著者
河盛 阿佐子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.368-375, 1992-05-05

光エネルギーによる葉緑体のチラコイド膜上の電荷分離に続く電荷移動は, 電子スピン共鳴で微視的過程を追いかける格好の対象である. 筆者がこの複雑な生体系の研究に着手し, 暗中模索した1980年当初から考えると, いまはこの系が研究材料の宝庫であることを確信するに到った. 電荷の担い手はクロロフィル・ラジカルなどタンパク質に含まれるフリーラジカルや, マンガンなどの遷移金属元素であるが, 観測にかかるスペクトルは実に様々な情報をもたらす, その解読は物性物理の問題を解くことであるが, この種の謎解きの面白さはこの分野がかなり解明されてきた現在でもまだ暫く続くだろう.
著者
中西 襄
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.p29-34, 1980-01

一般相対論と量子論の統合という物理学の基礎的問題は長い間未解決に残されてきたが, このほどようやく満足すべき重力場の共変的正準量子論ができあがった. この解説では, この理論がどのような背景のもとに形成され, どういう構成をもつかの概略を説明する. 問題の性質上かなり専門的な式の使用は避け難いが, 式の内容が理解できない読者にも話のすじ道だけは解って頂けるように書いたつもりである.