著者
高野 牧子 堀井 啓幸
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

身体表現による幼小連携カリキュラム構築の基礎資料を得ることを目的に、日本、イギリス、キューバでインタビュー及び実態調査を行った。その結果特にイギリスでは、(1)小学校開始を低年齢化した「レセプションクラス」の遊び中心から徐々に学習へとつなぐ「なだらかな」接続、(2)接続期の人的支援体制、(3)信頼関係に基づいたダンス教育のおける専門家の活用の実態を明らかにした。このような幼児期から小学校への教育内容の連続性は、現在の日本では未着手であり、今後「幼小連携」のカリキュラム構築にむけて、貴重な資料となったと研究成果を評価する。
著者
千森 幹子 DAME Gillan beer CLIVE Scott
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、ポストコロニアル的観点から、19世紀から20世紀イギリスで出版された文学挿絵における、日本、中国、中東にいたるオリエント表象の分化と変遷を、政治(帝国主義と植民地主義政策)社会(オリエント諸国への西洋観)および、文化(ジャポニズムに代表される美術様式や万博などにみられる西洋の東洋文化理解)を通じて検証する学際研究である。
著者
神山 裕美
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学人間福祉学部紀要 (ISSN:18806775)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-10, 2006

ストレングス視点は、論理実証主義から社会構成主義へのメタ理論の転換を背景に、医療モデルのアンチテーゼとして展開した。ストレングス視点は、ジェネラリスト・ソーシャルワークを形成する主要な枠組みであり、その特徴は、利用者のストレングスを見出し、個人から環境への交互作用をふまえ介入することにある。ICF(国際生活機能分類)とストレングス視点は、利用者の個人因子と環境因子からその長所を見出し開発することに共通点がある。そして、ジェネラリスト・ソーシャルワークによる実践は、ICFの理念を実現するひとつの方法となる。ストレングス視点によるジェネラリスト・ソーシャルワークは、障害とストレングスをアセスメントする視点を提供し、個人・集団・組織・地域の交互作用をふまえ介入する。ストレングス視点は、地域生活を支援する重要な概念となる。
著者
高野 牧子
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学人間福祉学部紀要 (ISSN:18806775)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.65-72, 2006-03-15

イギリスでは従来から、幼児期の身体表現はクリエイティブ・ムーブメント(Creative Movement)として創造性重視の活動が行われ、舞踊教育の基盤となっている。そこでイギリスにおいて、主に2歳の幼児とその保護者を対象としたクリエイティブ・ムーブメントの親子教室3ヶ所を観察調査し、その特徴を明らかにした。その結果、1回の活動内容が豊富で、展開が早く、静動の緩急をっけ、子どもたちが飽きないように工夫されていた。活動最後には子どもたちを寝かしつけてクールダウンし、心拍数を下げ、心身ともに興奮状態を覚ましてから終結する配慮があり、子どもたちに対して大変有効であった。また伸縮性のある布やフープ、マラカス、ボール、パラバルーン、トンネルなど多様な教材を用いて、偏ることなく様々な運動能力の発達を促していた。さらに、子ども向けの童謡だけでなく、様々な音楽、特に民族音楽なども積極的に利用し、幼児期から音楽を通して異文化に触れ、理解しあえる工夫がされていた。活動は指導者も含め、参加者全員が円になって始め、時間と経験を共有しながら互いに学び合い、それぞれのアイディアで自由に遊び、表現する創造性重視の主体的活動が実践されていた。親子が指導者から一方的に習うだけではなく、参加者が相互に刺激しあい、親子で共に何かを創り出す双方向型講座は、今後の日本の親子講座に対して大変示唆に富むものである。
著者
戸田 徹子
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

米国プロテスタント日本伝道に関する事例研究として、キリスト友会フィラデルフィア年会ミッション・ボードの戦間期における日本伝道の方針と活動を検証した。太平洋戦争下における日系人強制収容への抗議活動についてボードの書簡資料を紹介する論文と、同ボードと協力関係にあった米国フレンズ奉仕団の日本との関係-関東大震災時の救援活動、排日移民法と日本人留学生基金、太平洋戦争下での日系人支援活動-を概観し、従来ミッション・ボードが担ってきた活動の一部が国際NGOである米国フレンズ奉仕団の手に移行しつつあったことを指摘する論文を作成した。
著者
堤 マサエ
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は直系制家族に焦点をあて、どのように世代継承と世代間相互扶助が行われ、バランスを保っているかを明らかにすることであった。ここでは、直系制家族の世代継承はどのようであるか、子育てや老人介護はお互いに世代間で支えあい、衡平性を保っていると言えるのか、を探ってきた。その結果、(1)世代継承に関しては、少子化のため、若い世代ほど長男が跡を継いでいることが明らかになった。「家」を継承するのは長男と決まっていた時代から誰でも可能な時代になったにもかかわらず、長男である重みが現実にはある。また、土地の相続は制度的には均分であるが、一括相続がほとんどであった。このような状況のなかで、地域社会では集団営農、農業の起業化が進められてきている。家族、世帯の持続を地域全体で継承するという方向である。(2)相互扶助関係について、親は子どもが学校へ行き、結婚、独立していく過程において、どのような援助をしているか、を調査した。その結果、男女、きょうだい数に関係なく、親は子どもへの必要な援助を行っている。子どもはどの程度の経済力が親にあるかをわきまえ、援助を得ている。親は誰が老後の面倒をみてくれるかを見極めながら、援助の度合いを調整している。子どもも自分の人生の歩みと親からの援助とがどの程度マッチするかの折り合いをつけ、親子関係の調整を図っている。親子の相互扶助により、親子で衡平性を保っている。それは親の最期の看取りの時期においても同様な世代間相互扶助関係が保たれている。(3)直系制家族は相互扶助を実現しやすい家族形態であるが、住まい方に大きく規定される。屋敷内別棟同居よりも上下階別同居の方が介護は可能である。家族内での世代間の経済援助はお互いに年金、給料を出し合い、助け合う姿があった。世代間衡平性は生活構造的に長期的な見通しの検討が必要であることが示された。
著者
堤 マサエ 大友 由紀子
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

親がどのように子どもの離家・独立・職業選択・結婚の援助をしているか、子どもはどのように認識しているかの実態を明らかにし、世代比較と国際比較の視点から分析した。その結果、若い世代ほど高学歴化し、親の子育て・教育費負担は重い。結婚が一人前の条件ではなくなり、人生における独立することの意味が変化してきた。農村家族は比較的安定した暮らしであるが、若者調査から就職難、親の生活困窮、祖父母の年金で孫の学費を援助するなど世代を超えた援助、奨学金で親子が暮す貧困の実態が新たな問題として出てきた。国際比較から、国際社会の動きに対応し、日本家族の文化や伝統を配慮した子育てとその支援の在り方の重要性が指摘できた。
著者
斎藤 直樹
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨国際研究 : 山梨県立大学国際政策学部紀要 (ISSN:18806767)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-22, 2008

This article attempts to examine problems involved in the eroding Six Party Talks aimed at dismantling nuclear weapons of North Korea.
著者
高野 牧子
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学人間福祉学部紀要 (ISSN:18806775)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.21-29, 2009-03-06

言葉によるコミュニケーションが未発達な幼児期に、子どもとコミュニケーションがうまくとれず、悩む母親が多い。母親は子どものノンバーバルな表現からもその欲求や思いを理解していくことが必要である。本研究は母親が子どもの発する日常のノンバーバルな表現をどのように理解しているのか明らかにすることを研究目的とした。母親92名へアンケート調査を実施し、子どもの欲求場面である「空腹」「睡眠」「排尿」「排便」「遊び」において、子どもがどのように訴えるか具体的に尋ねた。はじめに月齢による身体表現と言葉によるコミュニケーションの発達の諸相をつかみ、次に母親の全記述554件を動きの分析に優れたラバン理論の視点を援用した5つのカテゴリー「身体部位」「動作」「ダイナミクス」「空間性」「関係」に「言葉」「特になし」を加えて7カテゴリーに分類し、欲求場面での母親が理解する子どもの表現の特徴や傾向を検討した。その結果、動きによる表現を経て言葉での表現への発達には3つのパターンがあり、「空腹」「遊び」は急速に言葉による表現へ発達していくのに対し、「睡眠」は言葉への発達が鈍く、「排便」「排尿」は遅れるという発達の順序性が見られた。また各欲求場面に応じて子どもの表現に一定の傾向や特徴が認められた。「空腹」では象徴的身振りや実際に食べ物のある「空間」への移動、「睡眠」では「目をこする」「寝る」「暴れる」などが特徴であった。「排尿」は言葉による訴えを主とし、動きからの感じ取りが少ない傾向であった。「排便」は「隠れる」ことが特徴であり、「遊び」は直示的身振りの他、「手を引っぱる」「物を持ってくる」など、直接母親への身体接触を伴って訴えてくることが多い。つまり、子どもが該当の「身体部位」に触れる、特徴的な「動作」をする、欲求するものがある「空間」へ移動する、「関係」を求めることは、母親にとって、とても理解しやすい子どものノンバーバルな表現であった。一方、動きの時間性や力性から生まれる表現的な質「ダイナミクス」に関する記述は非常に少なく、子どもの動きの様子から感じ取ることがあまり行われていないのではないかと推測された。
著者
平野 和彦
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨国際研究 : 山梨県立大学国際政策学部紀要 (ISSN:18806767)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.77-88, 2006-03-15

This research attempts the analysis of the main factor that the novel by MURAKAMI Haruki is welcomed in various regions in the world and the translation introduction is done. Compared sentences are chosen with the translation version by three translators from among an original text, for comparisons of the expressions of a progress aspect, a continuation aspect, and a possible aspect, etc. How the Murakami world took root in various regions was investigated by three translators.
著者
二戸 麻砂彦
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨国際研究 (ISSN:18806767)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-21, 2008

Japanese Dictionaries in Heian period has been inflected by Chinese Dictionaries. These are divided into three classes, Bushu (部首: parts of Kanji), Igi (意義: meanings of Kanji) and Jion (^pUf : readings of of Kanji) from the point of view about there search systems. These search systems were not fit for Japanese Language. And so, Dictionaries by the use of Iroha (イロハ) search system were composed in late Heian period. "Irohajiruisyo" is one of them. This study analyzes Phonetic Glosses (同音字注) in "Irohajiruisyo" edited by two volumes.