著者
西野 厚志
出版者
京都精華大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

2015年、谷崎潤一郎(1886~1965)は没後50年を迎え、決定版谷崎潤一郎全集(全26巻、2015~2017)が刊行されるなど、国内外を問わず関心が高まっている。その約半世紀にもわたった執筆活動は言論統制との衝突の連続でもあった。本研究では、自筆原稿や書簡といった肉筆資料の調査に基づいて、検閲制度との関わりを明らかにし、谷崎の文学的営為の意義について考察した。
著者
中島 勝住 中西 宏次 四方 利明 尾崎 公子 李 月順 ウスビ サコ
出版者
京都精華大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

市町村合併に伴い各地で進行している学校統廃合は、特に過疎傾向にある地域社会にとっては、さらなる過疎を進めることになる。一例を挙げればそれは、その地域に雇用が存在したとしても、児童を持つ家族世帯の流入・定着を阻害する要因になるからである。また、小規模、少人数ながら、あるいはそうであるが故に可能であった、その地域に根ざした特色ある教育が失われることを意味する。学校と持続可能な地域の関係を再考すべきときであろう。
著者
前田 茂 要 真理子
出版者
京都精華大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1920年代を通じて、英国のモダニズム批評は、新しいメディアである映画を扱い始め、それにより、文学と絵画を前提とする以前の美学と批評論は、新たに練り直されねばならなかった。この練り直しは、1930年代に入りロシア由来のフォーマリズム映画批評が紹介され、以降の映画研究における主流となっていくにつれ、ほとんど無視されてきた。こうした傾向に抗して、本研究では英国の批評動向における上記の部分に光を当て、現代の批評理論へのその有効性を検討することを目指した。その結果、ヴァ-ジニア・ウルフやウィンダム・ルイスらの言説の中に「時間感覚」と呼べるものが言及されるようになった事実を明らかにした。
著者
是澤 範三 毛利 正守 蜂矢 真郷 山口 真輝
出版者
京都精華大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

日本統治時代、台湾に多くの日本古典籍が渡った。その中でも、国立台湾大学(旧台北帝国大学)には『日本書紀』の多くの貴重な写本がある。本研究では、国立台湾大学における『日本書紀』の収蔵状況について調査し、特に貴重な三本を選び出版する。第一弾として圓威本『日本書紀』が2012年に台湾大学図書館より出版される。
著者
楠瀬 佳子
出版者
京都精華大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

現在は過去の連続線上にあり、過去の絶えまない再構築をくり返し、歴史は書き換えられていく。だが、誰にとっての歴史であるのかという視点を絶えず確認しなければならないだろう。とりわけ、南アフリカではアパルトヘイト政策のもとに、白人支配の立場から歴史が語られてきた。アフリカ人は長年にわたりあらゆる人権が奪われ、歴史から意図的に抹殺され、歪曲されたのである。こうした人種の強迫観念にとらわれた歴史をどのように書き換えるかは、過去を問い直し、現代と未来を再構築する重要な作業であり、国民国家をどう形成するかにつながる。南アフリカの女性たち、とりわけアフリカ人女性は、アパルトヘイト(人種隔離政策)体制のもとで「人種」「階級」「性」による三重の抑圧を受けてきた。さらには家父長制のもとで、家庭では父親、叔父、夫、息子によって支配され、労働の現場でも、男性の監督官や支配人に管理されてきたのである。女性の生活や経験は社会的に完全に無視され、社会の周縁におかれて見えない存在であった。本研究においては、数多くの女性にインタビューをしたり、真実和解委員会での証言を分析したり、文学に描かれた女性像をたどりながら、女たちの声を通して女性の実態を、明らかにした。こうした作業は歴史の再構築には欠かせないものであるが、時間的制約のなかでは、ほんの一部しか明らかにすることはできなかった。膨大な資料や、貴重な資料が手付かずのままであるので、今後もこうした研究を継続していきたい。歴史学のみでなく、文学、社会学、宗教学、自然史、博物学、人類学、政治学、経済学、女性学などあらゆる学問分野の共同作業も視野にいれなければならないだろう。