- 著者
-
香曽我部 琢
- 出版者
- 日本保育学会
- 雑誌
- 保育学研究 (ISSN:13409808)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.2, pp.169-179, 2010-12-25
本研究では,まず,遊びにおいて表れる幼児の"振り向き"という行為に着目し,その"振り向き"の実態を明らかにする。次に,事例をもとに"振り向き"から相互作用へと展開する過程について明らかにすることで,遊びにおける幼児の"振り向き"の意味について分析と論証を行う。その結果,"振り向き"が主に4つの要因によって引き起こされ,3歳児が一人で行う砂遊びにおいて"振り向き"が多く表れることを明らかにした。そして,3歳児の砂遊びの事例から,"振り向き"直後の注視,双方向的な"振り向き"によって幼児同士にその後の相互作用に対する暗黙的な承認が行われることを明らかにした。さらに,その後,幼児は接近することで場を共有し,暗黙的方略で交渉したり,模倣的方略を用いたりすることで相互作用へと至る過程を明らかにした。そして,遊びで表れる幼児の"振り向き"は,その空間にいる幼児や保育者と共に遊びたいという能動的な心理の欲求によって表象されていることを示し,保育者が幼児の"振り向き"を理解することは,その幼児の理解だけでなく,その場においてどの程度の仲間意識,イメージの共有が幼児間に保たれているのか確認する一つの目安になることを示唆した。