著者
宮下 英明 神川 龍馬
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

「天狗の麦飯」と総称される土壌様微生物塊について,既報産地の再調査・解析をおこない,異なる山系のものが類似の微生物群集構造をもつも一方で,全く異なる微生物群集構造をもつものがあること,「天狗の麦飯」の弾力のある粒状微生物塊の形成には,細胞外粘質物質をもつγ-proteobacteria及びAcidobacteriaが寄与していること,既報産地の「天狗の麦飯」の消滅に,植物による被覆や土壌化,人為的攪乱が深く関わっている可能性があること,が明らかになった。
著者
宮下 英明
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は,昨年度に新たに発見した産地の1つ(産地Y)から,地権者の許可を得て「天狗の麦飯」を採取し,これまで研究に用いてきた産地Kのサンプルと,1)光学顕微鏡による微生物の形態多様性と主たる微生物の形態の比較,および2)真正細菌の16S rRNA遺伝子を標的としたクローンライブラリ法によって得られる真正細菌群集構造の比較を行うことにより,両サンプルに共通する特徴を調べ,主要な微生物の代謝情報から形成・維持機構について考察した。その結果,どちらの産地のサンプルにも,カプセル状の莢膜をもつ細菌が,微生物塊を構造的に維持する細菌として観察された。細菌群集構造解析では,両産地のライブラリのそれぞれ87.0%,74.7%が4つの系統群(Ktedonobacteria綱Ktedonobacterales目,γ-proteobacteria綱Ellin307/WD2124, α-proteobacteria綱Beijerinckiaceae/Methylocystaceae, Acidobacteria門subdiv.1)の生物で占められていた。この群集構造は,産地周囲の土壌にみられたものと全く異なっていたことから,「天狗の麦飯」の共通の特徴と考えられた。さらに,両産地に共通して検出されたKtedonobacteriaとγ-proteobacteriaの総計が,各ライブラリの43.0%,27.3%を占めた。このことから,この両生物群が主たる微生物である可能性が高くなった。これまで「天狗の麦飯」は独立栄養的生育をしている細菌を中心に増殖する微生物塊であると考えられてきが,本研究によって検出された真正細菌はほぼすべて従属栄養生育するものと考えられた。今後,「天狗の麦飯」に供給される物質の情報や,下層を含めた周囲の微生物群集構造の特徴について精査しすることによって形成・維持機構の解明がはかれるものと期待できる。
著者
宮下 英明
出版者
公益社団法人日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.67-70, 2008-04-01
被引用文献数
2 5
著者
渡邉 信 中嶋 信美 河地 正伸 彼谷 邦光 加藤 美砂子 宮下 英明 白岩 善博
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は将来のBotryococcusを用いた石油代替資源開発に資するため、Botryococcus炭化水素生産代謝経路の生合成経路やその調節機構並びに大量増殖機構に関わる生物学的・化学的研究を行った。その結果、1)鉄成分が細胞やコロニーの形状、そしてオイル生産に与える影響が大きいこと、2)Botryococcusの63株の生産する主要炭化水素は直鎖アルケン型(race A)、トリテルペン型(race B)、テトラテルペン型(Race L)および上記3つの型のいずれにも属さない種々の構造のものが含まれるマルチ型タイプに分類されたこと、3)BOT-70はMEP経路を使ってテルペノイドを合成していること、4)炭化水素合成時にはSAMサイクルが活性化されていること、5)B.brauniiの大量発生には亜熱帯地域の夏季の成層形成・日照が重要であり、また窒素分濃度の高い水域にはB.brauniiはほとんど出現しないこと、6)細胞増殖が飽和する以上の光エネルギー(40μmol photons/m^2/s)が光合成生産を介して炭化水素生産等の物質生産に振り分けられていることが示された。
著者
長沼 毅 今中 忠行 伊村 智 内田 雅己 大谷 修司 神田 啓史 黒沢 則夫 幸島 司郎 高野 淑識 東條 元昭 伴 修平 福井 学 星野 保 宮下 英明 吉村 義隆
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は地球環境の健康診断「国際極年」の中核計画として実施されたものである。地球環境変動のうち温暖化の影響は南北両極、特に環境変動に鋭敏に応答する微生物の生態に顕著に現れる。そこで本研究では初めて総合的な極地微生物の生態調査を行った。極域および高山氷河域に生息する微生物の種類と現存量および固有種・汎存種を調べることで、今後の変遷を評価する上で必要になる「国際極年参照データ」を残すことができた。