著者
泉 雅子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.141-148, 2013-03-05

世界を震撼させた東京電力福島第一原子力発電所の事故から二年近くが経過した.原子炉は冷温停止状態に至り,事故そのものは収束に向かいつつあるが,環境中に大量に漏洩した放射性物質の回収は容易ではなく,環境や人体への影響が憂慮されている.近年の分子生物学の進展により,放射線に対する細胞応答を分子レベルで理解できるようになったが,その一方で,長期にわたる低線量被曝や内部被曝の人体への影響については情報が少なく,社会に不安と混乱を生む一因となっている.本稿では,放射線の生物影響に関してこれまで得られている知見や,放射線防護のための規制値の根拠について解説する.
著者
早川 尚男 國仲 寛人
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.428-432, 2006-06-05
被引用文献数
1

はねかえり係数は衝突速度によらない物体の性質だけで決まるパラメータと紹介されてきた^<1)>が,近似的にもその表現は正しくなく,その値は大きく衝突速度に依存する.同時に斜め衝突に伴い異常反跳とも呼ふ現象が起こり,法線方向のはねかえり係数は容易に1を超え得る.本稿は異常反跳を含めた最近のマクロ物質の衝突研究のレビューと,シミュレーションモデルによる現象の再現及び理論的解釈について紹介する.
著者
戸田 盛和
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, 1962-03-05
著者
黒田 登志雄 横山 悦郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.541-548, 1990-08-05
被引用文献数
4

雲の中の過冷却水滴の凍結によって球形の氷単結晶がまずつくられ, そこから雪の形態形成が開始される. その後の成長にともなって, 球から六角プリズムへ, さらには複雑な樹枝状形態へと時々刻々と新しい形がつくりだされるしくみをシミュレーションを交えて考察する. また, 氷結晶の表面融解が雪の晶癖変化や気相成長機構にどのように関連しているかを示す. さらに, 土の凍結によって地面が数10cmも隆起する凍上現象に土粒子と氷結晶の間に存在する擬似液体層が重要な役割を果たしていることにも言及する. これらの問題は, 非線形非平衡な系における形態形成の動力学の観点から, あるいは表面・界面物理の新しい問題として重要である.
著者
松岡 正浩
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.643-649, 1994-08-05
参考文献数
36

電磁場に関する不確定性関係の一つとして,光子数と位相の関係Δ_nΔφ≧1/2がよく知られ,かつ用いられてきた.しかし一方,その根拠となる電磁場の位相の演算子φ^^^のエルミート性が成り立たたないことも知られていた.また,最近の光のスクイーズド状態の発生や量子干渉,観測問題などの研究では,少数光子状態の位相が問題にされるようになってきた.しかし,その領域ではexp[±iφ^^^]のユニタリー性からのずれが大きくなる.これらの困難は光子数スペクトルに下限があるために生じる.最近,PeggとBarnettは新しいエルミート位相演算子を提案した.その根拠に関して議論もある中,すでにこれを用いた多くの応用計算が行われている.そこで,新しいPeggとBarnettの演算子を中心に,位相演算子の問題について解説する.
著者
国場 敦夫
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, 2011-12-05
著者
国広 悌二
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.683-690, 2010-09-05
被引用文献数
1

くりこみ群方程式を用いた非線型方程式の漸近解析の方法を発展方程式の縮約への応用に焦点を絞り,初等的且つ明快な手続きとして解説する.そこでは,永年項を含む摂動解の包絡線として大域解を構成することで不変多様体の構成とその上での縮約された方程式の導出が達成される.くり込み群方程式が包絡線方程式として解釈できることを示す.くり込み群の方法に基づく縮約理論は,非線形振動子に対するKrylov-Bogoliubov-Miteopolskyや蔵本によって定式化された縮約の一般論によく対応することが強調される.