疾病休業の原因として職場でよく遭遇する、職業性要素の強いメンタルヘルス不調の一つである。適切な職場環境の調整により、不必要な休業や障害が取り除かれる可能性があり、スクリーニングを実施する価値がある。職場においては、層別尤度比などの検査特性を検討している研究は少なく、対象となる障害とともに、いかに実施すると効率的なスクリーニングができるかを含めた方法論に関する検証の蓄積が望まれる。
著者
菅沼 源二
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
日本総合健診医学会誌 (ISSN:09111840)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.189-198, 2000-06-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
13
被引用文献数
1

総合健診の受診者の要請は, 受診成績の継続的な観察が可能な, 施設問の成績の互換性への要求である。この方法を満たすために共通表示の方法ならびに共通評価の方法を提案した。また, 各種専門臨床学会から基準値が提案されているが, 総合健診における, 健康と非健康とを識別する「健康評価のための基準値」との理解の上の混乱がみられるところから, 各学会からの報告書に忠実に「読み取り」解釈をし, 基準値の種々相について整理した。
著者
三家 登喜夫
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.293-300, 2015 (Released:2015-05-01)
参考文献数
13

糖尿病とは、「インスリン作用不足により持続的な高血糖をきたした状態」であり、放置すると様々な慢性合併症を引き起こす疾患である。この患者数はいまだ増加の一途をたどっており、大きな社会問題となっている。したがって、健康診断などにより積極的に糖尿病を診断することの意義は大きい。本稿では、糖尿病の臨床診断に関して以下のように日本糖尿病学会の考え方を中心に述べた。 糖尿病を診断するためには「持続する高血糖」の存在を明らかにすることである。そのための重要な検査として血糖値(①空腹時血糖値:126mg/dL以上、②随時血糖値:200mg/dL以上、③75gOGTTにおける血糖2時間値:200mg/dL以上)とHbA1c値(6.5%以上)がある。上記の血糖値のいずれかあるいはHbA1c値が判定基準を満たした場合「糖尿病型」とし、初回検査に加えて別の日に行った検査で、糖尿病型が再確認できれば「糖尿病」と診断できる。ただし、2回の検査のいずれかに血糖値による検査が含まれていることが必須である。ただし、血糖値とHbA1cとを同時測定し、いずれもが糖尿病型であれば、1回の検査のみで「糖尿病」と診断できる。また、血糖値が「糖尿病型」を示し、かつ糖尿病の典型的な臨床症状認められるかあるいは確実な糖尿病網膜症が存在すれば、1回の検査だけでも「糖尿病」と診断できる。
著者
児玉 浩子
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.546-551, 2013

小児の栄養・食の問題としては、従来から肥満・生活習慣病の増加、やせの増加、朝食欠食、孤食、偏食、よく噛まないなどが指摘されている。肥満児の出現率は、平成18年をピークとしてやや減少傾向にあるが、平成23年度でも15歳男子で11.99%、女子で8.26%と高い。さらに、2型糖尿病など生活習慣病に罹患している肥満小児も多い。やせの増加も問題である。15歳男子で2.6%、13歳女子で3.91%が痩せ傾向児である。やせ女子は将来妊娠した場合に低出生体重児を出産する率が高い。低出生体重児は将来肥満や生活習慣病に罹患しやすい体質になると言われている。朝食欠食や孤食は、肥満の要因になるだけでなく、学習・運動能力、精神発達、コミュニケーション能力にも悪影響をきたす。 小児においては、食育が、将来的に健全な食生活を送るようになるために極めて重要である。食育とは、「さまざまな経験を通して"食"に関する知識と"食"を選択する力を習得して、健全な食生活を実践できる人を育てること」と定義されており、体育・知育・徳育の土台となるものである。 平成23年に発表された第2次食育推進基本計画では、重点3項目として1)ライフステージに応じた間断なき食育の推進、2)生活習慣病の予防及び改善につながる食育の推進、3)家庭における共食を通じた子どもへの食育の推進が示された。「団欒のある食卓」が小児の精神発達にとっても極めて重要である。 学校や保育所で食育が推進されている。栄養教諭は年々増加しているが、平成24年4月現在、公立学校での栄養教諭配置は47都道府県で4,263人に過ぎない。栄養教諭のさらなる増員が望まれる。さらに、食育を真に推進するには、学校・地域・家庭など子供を取り巻くあらゆる場所で、関係者が協力して食育に取り組むことが必要である。
著者
須賀 万智
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 = Health evaluation and promotion (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.445-451, 2009-11-10
被引用文献数
1 3

【目的】健診受診者に,1 )腰痛予防に関する小冊子を配付した場合と,2 )腰痛予防のための運動教室を開催した場合の費用対効果をシミュレーションにより評価した。 【方法】全国5か所の総合健診施設で行った質問紙調査における腰痛の有病率を,国民生活基礎調査の健診等受診率と国勢調査の総人口から計算した健診受診者数に掛けあわせ,腰痛の有病者数を計算した。小冊子配付と運動教室の腰痛予防効果を評価した比較対照試験をレビューして,各介入の腰痛有病者の減少率を4%と25%と仮定した。この数値を各介入の対象者数(腰痛有病者を0~ 100%の比率で小冊子配付群と運動教室群に割り付け)に掛けあわせ,介入により期待される腰痛の有病者数の減少を,さらに先述した質問紙調査における筋骨格の痛みの訴えがなかった者と腰痛の訴えがあった者のEQ5Dスコアの平均差に掛けあわせ,介入により期待される腰痛の損失QALYの減少を計算した。介入に必要な費用は小冊子配付群が1人500円,運動教室群が1人2万円ないし5万円とした。 【結果】20~ 74歳人口9,159万人のうち,健診受診者は5,596万人,そのうち腰痛有病者は1,317万人であった。腰痛の損失QALYは77.6万年であった。小冊子配付群の配分比率を100%とした場合,腰痛有病者は52.7万人減少すると期待され,増分費用対効果比は26万円 /QALYであった。運動教室群の配分比率を100%とした場合,腰痛有病者は329.2万人減少すると期待され,増分費用対効果比は166~ 414万円 /QALYであった。小冊子配付群と運動教室群の配分比率が運動教室群優位になるほど,増分費用対効果比が大きかった。 【結論】増分費用対効果比はいずれも社会的に許容可能なレベルであったが,小冊子配布の方が運動教室に比べ費用対効果に優れていた。
著者
鈴木 秀和
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.444-450, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
29

オーストラリアのWarrenとMarshallによるH. pylori(ピロリ菌)の発見で、胃・十二指腸疾患の自然史上、極めて大きなブレークスルーが起こった。今や、ピロリ菌除菌で慢性胃炎や消化性潰瘍を治療するだけでなく、胃がんの予防にまで言及されるようになった。過去40年以上にわたり、我が国では国民病ともいわれる「胃がん」に対する検診が行われてきたが、この「胃がん検診」についてもピロリ菌を制御するという局面からの新規アプローチの必要に迫られている。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌療法が、2013年2月から健康保険の適用となり、まさに国民総除菌時代を迎え、年間100万人規模の除菌療法が開始されており、数十年後に、胃がんを撲滅するために、よりきめ細かい診療がもとめられている。本稿では、ピロリ菌感染症の病態、胃がん検診、除菌療法について最新の知見をまとめたい。
著者
高田 和夫 杉田 誓子 藤浪 隆夫 長嶋 正實 岩田 弘敏 高田 晴子 岩田 豊
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
日本総合健診医学会誌 (ISSN:09111840)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.382-388, 1997-12-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16

高校1年生における「肥満」の判定基準を策定する目的で, 高校1年生男子50, 644名, 女子47, 457名を対象とし, 男女別に身長2cmごとの体重分布をHoffmann法で正規化して平均値を求めて基準値とした。この基準値は男女ともBMI=20の値にほぼ一致した。この基準で算定した肥満度別の「高血圧」発現頻度は肥満度が高いほど高く, また標準値を10%以上越える低体重あるいは過体重の生徒はいずれも問診によって身体活動性が悪いと評価し得た。高校1年生の体重の評価を行う時, 基準値の10%を越える低体重あるいは過体重の生徒は生活習慣改善の指導対象と判定すべきである。