著者
飯野 祐樹
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.90-104, 2014-08-31

本研究は,1996年にニュージーランドで就学前統一カリキュラムとして作成されたテ・ファーリキの作成過程を作成に携わった関係者へのインタビューから明らかにすることを目的としたものである。テ・ファーリキの作成には,ヨーロッパ系民族とマオリ族の代表執筆者との協同によって作成されたことがこれまでの研究で明らかになっている。本研究では,代表執筆者に加え,ニュージーランド政府関係者へのインタビュー調査を行うことで,3方向からテ・ファーリキの作成過程を検討した。結果,テ・ファーリキの作成過程では,マオリ族側が主導し,そこにヨーロッパ系民族の価値観が内包されるというこれまでの見解とは異なる事実が明らかとなった。
著者
佐藤 智恵
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.393-403, 2013

本研究の目的は,特別な支援を必要とする,ある一名の男児の,保育所から小学校への移行について,男児,保護者,保育者・小学校教諭の3者の語りを併せて質的に分析し,就学移行期の実相を描き出すことである。方法は,半構造的なインタビューを行った。分析により,それぞれが男児について異なる見方をしていたこと,男児にとって小学校での学習環境に困難さがあったこと,保護者との関係性において保育者と小学校教諭では差異があったことが浮かび上がった。また保育者と小学校教諭では「子どもの特性に合わせる」ことについて違いがあると考えられた。
著者
大野 歩
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.150-161, 2014-12-25

本論文の目的は,生涯学習制度を構築したスウェーデンで,2011年教育改革後に導入された保育評価の特徴を検討することにある。方法としては,「教育学的ドキュメンテーション」という評価方法に焦点を当て,先行研究の検討からその特徴を分析した。また,現地調査に基づいて,就学前学校における新しい評価の導入への対応を検討した。検討の結果,「教育学的ドキュメンテーション」はスウェーデンの幼児教育学の研究を基盤に開発された独自の実践手法であり,子どもの学びと保育者の学びという2つの学びのプロセスを観察するという観点から編成されていることが明らかとなった。
著者
山田 恵美
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.263-275, 2012-12-25

幼稚園の絵本コーナー内の場所(家具配置),設定(絵本の表紙の見え方)と幼児の絵本の読み方の関係を検討した。場所と読み方の関係からは,絵本コーナーには2人が並んで絵本を広げられる大きさのテーブルと,姿勢や子ども同士の位置関係をフレキシブルに変えられるくつろげるスペースの両方が必要であることが示された。絵本を介した他児との相互作用が見られ,様々な絵本の共有の仕方に柔軟に対応できる空間を用意しておくことが重要であるといえる。設定としての表紙の見えの効果については,実際に読まれる本の多くは表紙が見えるように置かれている本であり,特にコーナーが居場所として定着していない子にとってはディスプレイに飾られた絵本があることがコーナーの利用に効果を持つことが示された。
著者
上田 敏丈
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.232-242, 2014-12-25

本研究は,初任保育者を対象にインタビュー調査を行い,初任保育者の保育行為と価値観との関係性を発生の三層モデルを手がかりに明らかにすることで,日々の保育行為が価値観に影響を与えていくプロセスを明らかにする。インタビューは,2012年6月から2013年3月まで,月1回行われた。サトミ先生は公立保育園に勤務し始めた初任保育者である。保育者の語りを質的研究法のSCATとTEMを用いて分析した。結果として,とまどい期から,試行錯誤期を経て,保育できた・できる観を獲得していくプロセスが明らかになった。
著者
上村 康子
出版者
日本保育学会
雑誌
日本保育学会大会研究論文集
巻号頁・発行日
no.44, pp.496-497, 1991-05-01