著者
藤田 博
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.131-145, 2006

One of the main themes of Shakespeare's Antony and Cleopatra is a conflict between Rome and Egypt, a clash of sense of value between the Romans and the Egyptians. In order to hold one's own value, they fight against the other. When Antony dies and Cleopatra commits suicide, the play ends with the triumph of Rome. Does this, however, simply mean that the Roman wins and that everything Egyptian has been swallowed up by the things Roman? The play seems to indicate something more tangled: the boundary between the two is blurred, and the play is filled with a sense of uncertainty, of indecisiveness. It is rather in this ambiguity that the play has its meaning. Upon both Antony and Cleopatra, contrastive judgements are given according to from which standpoints they are to be judged. They can be either from the Romans or the Egyptians, or as a historical play or a romance. After Antony's death, Cleopatra, being forced to choose either committing suicide or yielding to Caesar to live further on, takes the former way. In this respect, though the Egyptian tribalism is defeated by the Roman patriarchy, Cleopatra is to win the game with Caesar. Her death makes Cleopatra overwhelm Caesar and subvert him as a winner. Not only Antony but also Cleopatra reaches the point where neither the winner nor the loser can be defined any more. The play represents a world in which nothing can be measured by the general sense. It ends with itself suspended in the air. The scene in which Antony's dying body is hung by a rope from the balcony by Cleopatra and her maids, therefore, represents the play most. This is the symbolic scene that embodies the conflicts of both sides and the sense of indecisiveness throughout the play.
著者
千葉 芳明 本田 亮
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

スライドプロジェクター、太陽電池と偏光板を用いて光が横波として伝わる実験教材を開発した。 また、多目的教育用分光器を用いて豆電球の発光スペクトルから、プランクの法則やウィーンの変位則を追究する学生実験を開発した。さらに、小型電磁石を用いたファラデー回転の観測から磁気と光の相互作用を理解するための教材を開発した。
著者
田端 健人
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.199-206, 2010

ハイデガー(Heidegger, M.)の思索に、教育哲学あるいは教育論はあるのだろうか。本稿は、ハイデガーが教育を語った重要な箇所、プラトン『国家』「洞窟の比喩」解釈に着目し、パイデイア(παιδεια =教育)に関するハイデガーの思索を再構成する。プラトン『国家』における「パイデイア」というギリシア語は、一般的に、「Bildung(陶冶、教養、人間形成)」とか、「Erziehung(教育)」とドイツ語訳されるが、ハイデガーは、こうした翻訳を、19世紀の「心理学主義」の産物として厳しく批判する。19世紀前半に活躍したヘルバルト(Herbart, J. F.)も、ハイデガーによれば、心理学主義を創始推進した人物である。本稿ではまず、ハイデガーのこうした心理学主義批判とその克服を考察する。そして、プラトンのいうパイデイアは、ハイデガーにとって、「現存在(Dasein)」や「世界内存在(In-der-Welt-sein)」といった概念と同様、人間存在の新たな規定様式だったことを指摘する。次に本稿では、プラトンのパイデイアに関するハイデガー独自の翻訳に着目し、この翻訳に凝縮されたハイデガーのパイデイア論を、1928/29年冬学期の「哲学入門」講義をもとに解釈する。こうした解釈を通して、ハイデガーのパイデイア論は、私たちが慣れ親しんでいる教育活動を改めて捉え直すための、一つの「教育哲学」になりうることを示したい。
著者
小金澤 孝昭 奥塚 恵美
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-10, 2008
被引用文献数
1

本研究では、非農家が農業に参入する上でどのような課題があるのか、それらの課題を解決し、地域に定着していくためには何が必要なのかを明らかにし、その条件を整理していきたい。その際、特に受け入れ地域の住民の対応と新規参入者の農業のかかわりについて注目していく。調査地域は、新規参入者が多くみられる宮城県丸森町を事例として取りあげた。丸森町における新規参入者の定着過程には、大きく3つの段階がみられた。初期の段階は、新規参入者が地域住民の協力のみで参入する段階。次に、先行参入者が新規参入者と地域との橋渡しとなって参入する段階。最後に、新規参入者が町行政の受け入れ体制を利用し、参入する段階である。丸森町では地域住民、先行参入者、町行政と相互のネットワークが徐々に築かれ、次の者が参入しやすい環境を作り出してきた。現在は、新規参入者による見学ツアーなど、積極的な受け入れも行われてきている。このようなことから、新規参入者の地域定着条件とは、個々人の問題ではなく、地域住民、参入者、行政など、地域全体のつながりによってつくられていくものだといえる。
著者
佐々木 ゆり
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究においては、これまで実践が先行しがちであった小学校英語活動について、実践の基盤となる理論と併せて、コミュニケーション中心の英語活動を実現するための教員養成のプロセスを考察した。「コミュニケーション能力」については、必要性と目的を伴った相互作用の中で言語を使用するということが、また「子どもの(言語)学習過程」については、子どもが(1)自分がおかれた環境と関わる方法を自ら活発に探り、(2)環境との相互作用の中で状況を把握し、(3)自分の学習可能領域の範疇にある事柄を学び、その学びは(4)環境の中で利用できる手助けによって支援・促進されるという特徴が文献の分析から浮かび上がった。つまり、小学校英語活動はコミュニケーション中心という英語教育の構造的改革と、その実践のための教員の役割の再定義との双方を同時に進めていかなければならない状況にある。そのためには、英語活動の内容に関しては(特に導入期において)学習者に潤沢な音声インプットを与え、学習者が目標言語を使用する機会をできるだけ増やし、言語使用が自然に起こるような場面設定が必要となり、英語活動を担う次世代の小学校教員にはこれらのことを実現するための実践的なトレーニングが必要となる。本研究ではカリキュラム作成にプロジェクト形式を採用し、プロジェクト中の小テーマをそれぞれ3段階(歌やチャンツでの導入、小グループでの練習、アクティビティやゲームなどによる強化)で構成し、また指導には学生をアシスタントとして参加させた。これにより、学習者にとっては必要性と目的をもった学習場面を、また学生には新しい構造の英語教育を体験的なトレーニングの形で提供することができた。
著者
菅原 敏
出版者
宮城教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

16年度には、前年度に完成した測定装置を用いて水素濃度の広域分布を明らかにするための観測を拡充した。さらに、標準ガスの整備や、極域雪氷中のフィルン空気などの解析を同時に進め、以下の項目が明らかとなった。★高精度分析の結果、これまでに用いてきた一次標準ガスが、長期的に濃度変化する現象が確認された。このため、比較的濃度が安定する体積の大きなシリンダーを用いて製造された作業用標準ガスを基準にして、一次標準ガスの濃度変動を推定しすると同時に、今後新たなシリンダー内面処理を施した標準ガス製造方法が必要であることがわかった。★航空機や船舶を用いた全球的な定期観測を継続し、観測領域を拡充した。その結果、水素濃度の季節変動や緯度方向の南北勾配などが見られた。また、北極や南極などでの空気採集を行っている国立極地研究所、東北大学と協力し、その試料空気を分析した結果、さらに広域的な緯度帯での分布が明らかになった。★南極や北極の極域表層のフィルン層で採取された過去の空気を分析した結果、金属容器内面における長期間にわたるサンプル空気の変質の影響のために、正しい過去の水素濃度の変遷の推定が難しいことが判明した。このため、フィルン空気のサンプリングをガラス容器で実施することや、サンプリングサイトにおいてフィルン空気の吸引中にリアルタイムで測定するなどの改善が必要であることがわかった。
著者
千葉 芳明 本田 亮 神田 展行 永田 英治
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

われわれ身の回りには光に関する現象が数多くある。しかし、初等、中等教育の現場でその理論的背景を説明するには工夫が必要である。本研究では、偏光現象を用いた着色現象に注目して光と物質の相互作用に関する教材を創案し、光や色についての本質を学ぶプログラムを提案した。主な研究内容を記す。1.偏光現象から始める光と物質の相互作用教材の研究偏光板の間に高分子のシートを挟むと色が現れる。つぎに、偏光子、または偏光子を回転すると色が変わる。、2枚の偏光板の偏光軸が平行の場合の透過光の色と、垂直な場合に現れる色は互いに補色の関係である。なぜ、このような現象が現れるか、容易に説明できる実験教材を開発研究を行った。具体的には、偏光によって、互いに補色の関係にある2つの色が現れることに着目し、偏光の状態によって光が吸収されることを追究する学習教材の検討を行った。この関係をわかりやすく説明するために実験教材と学習方法について研究した。2.偏光による着色現象の本質を理解するためには、物質中で光の位相速度が変わる(屈折の法則)の理解を深める必要がある。その屈折の法則を演示す教材を創案した。本装置を用いると、入射角を変えたとき、屈折角がどのように変わるか、視覚的に理解できる。さらに、屈折の法則で保存される量は何かを考察することができる。3.光と磁気の相互作用を理解する学習教材の開発大学におけるファラデー効果の実験教材を開発した。試料となるガラス素材には、市販されいるガラス素材のなかで、ベルデ定数がもっとも大きいTb高濃度ガラスを用いた。ガラス素材の長さを大きく(8cm)とすることで大きな回転角が得られ、磁場によって、光の偏光面が回転する様子を確認できた。次に、ファラデー回転の回転角度の大きさが、光の振動数に依存することに着目する。光源に白色光源を用いると透過光のスペクトルを変えることができる。磁場によって物質の色が変わるので、磁場と光の相互作用のデモ実験として有効である。4.電磁波教材に発展させるためのに、磁石とリニアーモーターを理解させるための学習プログラムのついての研究をおこなった。
著者
永田 英治
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,1880年代に初等・中等学校での科学教育が開始された時,ニュートン科学とその粒子論的な物質観の教育がおこなわれたことを,実験教材の追跡をとおして明らかにした。当時使用された,英国,米国の教科書の多くが,それらの科学をとりあげていたからだけではなかったのである。また,明治初期に,そのような科学の教育が実現できた背景には,江戸時代末期に移入された科学があったとこを明らかにした。つまり,オランダ経由で,移入された物理科学は,ニュートンの力学と同時に,ニュートンの粒子論的な物質観(『光学』第二版,1717)にもとづく実験をふくむものだったことである。つまり,ス.グラーフェザンデや,P.v.ミュッセンブルックらの科学書が,J.T.デザギュリエを筆頭とする18世紀ニュートニアンになる科学と同じ内容をもっていたのである。そのことを,力学実験,凝集力実験などについて追跡した。この研究では,同時に,J.T.デザギュリエによる科学の公開講座が,ヨーロッパ,ことにオランダに波及していった歴史を追跡する必要があった。その調査によって,ヨーロッパに広がった科学啓蒙活動では,ニュートン力学,ニュートンの粒子論だけでなく,火力,蒸気機関や気球の可能性を追求する活動と無縁ではなかったことが明らかになった。そのことが,日本の科学教育の思想にあたえた影響は無視できないが,それが,教材にまであたえた具体的な影響については,今後の研究課題として残すことになった。その成果は,国際科学機器シンポジウムでの発表'The Reception of Newtonian Corpuscularism in Japan -A case study of Experiments on Cohesion of Matter -.','The Introduction and diffusion of Atwood's machine in Japan',および『理科教室』誌上での連載「たのしい科学を切り開いた科学者たち」として報告したが,最終的に『たのしい科学の講座を開いた科学者たち』(星の環会,2004)にまとめることができた。
著者
岡 正明 大山 優美子 小川 貴史
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.201-208, 2005

エダマメは,小中学校における栽培学習の教材として多く用いられているが,収穫適期が夏休み中になり,生徒に収穫を体験させられないという失敗が多い.本実験では,エダマメ6品種を用いた2年間12回の栽培実験を行い,播種日から収穫適期までの日数と,その期間の気温との関係を解析した.その結果,早生・中生品種について,気温データのみを用いる有効積算温度法により収穫適期の予測が可能であることが示された.また,平年並み気温の年であれば,年度を越えて適用できる計算法の可能性が示唆された.エダマメをマルチビニール無しの畝に直播きする圃場において,収穫適期を夏休み期間から外すためには,宮城県では6月中旬播種・夏休み後収穫の栽培時期が望ましいと考えられた.
著者
萬 伸介 森岡 正臣 田端 輝彦 森岡 正臣 田端 輝彦 西城 祐子 山尾 健一 小畑 達哉
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

林鶴一の算術・数学関係の教科書の蔵書のデータベース化の結果は冊子「資料『林文庫邦書目録原稿』(修正版)」としてまとめた。この冊子とそのリストにある蔵書(1065点)は宮城教育大学附属図書館で管理されることになった。公開に向けて作業中である。教材開発については、附属学校教諭と協力し複数の試案を作ることができている。授業実践も一回であるが実施することができた。