著者
布川 和彦
出版者
公益社団法人 日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.2-13, 2022-02-01 (Released:2023-04-24)
参考文献数
35

「量分数」という捉え方が分数の学習や指導についての議論で重視されている一方で,それが意味する内容が明確にされていないという現状に鑑み,本稿は「量分数」という捉え方が重視すべき分数の側面について検討したものである. そのためにまず「量分数」についての多様な捉え方やその捉え方に対する批判について考察を加え,量を用いて分数という新たな数を学習することから,測定の基準となる量の設定とその基準による測定とが多様な捉え方に共通する要素として含まれることを指摘した.次に,測定の文脈を意図的に用いて指導を行った先行研究を検討し,測定の文脈で学習する場合に着目すべき点を見出し,その視点からわが国の教科書での扱い方についても検討を行った. その結果,元となる単位とそこから構成される下位単位を明確にすること,単位分数の特殊性に配慮すること,整数の扱い方との整合性を検討することなどが必要だとの示唆が得られた.
著者
多久 和真 播元 和貴 白井 康智 森田 大輔
出版者
公益社団法人 日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.14-22, 2022-03-01 (Released:2023-04-25)
参考文献数
17

本稿の目的は,批判的に考える態度(批判的思考態度)の伸長を図った統計指導の設計ならびに実践を行い,生徒がどの程度,批判的思考態度の重要性を認識したかを明らかにすることである.教材開発にあたり,「現実の文脈の使用」「『読解の文脈』での活動の重視」「データの提示の方法」という点に留意した.そして,複数のデータの読み取りや,個人の考えを小グループで検討し,他者の考えを聞いた上で改めて個人の考えを再検討するという活動を導入した教材を開発した. 指導実践を通して,データの提示の仕方を工夫することで複数のデータを参照することの重要性が理解され,また,結論を何度も他者と意見交換することで,意見の変容が促され,他者との意見交流の重要性が理解された.そして,本実践を通して多くの生徒が批判的思考態度の重要性を認識したこと,また,批判的思考態度が表出する場面として,「新たなデータの必要性を問う場面」「複数のデータを参照して答えた場面」「最終的な意見を述べる場面」があることが明らかとなった.