著者
神垣 良昭 南 眞一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.1138-1142, 2002-09-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
11

最近,急激な市場の立ち上げを見せているICカードは,CPU,RAM,ROMのほかに,電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性メモリーEEPROMを搭載している.MONOS型のEEPROMメモリーセルは高信頼性,高生産性に加えて,標準の半導体製造プロセスとの整合性がよい. ロジツク混載半導体チップへの適用が比較的容易なことから,MONOS型はシステム・オン・チップ(SOC)における有望な不揮発性メモリーといえる.シリコン窒化膜内の捕獲中心に電荷を蓄える構造のMONOS型は,従来,トンネル方式プログラムを採用しているが,局所的なメモリー現象を利用するホットキャリア方式が現れ,高集積・高速を実現している.MONOS型不揮発性メモリーの開発経緯,応用,今後の展開を述べる.
著者
吉田 亮 岩山 めぐみ グォ チョンリャン
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.90, no.7, pp.428-432, 2021-07-05 (Released:2021-07-05)
参考文献数
14

材料研究の逆問題への機械学習の適用例を紹介する.順問題の目的は,系の入力に対する出力の予測である.例えば,入力変数は材料の構造,出力変数は物性に相当する.逆問題では,出力の目標値を所与とし,それを近似的に満たす入力を求める.これ自体は何の変哲もないデータ解析のワークフローであるが,材料研究のデータ解析の特殊性は変数の高次元性と特殊性にある.一般に候補材料の探索空間は極めて広大である.また多くの場合,組成,分子,結晶構造のように固定長ベクトルによる数値化が非自明な問題を取り扱うことになる.本稿では,筆者らの近年の取り組みを中心にさまざまな実例を紹介しながら,逆問題を解く機械学習のエッセンスを解説する.
著者
松居 吉哉
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.513-516, 1982-05-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
30

第2次大戦後,日本の光学レンズは目覚ましい発展を遂げるに至ったが,それを支えた技術的な基盤の一つに光学系のsynthesisに関連する理論がある.その中でも重要な位置を占めるのが収差論とズームレンズの設計理論である.これらが実際のレンズ設計で果たす役割と,日本における研究の発展について概観する.
著者
當摩 哲也 辛川 誠 髙橋 光信
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.673-677, 2019

<p>金沢大学の有機系太陽電池を研究するグループは,電極材料を工夫することによって,大気中で塗って作製できる高耐久の逆型有機薄膜太陽電池(逆型OPV)の開発に世界に先駆けて成功した.ここでは,その先駆けとなった化学浴析出法により作製したアモルファス酸化チタン(CBD-TiO<sub><i>x</i></sub>)薄膜を電子捕集層とした逆型OPVについて概説し,現在世界のさまざまな企業から発売され始めたOPVモジュールの基礎となる技術を紹介する.また,さらなる高耐久性や高性能化を導き出す可能性のある金沢大学でのOPV分析技術と分子レベルからの高性能化技術を紹介し,OPVの将来像について議論を行う.</p>
著者
山本 格治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.377-382, 1962-05-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
4
著者
菊池 誠
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.913-918, 2000-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1

1940年代の米国ではレーダーの開発が国家的な課題となり,その関連で鉱石検波器の特性改良に努力が集中した.一方ベル研究所では,将来の米国社会のために高性能の電話網を作るという課題に挑戦する.そのために真空管を乗り越えて新しい増幅器の発明が必要となった.失敗の連続の後,トランジスタが生まれる.そしてそれは,半導体という未知の材料を物理学的に理解する研究に新しい時代を開いた.電子デバイスの開発と基礎研究,そこから集積回路が生まれる歴史の経緯を述べる.
著者
原 築志 石井 英雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.401-405, 1996-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
23
被引用文献数
1

高温超伝導体を用いて地中管路に敷設できるようなコンパクトで大容量の地中送電ケーブルが実現できれば,設備形成のコストダウンとともに,稠密化した地下空間の有効利用が期待できる. (Bi, Pb)2Sr2Ca2Cu3O10の銀シース線材を中心に,フレキシブルな高温超伝導線材の長尺化が進み,臨界電流密度も104A/cm2以上の値が安定して得られるようになった.このような線材を使用してケーブル.応用を目指したモデル導体の試作が進められ,メートルオーダーの長さで液体窒素中最大で12kA程度の容量が達成されている.さらに,最近,導体に電気絶縁層,磁気シールド層などを装備し,断熱管に引き込んだケーブルのプロトタイプが試作され,課通電試験の成功例が報告されている.本稿では,高温超伝導ケーブルのニーズと,重要技術である交流損失を含めたケーブルの研究開発の進捗を概観する.