著者
松村 正清
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.841-848, 1996-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

薄膜トランジスタ (TFT: Thin-Film Translsto) は長い歴史を持ってはいるが,その有用性が広く認められたのはこく最近である.この急速に重要性を増しているTFTについて,その生まれと育ち,未来展望,動作原理,構造と種類などを概説する.
著者
熊谷 悠
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.172-176, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)
参考文献数
19

計算機性能や計算技術の大幅な向上により,多数の物質に対して系統的・網羅的に第一原理計算を実行することで,データベースを構築することが可能となってきました.この計算材料データベースは,個々の物質に関する計算結果を参照するのみならず,材料スクリーニングや機械学習のデータセットに用いるなど,多様な広がりを見せています.本稿では,計算材料データベースの有用性や既存のデータベースを紹介するとともに,我々が構築した酸化物DBとその応用例を紹介します.
著者
須丸 公雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.161-165, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)
参考文献数
22

さまざまな細胞治療が普及し,ヒト培養細胞を用いた医薬品アッセイが盛んに検討されている.来たるべき培養細胞の利活用時代に備え,細胞の分別や純化,回収などの操作を自動化すべく,筆者らは光に応答して細胞に作用する変化を遂げる光応答ポリマーを培養基材に用いるスキームを検討した.まず,光に応答して速やかに水溶化するポリマー材料を新規に開発,これを塗布した培養基材上に接着した細胞を,光照射によって生きたまま選択的に剝離回収できることを示した.また,光に応答して酸や熱を発生するポリマーを用いて,細胞を選択除去して純化し細胞単層を切断する「力ずく操作」の実現を実証した.これらの技術を,ヒトiPS細胞の維持培養などに適用した例についても議論する.
著者
角田 直人
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.354-358, 1995-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
34
被引用文献数
1

la型に分類される大部分の天然ダイヤモンドには0.1 at%程度の窒素不純物を含み,その成長過程の環境により窒素はさまざまな形態に集合する.主な欠陥はAセンター,Bセンターおよび薄板である.Bセンターが多いlaB型のものには,薄板が部分的または完全に分解した場所にボイダイドと名付けられた欠陥も観察される.これらの欠陥は,電子顕微鏡で分布状態を直接観察できるので,その欠陥構造の解明は,ダイヤモンド中での窒素の挙動を理解するうえでたいへん重要である.ここでは,薄板やボイダイドの欠陥構造と窒素の集合過程について述べる.
著者
左貝 潤一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.567-574, 1993-06-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
47

位相共役波が発見されてから約20年.その特異な性質ゆえ,種々の媒質を用いて位相共役波を発生させ,応用することが試みられてきた.本稿では,位相共役波の性質,発生法,応用などを,特に初心者にも分かりやすいように,基本にたちかえって説明するとともに,研究の最前線の一端までを紹介する.
著者
難波 義捷
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.639-644, 1971-06-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The cross-sectional structure of evaporated Bi films has been investigated electron-microscopically by means of the replica technique. Films were prepared changing the evaporation conditions : substrate temperature, residual gas pressure and deposition rate. The influence of deposition rate appears most conspicuously at the thickness where the film becomes continuous : the structure of the film surface is essentially determined at this stage. The influence of deposition rate becomes more and more remarkable as the substrate temperature is elevated. If the residual gas pressure is high, the colmnar growth, as was observed with Al films, takes place in Bi films, also.
著者
石川 亮 柴田 直哉 幾原 雄一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.74-78, 2023-02-01 (Released:2023-02-01)
参考文献数
17

収差補正レンズ技術の商用化により,物質の局所構造を原子レベルで解析できる走査透過型電子顕微鏡はさまざまな分野で必要不可欠なツールとなった.しかし,得られる情報は観察方向に投影された2次元構造であり,物性を担う格子欠陥などの3次元構造を原子レベルで観察することはいまだ困難である.本稿では,新世代の収差補正レンズにより実現した大収束角照射を用い,一軸に沿って3次元構造情報を取得する深さ断層法の最近の進展について紹介する.

1 0 0 0 OA EDFA誕生物語

著者
中沢 正隆
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.547-550, 2013-07-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
15
著者
吉川 英樹 篠塚 寛志 永田 賢二
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.41-45, 2023-01-01 (Released:2023-01-01)
参考文献数
6

表面分析法は,深さ方向に原子層からマイクロメートルレベルの広いダイナミックレンジを持つ試料表層において,試料の組織や化学組成などを分析する手法である.そのため表面分析は,分析の際の試料処理やデータ解析における分析者の知識と熟練の経験を要し,計測分野の中でもデータ解析の自動化が特に困難な技術の1つとなっています.この困難さを克服してデータ解析の自動化を行うには,熟練の分析者の暗黙知となっている経験をデータ駆動型のアプローチによって明らかにすることが重要となります.本稿では,表面分析法の1つとしてX線光電子分光を対象としたデータ駆動型のアプローチによるデータ解析の自動化の実例を紹介します.
著者
井手 拓哉 村上 政明 結城 光平 結城 和久
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.16-19, 2023-01-01 (Released:2023-01-01)
参考文献数
10

500W/cm2の発熱密度にも達するとされる次世代パワー半導体の冷却を実現するために,高熱流束に対応した沸騰促進技術および沸騰促進体を我々は開発した.開発した沸騰促進体は,伝熱面にロータス金属を利用し,その微細一方向性気孔を介したブリージング効果により,冷媒供給,沸騰および蒸気排出のいずれをも促進する.ターゲットとする車載用にとどまらず,サーバなどでも冷却器としての実用化が進んでいる.本稿では,ロータス型ポーラス金属を利用した沸騰冷却技術に関する原理や応用製品について紹介する.
著者
大石 昌嗣 廣井 慧 尾原 幸治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.35-39, 2023-01-01 (Released:2023-01-01)
参考文献数
44

リチウムイオン2次電池のさらなる高性能化を目指して,精力的な研究が数多く行われている.従来の正極材料は,材料の結晶構造を保ったままLiイオンのみが脱離挿入するため,優れた充放電サイクル特性を示す.一方で,高エネルギー密度を示すリチウム過剰系正極は,Liと遷移金属が連動することで生成される低結晶構造にて,多量のLiイオンの脱離挿入を達成していた.本稿では局所構造から平均構造まで解析可能なPair Distribution Functionを用いた構造解析より,リチウム過剰系正極の充電時にLi欠損層を支持するピラー金属イオンの移動に伴う結晶構造変化によって生成する低結晶構造の存在を明らかにした研究例を紹介する.