著者
川村 光 紅林 伸幸 越智 康詞 加藤 隆雄 中村 瑛仁 長谷川 哲也 藤田 武志 油布 佐和子
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13455311)
巻号頁・発行日
no.17, pp.51-71, 2016-03-31

The purpose of this study is to analyze Japanese teachers’ viewpoints relating toJapanese society and education based on the data of quantitative investigation of public primary school and junior high school teachers in 2013.From this survey, some important findings were drawn. First, the characteristics of teachers who take an optimistic view of the future Japanese society is that the level of their consciousness of the autonomy of the profession is lower. Second, the characteristics of teachers whose consciousness of the autonomy of the profession is lower are that the level of their consciousness of the training of pupils in 21 century academic abilities is lower and they are not ready to carry out the individual and clinical education that help teachers cope with the reality of pupils in their educational practice. Third, the teachers who are school middle leaders in schools are the ones “accomplishing their duty of the school organization”type, who positively carry out school and lesson reform. Also this trend in younger generation is higher. Especially, the characteristics of the school middle leaders is the important issue to consider for the future school education.
著者
油布 佐和子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.23-38, 2010-06-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

教職における病気休職者増加を説明する理論が見当たらない理由の一一つは,教職を公務労働(教育公務員)として認識する視点が欠落していることによる。 本論文では,第一に,感情労働論・ケアワーク論を手がかりに,共同体で営まれていた〈人を育てる〉という活動が職業となることについての問題を,クライアントとの関係という点から検討する。そこでは,教育的な関係や言説において,絶えず情緒や感情が重視されることの理由が示される。第二に,そうした子どもとの教育的関係が,公務員として雇われて働く「労働過程」のなかにおかれていることに起因する問題を,感情労働論の議論を借りて考察する。そして第三に,現在の新自由主義的な改革の中で,公務員改革の一貫として進められている教職の様々な改革が,教師の教育活動を変容させていること,しかしながら第四に,こうした趨勢に対応する抵抗主体としての教員集団が存在していないことの問題を指摘する。 病める教師の増加は,教育という活動を共同体的な「教師一子ども関係」の認識にとどめ,「教育労働」に無自覚であることや,「小さな国家」への移行によって教育労働が変容しているという現状を認識できないことのなかで,自らに過重に責務を負わせたことから生じているといえる。 教育社会学における教師研究は,教師がこうした状況や構造を俯瞰する視点を提供するという点で,他の教師研究と差異化して展開されるべきだろう。
著者
油布 佐和子 越智 康詞 紅林 伸幸 中澤 渉 川村 光 山田 真紀
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、今世紀に入って加速的に進行した新自由主義的な教育改革が教職に及ぼす影響を分析することを目的としている。15年間の時系列調査を分析した結果、教職観や役割認識などに変容が見られ、教師が「組織の一員としての教師」への志向性を強めていることが明らかになった。しかしながらこれを、新自由主義的な理念への賛同と解釈するのは妥当ではない。そうではなくて、外部に見えにくく理解されがたい<教師という仕事>を、新自由主義的教育改革が可視化する側面を持っていることによるものではないかと推測された。
著者
藤田 英典 紅林 伸幸 酒井 朗 油布 佐和子 名越 清家 WONG SukーYin
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、日本、カナダ,アメリカ、イギリス第8カ国の国際比較共同研究「教師の専門性と教師文化に関する国際比較研究(略称:PACT)」の一環として、PACT日本チームによって行なわれたもので、学校教育及び教師の仕事の改善に資することを目的として、文献研究、エスノグラフィ調査、及び質問紙調査を行い、日本における教職の専門性と教師文化の構造・特質について考察したものである。その成果と知見は多岐にわたるが、主なものは以下の通りである。1.教師文化と教育実践に関するエスノグラフィ的研究平成6年度に1年間にわたって4地域の小・中学校各1校(計8校)でフィールドワークを行ない、教師の仕事と教師文化について考察を行った。その成果の一部は、「II.研究発表」欄に記載の論文等にまとめられている。また、その知見の一部としては、教師の仕事が多種多様な作業(ワーク)によって構成されており、それが重層的に展開していることのなかに、教職の専門性や教師の多忙感の基盤があることが明らかにされた。2.教師の生活と意識に関する質問紙調査平成7年7月〜9月に全国8都県の小・中学校教師2053人を対象に実施し、教師の生活と教師文化の構造について考察した。その成果の一部は、「II.研究発表」欄に記載の研究報告書にまとめられている。同報告書において、教師の同僚性、教職の専門性、教員集団の構造、学校の組織構造などが考察・解明されている。3.PACT国際会議等での研究成果の発表平成7年4月の全米教育学会大会(AERA)、同年同月のロンドンでのPACT国際会議等、研究成果の一部を発表した。なお、今後さらに、英文で研究成果をまとめ公表する予定である。
著者
油布 佐和子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.23-38, 2010-06-30

教職における病気休職者増加を説明する理論が見当たらない理由の一一つは,教職を公務労働(教育公務員)として認識する視点が欠落していることによる。本論文では,第一に,感情労働論・ケアワーク論を手がかりに,共同体で営まれていた<人を育てる>という活動が職業となることについての問題を,クライアントとの関係という点から検討する。そこでは,教育的な関係や言説において,絶えず情緒や感情が重視されることの理由が示される。第二に,そうした子どもとの教育的関係が,公務員として雇われて働く「労働過程」のなかにおかれていることに起因する問題を,感情労働論の議論を借りて考察する。そして第三に,現在の新自由主義的な改革の中で,公務員改革の一貫として進められている教職の様々な改革が,教師の教育活動を変容させていること,しかしながら第四に,こうした趨勢に対応する抵抗主体としての教員集団が存在していないことの問題を指摘する。病める教師の増加は,教育という活動を共同体的な「教師-子ども関係」の認識にとどめ,「教育労働」に無自覚であることや,「小さな国家」への移行によって教育労働が変容しているという現状を認識できないことのなかで,自らに過重に責務を負わせたことから生じているといえる。教育社会学における教師研究は,教師がこうした状況や構造を侑緻する視点を提供するという点で,他の教師研究と差異化して展開されるべきだろう。
著者
油布 佐和子 Sawako Yufu 東京大学大学院 Graduate School Tokyo University
出版者
東洋館
雑誌
教育社会学研究 = The journal of educational sociology (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.165-178, 283, 1985-09-30

Recently, it has been pointed out that the studies about the process of schooling is very important. Especially since Pygmalion in the Classroom was published, it has been argued that teachers have much influences upon their students. However, in Japan there are few studies that refer to the relevance of teachers' perceptions to educational problems. The purpose of this paper is to investigate the formation of teachers' perceptions for the analysis of the Japanese educational problems. First of all, I reviewed some American and English studies which are concerned with teachers' perceptions and their formation. Then I examined the variables which seem to be useful when the educational problems are analyzed. I pointed out the significance of societal prejudice (social consciousness) that shapes the perceptions of students. Nevertheless we couldn't perfectly explain the formation of teachers' perceptions in Japan from the point of societal prejudice. Secondly, I investgated two educational trends that affected the teachers' perceptions: 1) the transformation of school function, 2) specializations of teacher's work. In conclusion, I can consider that teachers' perceptions based on their students' achievements are formed under these educational trends.