- 著者
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松川 克彦
- 出版者
- 奈良大学史学会
- 雑誌
- 奈良史学 (ISSN:02894874)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, pp.79-83, 1984-12
本書の著者ヘルヴァルトは、一九三一年から第二次大戦の勃発する一九三九年までの八年間、主としてソヴェト・ロシア駐在のドイッ大使館に勤務。ディルクセン(Dirksen,H. von)、ナドルニ(Nadolny, R.)、シューレンブルグ(Schulenburg, F. von)という歴代の大使の下で書記官を勤め、次第に緊張を増していくヨーロッパの外交的中心となったモスクワにあって、劇的な展開をとげる独ソ関係の推移を身をもって体験した。しかし、開戦前の八月末には外務省をはなれて軍籍にはいり、一九四一年六月、独ソ戦開始後はケストリンク(Kostring, E.)将軍の副官として東部戦線に従軍したという経歴の持ち主である。第一章では生い立ち。第二章、外務省勤務。第三章モスクワ派遣等々、第二十三章終戦に至るまでの回想が記されている。一定のテーマに関する書物ではないので、以下では一九三九年春以後夏までの独ソ不可侵条約交渉について紹介したい。