著者
柏瀬 愛子 小西 由利子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 人文・社会編 (ISSN:09152261)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.125-132, 1994-03-05

子どもたちの表現活動を「豊かにさせたい」と願うならば,当然,人的環境である指導者自身の表現力が問われることになる。内面的,主観的なもの(自己の心に描かれた思い)を何等かの手段に託して表出するということは,演技力もさることながら,自己がもつ感性とイメージする力に支配される。従って,教員養成校の学生にとって大切なことは,あらゆる場合,臨機応変で,しかも素直な直観的行動(イメージする力)が取れることであろう。イメージの育て方は,絵画をはじめ多岐に渡るが,今回は子どもの生活と切り離すことのできない音楽活動(調性嗜好)を取り上げ調査してみた。イメージの育成に関しては,技術の優劣より直観的発見とそれを如何に表現するかの力量に掛かって来る。今回の「調べ」についての調査は,一応,最低線の楽典が理解されている学生がもつ,内的感情を素直に表現させる素地を作ろうと試みたものである。2大学の学生で領域「表現」の授業を取っている者168名を調査対象とし,指導者の移調演奏するアメリカ民謡「メリーさんのひつじ」を聴き,好みの調性をえらばせることを手始めに,既成の詞にメロデーを付けたり,既成曲に合う作詩をさせたりしたものから,学生の好む調性を知ろうとしたものである。我々は,今回の調査結果で学生に不足している諸々を発見した。今後の授業方針として,この結果を踏まえ,調性の理解が深められる内容を盛り込んでいきたいと考える。
著者
岩田 浩子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では育児行動に着目し,生活行動としての意義と行動特性を明らかにすることを目的に,(1)「おんぶ」と「抱っこ」の現代における意義,および,(2)その行動様式の特徴と作業負担についての分析を試みた。結果を要約すると以下のとおりである:(1)人間の様々な行動様式の中で,労働と育児を同時に担えるおんぶは「運搬法」として抱っこよりも大きな役割を果たしてきたと考えられる。しかし,最近ではおんぶや抱っこは乳児運搬法としてよりも親と子が密接にふれあう方法としての意義が強まっていると考えられる。(2)野外観察によれば,とくに余暇活動時には父親が運搬具なしで背負ったり,片腕だけで抱く事例が数多く観察された。運搬具なしのおんぶや片腕だけの抱っこは子どもが姿勢保持できることと覚醒時に限られ,それ以外は運搬具を用いるか,抱っこにも両腕を用いる必要がある。(3)両腕を用いる抱っこの場合,親子の向き合い方は対面型が最も多く,側面型も約38%あった。子どもを抱く位置は親の胸の中央が最も多く(44%),次いで右側(35%),左側(21%)の順だった。また,親子の向き合い方と抱く位置とは関係なしとはいえないことが分かった。(4)女子大学生を被験者とし,ダミーを用いた抱っこの実験室的観察において,被験者の抱き方は野外観察の親子に見る乳児の抱き方とほぼ同じだった。抱っこの姿勢は通常の直立姿勢よりも全身はやや後傾し,頭部前屈が強まる傾向にあるが,腰部背屈角度には大きい違いはない。(5)ダミー(66cm,7.5kg)を3分間抱いて立つ課題実験において,ダミーを揺さぶる動作や背中や腰部を軽く叩く動作が観察された。時間経過にともなって,踏みかえ動作が現れる被験者もあった。また,抱き続ける間,比較的動きの少なかった被験者にも前脛骨筋と腓腹筋の筋電区には左右相反的で持続的放電が見られ,下肢部にかなり負担がかかっていることが分かった。
著者
佐々木 真吾
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編, 人文・社会編 = Journal of Nagoya women's University (ISSN:21857962)
巻号頁・発行日
no.67, pp.35-43, 2021-03-10

子どもの行動に良い面と悪い面が存在するなど、子育ての場面では子どもを褒めるか叱るか曖昧な状況が数多く存在する。本研究では、褒めるか叱るか曖昧な状況での親の養育態度がレジリエンスと保育観の発達に及ぼす影響を検討した。大学生を対象に、子ども期の曖昧な状況での親の対応を、どの程度褒められたか、叱られたかという観点から回想してもらい、レジリエンス尺度および保育観尺度との関連を調査した。その結果、レジリエンスの合計点は、褒められることが多く叱られることが少ないと回答した者で、褒められることが少なく叱られることが多いと回答した者よりも高かった。同様に、レジリエンスの下位尺度である内面共有性、内省性の得点も、褒められることが多く叱られることが少ない者で高かった。また、子どもと対等に関わることを重視する協調的保育観は、褒められることが多く叱られることが少ない者で、褒められることが少なく叱られることが多い者よりも高かった。以上の結果から、褒めるか叱るか曖昧な状況では、子どものポジティブな側面を見いだして褒めることが、レジリエンスや保育観といった情緒・社会性の発達を促進することが示唆された。
著者
遠山 佳治
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編, 人文・社会編 = Journal of Nagoya women's University (ISSN:21857962)
巻号頁・発行日
no.67, pp.193-204, 2021-03-10

東海地域の食文化の考察について、今回は魚介食文化からみた視点で検討を加えるものとする。東海地域の魚介食文化を歴史的にみると、東海地域の漁業・水産業に影響されている。また、モノづくり産業が盛んな地域であるため、鰻・鮎・貝などの養殖業、海苔・練り物などの食品加工業が特徴である。それを支えてきたのが、木曽三川が注ぐ伊勢湾・三河湾の内湾と外海を持つ多様な自然環境と、都市名古屋を包括する社会的環境といえる。
著者
川上 輝昭
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編, 人文・社会編 = Journal of Nagoya women's University (ISSN:21857962)
巻号頁・発行日
no.67, pp.45-57, 2021-03-10

本稿の課題は、障害者を対象とした生活介護支援施設(以下、支援施設)の現状と課題について若干の考察を試みることである。障害があるために一般就労が困難な人たちを対象に、生活介護支援施設が設けられている。支援の内容は食事、排せつ、軽作業等を主とした日中活動である。この施設を利用者している人たちは、それぞれ障害の種類も程度も異なっている。したがって生活を支えている支援員には障害に対する広い知識と高い専門性が求められている。しかし、慢性的な人手不足に加えて、日々、多忙で研修の時間さえ確保しにくいという現実もある。生活介護支援施設は、今後も多様な人たちの利用が想定されているだけに、個の思いに寄り添った支援のあり方やその内容が問われている。
著者
山本 忠
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編, 人文・社会編 = Journal of Nagoya women's University (ISSN:21857962)
巻号頁・発行日
no.67, pp.133-145, 2021-03-10

昭和45年告示学習指導要領の高等学校数学ⅡBにおける「平面幾何の公理的構成」は、数学教育現代化の潮流の基に作成されたものである。数学教育現代化のねらいの一つは、現代数学の考え方を初等・中等教育に導入することであった。したがって、教科書や参考書は現代数学的な公理的構成を取り入れた。その結果、当時の実践記録によれば受容困難な場合が多くあった。たとえば「わかりきったことをなぜ証明しなくてはいけないのか」、「教科書と参考書では公理が異なっているので心配」など、生徒の反応は否定的なものが多かった。そこで、教科書、参考書の公理の異同、表現の異同、多様性、合同の公理の扱い方などの項目を設定して、当時使用された教科書、参考書の記述を数量化Ⅲ類の手法で分析した。結果は各教材によるばらつきは大きいことが裏付けられた。そして各教科書は比較的類似性があったものの、教科書と参考書の距離は遠いものがあり、当時指摘されていた生徒の不安も裏付けられた。
著者
酒井 清子 石原 久代
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
no.34, pp.p53-60, 1988-03

"ワイシャツの着衣動向とワイシャツの適合度および快適な着用感を限定する要因を検討するために1.アンケート調査,2.官能検査を行った結果より, 1.ワイシャツの所持枚数は,1人当り社会人,学生とも長袖は6~10枚が多い.半袖は,長袖にくらべて少数で0~5枚である. 2.ワイシャツの襟型は,レギュラー・ポイント型が1人平均11.3枚と最も多く持っている. 3.ワイシャツの色彩は,社会人・学生とも同傾向で,白,ブルー系,グレー系の順である. 4.ワイシャツ購入時の価格は,社会人は4000~6000円が多く,学生は2000~4000円を占める割合が多い. 5.ワイシャツの材質は社会人はポリエステル・綿混紡が多いのに対して,学生は綿100%を好む. 6.ワイシャツ着用時のイメージについては,社会人では,清潔な,サラッとした,快い,軽いなどの好意的な感覚を主にあげているが,学生では,清潔な以外には,窮屈な,圧迫された,ひんやりした,肩がこるなどの非好意的な感覚を主にあげている. 7.着用官能検査判定結果では,被験者の最適サイズより1サイズ上の場合は,首回り,肩幅,胸回りなどの部位は,それほど不快感はないが,袖丈が長く感じられる程度である.逆に1サイズ下の場合は袖丈以外の部位の方がかなり不快感がある."
著者
南川 幸
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 = Journal of the Nagoya Women's College (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
no.11, pp.63-67, 1965-03-20

"食用担子菌類のfungiのisolationおよびPure cultureの研究の一部として今回はTricholoma matsutake, T.flavovirens, T. aggregatum, Lactarius hatsudake, Balelopsis leucomelas, Sarcodon asperatusなどを試料にfruit bodyからの菌の分離に関して行なった実験結果について報告した.1)一般に培地面に移植したのち,8時間ほどで多くの菌糸が発生をはじめ,6日後には淡白色を呈する菌糸そうが構成される.2)fruit bodyの菌傘部,菌柄部,ひだ部の三部位よりの移植においてはひだ部が最も良好な結果が得られることが明らかになった."
著者
山田 久美子 近藤 貴子 飯沼 光生
出版者
名古屋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

子宮内環境は胎児の発達だけでなく、出生後の子の健康障害発症の素因を胎児期に形成し、出生後の健康障害発症に影響を及ぼすことが示唆されている。妊娠期の腸内細菌叢は子へと伝えられ、離乳期には最初の細菌叢が完成すると考えられる。また、咀嚼運動のストレス緩和効果も解明されつつある。本研究では、摂食を開始する離乳期について、ストレス暴露とストレス下で棒を噛ませる咀嚼運動をさせた妊娠マウスから出生した仔マウスについて、肥満やストレスとの関連が示唆されている腸内細菌叢、間葉系幹細胞の脂肪への分化能および肥満関連因子の定量などを行うことにより、ストレスと肥満発症の素因形成および咀嚼運動の影響について検討する。
著者
山本 忠
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編, 人文・社会編 (ISSN:21857962)
巻号頁・発行日
no.67, pp.133-145, 2021-03

昭和45年告示学習指導要領の高等学校数学ⅡBにおける「平面幾何の公理的構成」は、数学教育現代化の潮流の基に作成されたものである。数学教育現代化のねらいの一つは、現代数学の考え方を初等・中等教育に導入することであった。したがって、教科書や参考書は現代数学的な公理的構成を取り入れた。その結果、当時の実践記録によれば受容困難な場合が多くあった。たとえば「わかりきったことをなぜ証明しなくてはいけないのか」、「教科書と参考書では公理が異なっているので心配」など、生徒の反応は否定的なものが多かった。そこで、教科書、参考書の公理の異同、表現の異同、多様性、合同の公理の扱い方などの項目を設定して、当時使用された教科書、参考書の記述を数量化Ⅲ類の手法で分析した。結果は各教材によるばらつきは大きいことが裏付けられた。そして各教科書は比較的類似性があったものの、教科書と参考書の距離は遠いものがあり、当時指摘されていた生徒の不安も裏付けられた。