著者
古川 智恵子 豊田 幸子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.25-33, 1980-03-31

大裁女物浴衣及び袷長着の既製和服における,身丈・袖丈・裄丈のサイズ構成について調査し,次の結果を得た.1.身丈は10サイズ以上の分布がみられたが,若・中・高年ともに,155cmの構成が最も多く,次に160cm,158cmの順位であり,以上の3サイズで全体の約70%以上をしめている.低率を示したサイズは153cm, 156cm, 150cm, 152cmであった.既刊和裁書における身丈の割出し方は,身長と同寸法が体型に適合する身丈寸法として高率を示した.工技院資料による20才女子標準体格の身長は約155cmであり,既製和服での高率を示した155cmの身丈と同寸法で,妥当である.中・高年向においては,身長に対して約4〜5cm長の身丈155cmが高率を示した理由として,(1)若・中・高年の加令につれて,ローラー指数は大きくなる傾向を示し,中・高年の肩の厚みに要する寸法をアルファーとして身長に加算するため,若年と同寸法の身丈となると考えられる.(2)量産サイドからは,多サイズにわけて裁断する事は,手間がかかり,能率も悪く,裁断コスト高になる.以上の理由から,量産サイドでは広く不持定多数に適合する身丈寸法として, 155cmを多く採用しているものと考える.2.袖丈では49cmが最も多く,次に47cm, 50cm, 46cmに分散してみられた.既刊和裁書での袖丈の割出し方法は,身長との比率で計算する方式がみられ,体型適合寸法の若年向では身長/3,中年向では身長/3- 3〜4 cm, 老年向では身長/3〜5〜6cmが多くみられた.既製和服についての身丈・袖丈の関係では高率を示した155cmの身長/3は約52cmとなるが,袖丈49cmが最も高率を示した.これは中・高年向には妥当な寸法と考えられるが,若年向にはやや短かい寸法と考えられる.この理由として従来からの慣習サイズの袖丈は,1尺3寸(49cm)がよいという固定観念があるために,量産サイドもこの袖丈寸法を広く採用しているものと考えられる.3.裄丈は61〜68cmまでの11サイズの分布がみられた.最も高率を示したのは64cmで,次に65cmである.裄丈を構成する袖幅と肩幅の関係は肩幅より袖幅が2cm広いグループが最も多く26%,ついで1cm広いグループが21%であり,その他13グループに広く分布してみられたが,全体では袖幅を広くする方法が68%をしめた.既刊和裁書の調査結果では,肩幅より袖幅を1cm広くする方法が高率を示したが,既製和服の実態では肩幅より袖幅が2cm広いグループが最も多くみられた.この理由として,今日の若年層の体型を考慮し,裄寸法を長くかつ身幅を適合した寸法にする為には,袖幅を肩幅より広く設定した方が,袖付の傾斜も少なくて仕立ても容易であり,身幅には支障なく出未るために,量産側は一般向の既製和服寸法として,肩幅より袖幅が2cm広い寸法を採用しているものと考える.以上の理由からこの方に妥当性があるものと思われる. 本学学生の裄寸法計測値は, 66.5cmであり,既製和服寸法に高率を示した裄寸法の64〜65cmに対し1.5〜2.5cmの不足がみられた.以上今回は既製和服の丈寸法について検討したが,引続き次報では幅の構成寸法と体型との関連性について調査検索し,報告する.
著者
内島 幸江 平野 年秋 南 廣子 胡 国文
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編 (ISSN:09153098)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.125-135, 1994-03-05

近年,照葉樹林文化論を中心として日本文化の基層を追求する研究が展開されている.最近の比較民族学的研究により,中国西南部(貴州省・雲南省)からヒマラヤ南麓にいたる照葉樹林帯における民族文化の特色と,わが国の伝統的な文化の間には極めて強い共通性と類似性が見られることが明らかにされてきた.すなわち,モチ,茶,大豆発酵食品をはじめとする食文化や,歌垣,各種の民話や稲作を中心とした農耕文化などの日本と共通した特色がみられることが知られるようになった.また,栽培稲の起源地として,このアジア大陸の亜熱帯圏に属する丘陵山岳地帯である「アッサム・雲南」を中心に考えられており,この地域から揚子江流域へと伝播し揚子江に沿って東へ展開した稲作が,江南一帯から東シナ海を渡って日本の北九州に達しだとするのが,日本へのコメ渡来説の中で最も確実性が高いルートの一つと考えられている.この稲の起源地の周辺の雲南・貴州一帯に走る大高原は起伏の激しい山地であり,そこにさまざまな民族が錯綜して居住している.中国ではそれぞれの民族が相互に交渉しつつ中国の歴史を形成してきたのであり,各民族の習俗・習慣も相互に影響を受けながら,種々の要素が複合した文化を育んできたものと考えられる.貴州省では現在少数民族として公認された集団のなかで苗族が最も多く,第2位は布依族が占めている.中国の苗族総人口の約半数が貴州省で生活(368.6万人)し,また全国の布依族のほとんどが貴州省に居住(247.8万人)しており,両民族とも古い歴史を持ち,多くは漢族の南下に伴い,漢族の勢力に圧迫されてこの地に移住してきた民族であり,照葉樹林文化を継承してきた人々である.一般に少数民族のあいだには,東アジアの古層文化が残存していると考えられているが,貴州省についてのこれまでの民族文化に関する報告は東部,中部を主体としており,西南部地域の苗族,布体族の人々の食生活の実態については,いまだ多くの知見は見られない.この貴州省西南部は交通の不便な辺境の地であるが,数年後に完成予定の鉄道敷設や空港建設,大型ダムの建設計画があり,今後これらの急激な開発の影響を受けて自然環境や社会環境が変化し民族の特色が消失する危惧が持たれるところである.なお,中国の経済政策等の変化も注目されるところであり,それに伴って食生活も多元的に変容するものと思われる.そこで現在の食形態を調査し,この地域の苗族および布依族の食文化の特色を明らかにし,今後の食生活の方向を探ることを目的として本研究を行った.本報ではこの地域の苗族,布依族の現在の食生活状況を把握するため現地調査を行い,食文化の諸側面のうち食品の利用状況について比較検討した.
著者
鈴木 重夫
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.127-132, 1987-03-01

幼児は日常的に走ることを好んで体験している.また,走る動作のある遊びを好んでしている.特に幼稚園のような集団生活をする場では,その集団力学的な面も関与して,走る活動が多くなっている.そのような中で,走る快感はもとより,止まることのタイミング,スピード感,距離感等が養われ,友達と遊ぶ喜びを味わい,ルールのある遊びを楽しむことによって社会性が発達する.このように走ることは,幼児の生活の中に深くかかわっている.3歳児にみられるような,ぎこちなさも,このような生活の中でやがて消失するであろう.しかし,この場合も,親や教師がよい模範を示すと同時に,それぞれの幼児の個人差や特徴及び実態に目をむけ,手の振りかたや,足のあげかた等,適切に助言を与えることを考える必要があるように思う.また,ゲーム的な遊びのみでなく,直線コースを友達と競争して力いっぱい走るとか,リレーをするとかの競技的な集団遊びも取り入れていくことが望ましいと考えている.それは,走る姿勢の矯正や,記録の向上を意味しているのではない.早く走ることのできる喜びを幼児なりに体験し,自信を持つことができるようになることを望んでいるのである.
著者
桜井 淑子 野々垣 幸子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.71-74, 1980-03-31

今回は前2回に引き続き,電磁調理器の機能性と経済性を知るため,電磁調理器の新製品2種を用い,調理法の種類や試料を前2回と同様の条件にして実験を行い,改良点の有無の検討を試みた.調理時間については出力の大きい新製品も都市ガスに比べるとやはり一歩を譲り,ガスが最も短時間に調理できる.しかし燃料費については大差なかった.新旧製品を比較すると,前回の実験における「焼く」調理の場合,からたき防止装置の警告に従い,絶えず出力調整を行う煩わしさが,新製品においては自動的に行われ,他の調理法の場合同様極めて円滑に加熱できた.今回は主として5種の調理法における調理時間,燃料費などについての比較,検討を試みたのであり,加熱後の食品の成分,食味などの比較は行っていない.電磁調理器の長所が助長され,短所が改良されることを今後に期待したい.
著者
荻野 千鶴子 岩城 久美子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.109-114, 1976-03-15

以上をまとめると,中学3年女生徒は1.教科としての技術・家庭科の「好き」「嫌い」については,顕著な地域差はなく,「好き」なものは32.4%,9教科の丁度中央に位し,「嫌い」なものは11.0%で,音楽とならんで最低である.2.中学校技術・家庭科(女子向き)の内容中,「不必要」を訴えるものの最高は木材加工,最低は調理実習,ついで被服製作で,その必要度は,調査人数中,生徒は約6%,父母は,約8%である.3.被服製作のうち,学習してよかった教材としては,ワンピースドレスが最も多く全体の約半数を占め,ついでパジャマであり,スカートは,僅か5%程度である.4.被服製作については半数以上のものが「好き」であるが,「嫌い」な理由としては,「説明聞いてもわからない」「着れないから」というのが僅かながらある.つぎに父母の意見としては1. 家庭科の学校教育としての必要性を全体の93.2%のものが認めており,「不必要」と答えたものは僅か2.7%足らずである.2.必要性を認めた理由は,「将来の生活のため」「人間性育成」などがあげられている.3.現在の被服製作の程度は,「現状のままでよい」というのが72.4%以上あるが,「程度を上げてほしい」というよりむしろ「下げてほしい」との意見の方が多い.また作業方法も,生徒の能力の個人差を充分認め,家庭作業は「やむを得ない」とするもの約30%であるが,半数の人は「学校のみの作業」を望み,遅れたものへは,「先生の手伝い」も希望している.現在次期学習指導要領の改訂準備の時期でもあり,社会の世論も大切であるが,実際にこれを学ぶ生徒の意識と合わせて父母の考えも知り,現代社会における義務教育の最終段階の家庭科教育のあり方について研究し,大学教師も,中学校の実態を充分把握した上で教育実習の事前指導を行ない実習の効果をあげたいと考える.終わりに,本調査に御協力くださった東海3県下の中学校3年女生徒および,その父母ならびに家庭科の先生方に厚く感謝します.
著者
木村 徳丸
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.111-120, 1985-03-01

大型電算機{CU(IBM、AMDAHL)、システム470-V/8}処理にもとづくSDモデルの誤差分散の非均質性に関する吟味と検出 この小論で筆者は、SDモデルにおける整合型共分散行列の推定子と誤差分散の非均質性に関する直接法テストをめぐる問題をとり扱い、SDモデルの誤差分散の非均質性に関するホワイトやクラグに代表される従来の各論証結果に対する批判的吟味を行ない、さらに、個々のSDモデルに採択されている外生変数がラグつきの内生変数に代位可能となるとき、実際のシステム展開に事実上有効なものとなるこれら論証結果のうちの各ケースを、コンピューターシミュレーションの作業をとおしてそれぞれ検出した。(付記):なお、この小論は、昨夏(1984) 8月、米国ワシントンB.C.で開催された国際OR学会での研究報告論文を修正加筆したものである。ちなみに、うえにのべたコンピューターシュミレーションの作業は、昨夏8月初句、各データベースのバッテリーとエントリィのためのセッティングをすべて日本ですませたファイルを米国コロンビア大学大型電子計算センターヘ搬入し、{CU.(IBM)AMDAHL S. 470-V/8}のマシンに入力し、筆者自身がおこなったものである。なお、紙幅の都合でプログラムリストはすべてこの小論での掲載を割愛した。
著者
古川 智恵子 豊田 幸子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.11-20, 1982-03-31

北設楽地方における女の仕事着の戦後から現代までの着衣形態の変遷について,当地を調査した範囲から次の結果を得た.明治以前からひきつがれてきた北設楽地方の仕事着は,仕事の種類によって着丈を自由に調節し得る長着と腰巻に半幅帯をしめ,畑作,山仕事には,はばきをつける着衣形態が6ケ町村の共通パターンであった.地域により,水田作業の時には股引を,畑作,山仕事には,はばきのかわりに,たつけやもんぺを着用する着装形態であった.この主流形態は昭和20年頃まで続いたが,その後長着物,腰巻のワンピース形態から,上は腰までの丈の和服式上半衣,すなわち標準服又は活動衣とよよ半じゅばん形態と,下半衣はたつけがもんぺを組合わせる上下二部式の着衣形態への変遷が徐々にみられ始めた.昭和20〜30年の間はこの作業衣形態が主流をしめ,余り大きな変化はみられなかった.昭和23年の農家生活改善普及事業による農作業衣改善運動の影響により,少数の農村の婦人達は改良作業衣,洋服式作業衣の講習を受け導入を試みたが,大半の婦人達はそれを受け入れる経済的基盤がなく,従来の仕事着に強い愛着を示していた.昭和30〜40年にかけては,高度経済成長政策によって農家の経済生活は上昇し,生活様式も次第に洋風化してきた.仕事着も今までの和服様式から,和洋併用,又は折衷の形態がふえ,ズボン式もんぺ等ズボンの長所を採用した下半衣が着用された.昭和40年以後はアパレル産業の台頭とともに北設楽郡にも,地域によって遅速はあるが洋服化が進行し,既製の作業衣へと年次的に変化している.現在の仕事着は,水田,畑作,山仕事いずれの作業時においても,上半衣,下半衣の二部式着衣型式である.その組合わせは,腰切と既製もんぺ,ブラウスにズボン式もんぺ,ブラウスや綿シャツにジーンズ,あるいは既製作業衣上下,色とりどりのトレーニングウエアの上衣など,いずれの年代も既製で作られた仕事着を,色彩,形にこだわらず自由自在に和洋組合わせて着装している状態がみられた.そしていずれの地域においても,ほとんどの人がかっぽう着やエブロンを仕事着の上に着ている共通性がみられた.以上のことから現代では,地域性はほとんど消滅し,代わって既製作業衣という画一化が進みつつあるのが現状であるといえよう.第1,2報とも次の方々には調査に対し御協力を賜わり,ここに深く感謝申し上げます.稲武町……今泉常四郎氏 79歳,鈴木清敏氏 85歳.設楽町……熊谷好恵氏 86歳,沢田みよ氏100歳.東栄町……佐々本亀鶴氏 77歳,一の瀬しげの氏 81歳.津具村……村松まつの氏 97歳,村松しき氏 53歳.豊根村……青山鉄二郎氏 75歳,清川さだ氏 74歳.富山村……田辺正一氏 80歳,鈴木より子氏 67歳.
著者
柴村 恵子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.113-118, 1974-03-15

1.縞幅1:1,8:8,1:6,1:14.5,1:21の割合で,照度10, 100, 300, 500,1000,2000〔lx〕の場合では縦縞が一番見やすく,次に横縞,斜縞の順であった。2.同じ白:黒=1:1の割合でも0.1cmと0.8cm幅では0.8cmの広い縞の方が見え方段階はよくなる。3.距離と照度の関係を分散分析した所距離による影響は大であるが,照度による影響はあまり見られなかった。しかし,比率が大きくなれば距離による影響もあまりなくなる。4. 3m地点のあたりかち明るさが生地に光沢を与え,そのため白線がグレー,又は黄味がかったり,見え方において縞幅が違って見えたりする。これが派手,地味に見えるのに影響するものと思われる。以上の実験結果から横,縦,斜縞方向のワンピース・ドレスの表わすシルエットの感じはおよそ知る事ができた。この後は,動作にともなった実験を重ね,よりよい縞のデザインを究明したいと思う。終りに本研究を行うにあたり終始御指導いただきました岐阜大学教育学部の中野刀子教授,試料の測定に御協力いただいた愛知県三河繊維技術センターの志満津発司氏に厚く御礼申し上げます。
著者
栃原 きみえ 斉藤 一枝 坂倉 園江 今井 康世 柴村 恵子 岡島 文子 山田 由利子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.29-40, 1970-03-15

スカート製作の場合のスカート幅やダーツの問題に関する研究をするために女子の腰部におけるウエストおよびウエスト〜腸骨棘1/2,腸骨棘,腸骨棘〜ヒップ1/2,ヒップ,最大(腹部や太ももの出張り分を含む)の6つの位置の横切断面図について,幅径および厚径,更に周径の比率について検討したが次のようなことが明らかになった.1.腰部各位置の前対後厚径の比率(ウエスト基準線を基点)ウエスト(W)では基準線を1/2に定めたので,もちろん前後同径であるが,ウエスト(W)〜腸骨棘1/2の位置では,後厚径より前厚径が大であり,腸骨棘では逆に前厚径より後厚径の方が大の者が多い.ヒップ(H)の位置でも平均値で42対58%と前厚径より後厚径が大の傾向がみられ,更に最大の位置でも同様に後厚径が大の者が多かった.2.腰部各位置の前対後周径の比率 腰部のウエスト,ヒップ,最大の前対後周径についで検討した結果,ウエスト(W)では前後同周径の者は32%で,前より後周径が大の者が多い.ヒップ(H)では前後同周径の者は28%でほとんどの者が後周径が大であり,最大の場合でも同様の結果が得られた.以上のように厚径,周径ともにヒップの位置および最大では後が大であるが,これはでん部の出張りのためである.スカート製作において,一般には前後の幅を同一にした製図法が多いが,前よりも後幅の分量を多くする必要があることを明らかにすることができた.3.腰部各位置の左対右幅径の比率(ウエスト基準線を基点)4.腰部各位置の左対右周径の比率 腰部各位置の左対右幅径の比率と周径の比率について検討した結果,ウエストでは左右間厚径の者は36%であるが,同周径では61%の者がおり,厚径の場合よりも周径の場合の方がはるかに多数を占めていた.またウエスト位置では幅径の場合は左が大の者が多いが周径では逆に右が大の者が多いという結果が得られた.このことにつき各被験者のウエスト位置の横切断面図で検討した結果,右ウエストに筋肉の発達した者が多く,左より右ウエスト廻りのカーブが強い傾向がみられた.ヒップ(H)では左右同幅径の者は,29%であったが周径の場合は57%とはるかに多数を占めている.なお幅径,周径ともに左に比較して右が大の者が多かった.最大では左右同幅径の者は,43%で左右同周の者は64%と周径の場合の方が多数であった.なお幅径,周径ともに右が大の者が多い傾向がみられた.このことは生理学的に何かの原因があると推察される.これらのアンバランスの体型の者はスカートの前後中心線が体型大の方向に傾くのでスカート幅の設定については,左右差をつけなければならないであろう.5.腰部各位置の前対後厚径の比率(ウエスト廻り線を基点)腰部各位置の前対後厚径の比率,つまりウエスト廻り線から前後への出張り分量の比率について検討したが,ウエスト(W)〜腸骨棘1/2位置では後厚径より前厚径が大の傾向がみられた.これは腹部に近い位置にあるからで,他の位置ではいずれも前厚径より後厚径が大の傾向がみられた.これはでん部の出張りを意味するものである.以上の結果から言えることは,スカート製作においでダーツの分量は前よりも後を多くするべきだと考える.6.腰部各位置の左対右厚径の比率(ウエスト廻り線を基点) 腰部各位置の左対右幅径の比率,つまりウエスト廻り線から左右両側面への出張り分量の比率について検討したがヒップの位置ではわずかながら右幅径が大の傾向がみられ,最大の位置では左右同径の傾向がみられた.このことは脇ダーツの左右の分量の設定においてほとんどの者は同じ分量でよいが,アンバランスの体型の者は,左右差をつけるべきであると考える.以上女子の腰部の体型は種々様々であり,同一体型は本被験者の中には全くなく,被服製作における困難な事実を裏付けるものであることが明らかになった.終りに本実験に御協力下さった本学服飾コースの学生に厚く感謝する.
著者
山路 澄子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.165-174, 1974-03-15