著者
竹石 洋介
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.75-84, 2012-03

本研究は、日本の「伝統」を教えるための「相撲の教材研究」のひとつの試みである。江戸時代後半から衰退し始め、近代日本においてその存続を危ぶまれた相撲は、「国内に向けたナショナリズム」と「国外に向けての倫理主義」を前面に押し出すことで、近代日本の「国技」として存続し発展してきた。その際、近代相撲にはじめて現れた「天覧試合」「国技館」「品位・礼節」などは、「創られた伝統」として「内に向けたナショナリズム」と「外に向けての倫理主義」を象徴するものだったのである。つまり、相撲における「品位・礼節」は、近代になって発明された「伝統」に過ぎず、それを教える意義は、少なくとも、「伝統」の教育としてではない。では、学校体育で教えるべき相撲の「伝統」とは如何なるものか。「身体」に焦点化しながら考察する。
著者
国狭 武己
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.95-106, 2012-03

本研究の結果を以下のように要約する。まず、TQM と MOT の初期接点の契機を明らかにした。それは、1980 年NBC 放映の「If Japan Can… Why Can't We?」である。これによりアメリカでデミングと日本的TQC が脚光を浴びることになり、アメリカのTQM の萌芽が始まる。また、その直後の1981 年にMIT スローンスクールでMOT コースが開講された。これを契機にTQM と MOT の三つの初期接点が出現する。第一の接点は、1985 年に発表された産業競争力委員会(1983 年設立)の報告書「ヤング・レポート」である。これは技術重視を主張し、その後のMOT の展開に大きく影響している。また、これはすぐ後に制定されるMB 賞法に大いに影響したと判断できる。第二の接点は、1987 年に制定されたMB 賞法である。これは、TQM の確立に直接関与しているだけでなく、MOT にも大きく影響していると思われる。それは、MB 賞評価基準等から読み取れる。最後の第三の接点は、1989 年に発表されたMIT 産業生産性調査委員会(1986 年発足)の調査報告書Made in America である。これも「ヤング・レポート」と同様、技術重視を主張するが、より詳細である。品質向上や継続的改善等にも言及しているので、MOT だけでなくTQM の発展にも大きく貢献したと判断できる。
著者
南 俊朗 大浦 洋子
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-16, 2013-03

多くの大学において教師達は,学ぶ意欲が十分ではない学生を相手に如何に教育効果を上げるか日々努力を続けている。学力の低い学生達を観察すると,彼らは学力以前に学ぶことへの動機づけが十分でなかったり,学ぶとはどういうことかを意識していなかったりと,学びの基礎となるべき知識に対する好奇心,ノートを作成したり復習や予習をしっかりやるなどの心の姿勢に問題がある場合が多い。本稿では,学生の学ぶ力やその基礎となる学びへの意欲などを授業データに基づいてモデル化することを試みる。授業データとしては平常点の基礎となる出席や宿題提出状況などや試験の採点データ,そして学期末に実施された学生自身と授業への評価アンケートの結果を用いる。これらのデータを基に,学生の努力・成果・評価の相互関連を分析する。個々の学生に対する主観的な印象情報に加えて,このようなデータに基づく客観的な知見を併用することによって,より精密な学生モデルを得ることができ,ひいてはより良い授業改善に繋がることが期待できる。
著者
南 俊朗 馬場 謙介
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-25, 2014-03

図書館が学習グループの構成支援サービスを提供することにより図書館は利用者にとっての"ソーシャルメディア"になることができる。これはネットワーク時代の図書館における新規サービスへの1つの試みとしての意義があり,また近年の大学図書館において利用者が長時間図書館に滞在するような環境づくりの切り札的存在となっているラーニングコモンズ(LC) 空間の有効活用にも寄与することになる。このような背景の下,本稿は図書館の貸出記録に基づいた学習グループの構成という手法について議論し,1つの方法を提案する。本手法においては,学習グループのメンバは貸出記録から定義される利用者の興味分野の類似性や専門度等に基づいて選定される。このような目的やアプローチによる研究はこれまで十分なされておらず,本論文の議論も未だ初歩的レベルにはあるものの,将来の図書館サービスとして大きな潜在的重要性をもつ。
著者
坂上 宏
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-42, 2005-03-22

1982年フィンランド大統領選挙で、マウノ・コイヴィスト(Mauno Koivisto)が当選を果たしたことは、前任者ケッコネン大統領(Urho Kekkonen)の25年に及ぶ長期支配に名実共に終止符を打ったという意味において、フィンランド政治史上大きな転換点となった。コイヴィストが大統領の座を手中にするための大きな一歩となった出来事は、彼が1979年5月に二度目の首相に任命されたことであった。本稿では、まず第二次コイヴィスト内閣編成の経緯について概述した。次に彼の首相就任をめぐる政治状況について、ケッコネンを始めとする有力政治家の利害関心、隣国ソ遠の姿勢、さらに世論の動向などを取り上げて議論した。
著者
進藤 康子 Yasuko Shintou 九州情報大学経営情報学部非常勤
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.134-126, 2013-03

万葉集の変(かえ)字法(じほう)から、対句を中心として、筆録者の言語意識に基づく、用字意識、表記意識を考察する。万葉集の表記法は、実に変化に富み、単に音声を形に写して表わすだけでなく、変字法による文字の可視的な領域での意味の拡充が、多種多様に意図されていることを論じ、万葉集のこの極めて特異な用字法の一端を明らかにした。
著者
進藤 康子
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.107-112, 2012-03

井原西鶴の『諸艶大鑑』の一節「心の綺麗なる事ばかりあらはし」を手掛かりとして、その手法の考察を論じる。この一節の持つ意味を詳しく解き明かすことにより、西鶴の作品作りの鍵となる部分が明確となると思われる。その鍵となる部分の考察には、遊女の「実」「誠」「粋」の持つ趣きを、丁寧に掬いあげることが解明の鍵となるであろう。西鶴は、遊女の世界を借り、遊女の次元から遊女の事を描いてはいるが、実は普段の人間一般に相通じる「綺麗なる心」の普遍性を描き切る、という西鶴の構想および自負と情熱が、執筆方針の出発点であったことを中心に論を進めていきたい。
著者
秋吉 浩志
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-12, 2010-03

「ネットワーク外部性」 が存在する市場には、多くの特徴がある。その中でもっとも検討しなくてはならない特徴は、「スイッチングコスト」と、それにともなう「ロックイン効果」である。「スイッチングコスト」は「消費者が財の購入元を変更する際に変更しないときと比べて労力や資源を余分に投入する必要がある場合、その余分な労力や資源」 である。とくに情報通信関連産業では、この問題に必ず直面する。 また、それを利用して、関係するステークホルダーを囲い込み、既存のネットワークに加入していた消費者が、新規のネットワークに参加するときに「スイッチングコスト」が発生し、サンク・コストの壁ができると、その利用者を既存のネットワークに拘束する方向に作用することになり、そのネットワークから移動することが、困難になってくる。このような現象を「ロックイン効果」と呼ぶ。この両方の概念は、今後
著者
南 俊朗 廣川 佐千男 伊東 栄典 池田 大輔
出版者
九州情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ICT技術の進展を受け図書館は様々な取り組みを行ってきた.Webサイトを開設し外部に向けた情報発信を積極的に行い,Web経由での蔵書検索を可能とし,貴重図書のディジタルデータの公開,電子ジャーナルの充実などを行ってきた.本研究は,図書館における次なる段階として評価情報などを利用した図書推薦システムに着目し,そのシステム要件や運用に関する基礎的な検討を行い今後の実用化への道しるべを与えることを目的に実施された.このような図書推薦システムの実現には,(1)評価情報などの収集,(2)情報の解析,(3)結果の提示,などが必要となる.これらに関する次のような研究を行い,また,その成果を国際会議などで発表した.(1)収集:評価情報への基礎データには,図書館外部情報,図書館サイトで収集された情報,図書館内収集の資料利用データなどがある.この認識の下,特定トピックに関するWebページを収集するトピッククローラーを開発しWebページからの情報抽出技術を研究した.また,RFID技術を利用したインテリジェント書架による館内での図書利用データの収集技術を研究し予備的実験を実施した.(2)解析:図書の評価情報を含む幅広いメタデータを対象とした解析技術を研究した.書評リストや音楽のプレイリストも対象とした.評価データ抽出へ適用するために,大量の項目リストから類似項目を発見する技術も研究した.またインテリジェント書架で収集された利用データを解析し,図書館や図書館利用者にとって有益な知見を得る手法を研究した.(3)提示:図書推薦サービスはそれだけで独立したものではなく,図書館ポータルサイトにおける利用者インタフェース全体の問題との認識の下,検索結果を鳥瞰して提示する技術を研究しWeb情報の統合化に関する研究成果を学内ポータル構築に適用した.これらの研究成果は,今後図書館で普及すると考えられる利用者への個別(Personalized)サービスなどに有効であるものと期待される.
著者
南 俊朗
出版者
九州情報大学
雑誌
九州情報大学研究論集 (ISSN:13492780)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.15-30, 2007-03
被引用文献数
1

従来の図書館は紙などの物理媒体を資料としてきた。現在は、ディジタル化された電子媒体を資料としネットワーク経由で提供する、電子図書館化の動きが起こっている。しかし、すべての図書館資料が電子化されるのは遠い将来のことであり、かなりの期間、図書館は、物理および電子媒体の両方を資料とするハイブリッド図書館として利用者サービスを提供していくことになる。本稿は、ハイブリッド図書館において、資料などの利用データを自動収集し、それを解析することにより、利用者の要求にあったサービスを提供する図書館マーケティングに関して、その仕組みを考察し、また、その重要性を示す。今後、図書館のハイブリッド化を進めていくためには、本稿で提案するような図書館マーケティングや、それを活かした利用者サービスの提供が極めて重要になっていくものと考えられる。