著者
青木 克仁 Katsuhito Aoki
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.46, pp.1-10, 2018-02-20

プラトンは、利己主義的な個人を道徳に従わせるにはどうしたらいいのか、という問いに答えを見出そうとした。プラトンにとって、民主制に対応する人間類型は、「必要な欲望」と「不要な欲望」という区別がなくなった人間なのである。つまり、自由・平等を謳う民主制には、本来は「不要な欲望」にカテゴライズされるべき欲望を追求する利己主義的個人が跋扈することになるという、プラトンが最も忌み嫌う脆弱性が存在している。こうしたプラトンの目から見れば、堕落した政体である民主制には、人間類型としての利己主義という問題が浮き上がってくる。彼の主著とされる『国家』では、まさに、この「利己主義」の問題が取り扱われている。本論考において、利己主義に対するプラトン的処方箋とはどのようなものだったのか、という問いを扱うが、その処方箋が現代社会においては、うまく機能しなくなっていることを示す。
著者
吉田 裕久 Hirohisa Yoshida
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大學紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.47, pp.181-191, 2019

『まことさんはなこさん』・『いなかのいちにち』・『いさむさんのうち』(1949年、写真1)は、戦後初期における入門期国語教科書として編纂された。GHQ/CIE係官として着任したヤイディ(Jeidy)及びストリックランド(Strickland)は、その中身(内容・表現)について厳しく検閲した。内容としては連続性のある読み物(ストーリーメソッド)に、また表現については語彙の提出を少数にすることを求めた。文部省は、これらの指示に基づいて、入門期国語教科書を大改訂した。こうしてできあがった3冊の入門期国語教科書の編纂方法は、これに続く検定国語教科書の編纂方法に大きな影響を与えた。これら入門期国語教科書の編纂は、母語学習の国語教科書編纂に外国の検閲(指導)を受けたという点で、国語教科書史上まさに画期的なできごとであった。
著者
西原 明史 Akifumi Nishihara
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大學紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.46, pp.19-29, 2018

日本は「老舗大国」である。その理由としてよく持ち出されるのが、日本人の勤勉さや倫理感といった「国民性」だ。しかし、こうした根拠の薄い概念による説明は説得力に欠ける上、近年のメディアで目立つ日本賛美の論調とも恐らく共振している。そんな従来の老舗論への違和感から、本研究では比較社会文化史という方法で老舗存続の背景を考察することとした。老舗の多くは明治時代に端を発する。そこで、いずれも経済発展を遂げた中国の宋王朝、江戸時代及び明治以降の日本の三つの政治経済システムを整理し、そこから老舗の社会的条件を定式化することができた。それは、経済活動への自由参加が可能であること、そして規制と保護の機能を兼ね備えた中間組織が存在することの二つである。さらに、江戸時代の社会構造の下で形成され、その後も継承された「勤勉と信用」といったエートスが加わることで、明治以降に多くの老舗が生み出されたのではないだろうか。
著者
平本 哲嗣 Satoshi Hiramoto
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.47, pp.119-128, 2019-02-28

2017年3月に告示された新しい小学校学習指導要領では中学年で「外国語活動」、高学年で「外国語」が設定されることとなった。現在のような状態に至るまでには長い経緯があるが、戦後の政策動向において、特に注目すべきは1986年の臨教審第二次答申といえよう。本論では、この答申にいたるまでの1960年代から1970年代に的を絞り、当時の英語教育関連の雑誌や新聞記事から、関係者の活動や言説に関する情報を得ることを目的とする。特に本論では英語教師だけではなく、英語教育に対して発言力のある団体(海外の視察団や財界)の言説も扱うことで、英語教育政策過程におけるアクター群の役割を明らかにするとともに、早期英語教育に関する言説が時代とともにどのように変化したのかを議論する。なお、本論では小学校英語教育に加え、就学前教育における英語教育も扱うため、「早期英語教育」を主たる表記として用いる。
著者
永田 彰子 Akiko Nagata
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.47, pp.21-30, 2019-02-28

人生における苦悩に直面した際の自己のとらえ直しのあり方について、本稿ではジェネラティヴィティの社会化を手がかりに考察した。すなわち成人期には苦悩を通して、限りある身としての自己が喚起されることが多くあり、そのような状況ではそれまでの自己では立ち行かず、新たに自己をとらえ直し、組み直すという再体制化の課題が繰り返し生じることをこれまでの研究を概観することによって指摘した。自己をとらえ直す際には、自分自身の人生においてそれを意味あることと捉えられるか否かという意味づけが重要になってくるということ、さらにその意味づけには、「特定の閉じられた帰属集団」から「普遍化」という社会化への一定の発達的方向性があるということを概観した。
著者
川岸 克己
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-9, 2014-02-28