著者
湯澤 直美
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
日本教育学会大會研究発表要項
巻号頁・発行日
vol.68, pp.76-77, 2009-08-12

近年、日本においても「子どもの貧困」が社会問題として注目されるようになってきた。しかしながら、「子どもの貧困」研究は緒についたばかりともいえ、子ども期に貧困であることの持続的な影響や貧困の世代的再生産を生み出す構造についての解明、貧困防御のための実践の創造と共有化は急務である。本報告では、社会福祉の領域をフィールドとしながら、とりわけ家族という社会制度に焦点をあて、家族を単位として保護者・子ども双方に要請される自助努力の現代的態様について、子どもの貧困をめぐる日本的土壌という観点から考察する。その際、特定の世帯類型で貧困率が高い点に注目し、ワーキング・プアの典型ともいえる母子世帯の現況をとりあげる。そのうえで、教育と福祉をつなぐ視角から実践的な課題を提起することを目的とする。
著者
八木 美保子 水原 克敏
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.444-456, 2006-12-29
被引用文献数
1

ニートやフリーターの増加といった若年就業問題が国家的課題とされ、学校教育にキャリア教育を求める声は強い。これは大学も例外ではなく、多くの大学でキャリア教育が導入されている。しかし、政策が一人歩きしている感は否めず、実態はこれまでの就職支援の強化に留まっている場合が多い。加えて、大学では多くの学生がカルト教団へ引き込まれたり、不本意入学による自己否定感を払拭できずにいたりなどの自己形成に関わる問題を抱えている。これに対処するためには、大学は新たな教育機能を整備することが求められているのである。「自分ゼミ」の実践を通して明らかになったのは自己形成に苦闘する学生の姿であった。ある学生達は自己肯定感が乏しく自己と対略することから逃避しがちであり、またある学生達は、内省及び他者との価値観の交流によって自己認識を深めようとするのである。そこで、筆者らは、「自分ゼミ」のような自己形成を基盤とするキャリア教育カリキュラムを、大学入学から卒業まで学生の発達段階に応じて設定するよう提案する。