著者
赤星 まゆみ
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.218-230, 2012-12-25

1880年代からフランスの保育学校は,2〜6歳の子どもを受け入れる初等教育制度の一環にある。今日,ほとんどすべての3歳児が保育学校に通っている。また2歳児の割合は,1990年代には,ほぼ35%であったが,最近は低下し,2010年には13.6%になった。保育学校はフランスの教育制度に独自なものであるとともに,幼児期の保育サービスとしても重要な役割を果たしている。しかし,近年,2歳児の保育学校就学が,教育的にも経済的にも大きな政治的論争点になっている。本稿は,フランスにおける最近の保育学校の政策的な論議がいかなるものであるか,その本質的な問題点を,その歴史的側面と現状を踏まえて考察することを目的とする。
著者
實川 慎子 砂上 史子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.94-104, 2013-08-31

本研究の目的は,専業主婦の母親が,ママ友との人間関係をどのように捉えているのかを明らかにすることである。本研究では,専業主婦の母親9名にインタビューを行い,M-GTAを用いて分析した。その結果,母親は相手との関係を,(1)母親自身の自己における「個としての自分」と「親役割を担う自分」の違い,(2)相手との親しさの度合いの違い,(3)相手との同質感の高低によって区別していた。
著者
香曽我部 琢
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.169-179, 2010-12-25

本研究では,まず,遊びにおいて表れる幼児の"振り向き"という行為に着目し,その"振り向き"の実態を明らかにする。次に,事例をもとに"振り向き"から相互作用へと展開する過程について明らかにすることで,遊びにおける幼児の"振り向き"の意味について分析と論証を行う。その結果,"振り向き"が主に4つの要因によって引き起こされ,3歳児が一人で行う砂遊びにおいて"振り向き"が多く表れることを明らかにした。そして,3歳児の砂遊びの事例から,"振り向き"直後の注視,双方向的な"振り向き"によって幼児同士にその後の相互作用に対する暗黙的な承認が行われることを明らかにした。さらに,その後,幼児は接近することで場を共有し,暗黙的方略で交渉したり,模倣的方略を用いたりすることで相互作用へと至る過程を明らかにした。そして,遊びで表れる幼児の"振り向き"は,その空間にいる幼児や保育者と共に遊びたいという能動的な心理の欲求によって表象されていることを示し,保育者が幼児の"振り向き"を理解することは,その幼児の理解だけでなく,その場においてどの程度の仲間意識,イメージの共有が幼児間に保たれているのか確認する一つの目安になることを示唆した。