著者
鈴木 幸子 岩立 京子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.180-191, 2010-12-25

本研究は,幼稚園の帰りの集まりにおいて,3歳児が「別れのあいさつ」のルーティンを学んでいくダイナミックな過程を,幼児と保育者,幼児と他児のやりとりにおける言葉や仕草,表情を詳細に記録し,心情面も含めて考察した。その結果,まず,子どもは個人の楽しさや自分の思いを表現するために教師の提示したルーティンを破り,共に行動する楽しさによってルーティンに戻る。保育者はあいさつのルーティンの要素間の間合いを短くすることで,子どもがルーティンを実行するように援助をしていた。次第に,子ども同士がルーティンの実行を互いにうながすようになっていった。この変化の様相から,子どもが自発的にルーティンを学んでいくためには,子ども同士が影響し合うこと,また,その基盤としての子どもと保育者との信頼関係が重要であると考察された。
著者
松井 剛太
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.295-306, 2013-12-25

本研究の目的は,障害のある子どもがいる保育にとって,すべての子どもが充実した遊びを行うための示唆を提起することであった。研究方法として,特別支援学校幼稚部の遊びを分析対象とした。その結果,以下のポイントが明らかになった。第1に障害特性論から脱却することが遊びの充実につながること,第2に,個々の子どもの遊びの構えに着目すること,第3に,遊び込むための構造化を考えること,第4に,集団のノリを生むための教師の役割を振り返ること,であった。最後に,障害特性論の脱却のためには,保育独自の個別の指導計画の開発が必要であることを提起した。
著者
佐川 早季子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.163-175, 2013-12-25

本研究は,幼児の共同的造形遊びにおけるモチーフ生成のプロセスを明らかにすることを目的とする。幼稚園の4・5歳児クラスを半年間参与観察し,幼児がモチーフを生み出すプロセスを,言語的・非言語的やりとりの両面に着目して分析した。注視方向に着目した分析から,幼児が遊び相手の制作物を注視して制作方法に関する情報を取得し自分のモチーフをつくり出す過程で,注意がいったん造形遊びから逸脱する行動が見られた。これは,他児のアイデアを自分のものに変えるために必要な過程であることが示唆される。そして,交互に行われるモチーフの言語化が造形遊びに新しいアイデアをもたらす提案となり,造形遊びを協働的かつ即興的に展開させていた。
著者
湯浅 阿貴子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.248-260, 2015-12-25

本研究の目的はゲーム遊びで生起した「ずる」の場面に着目し,「ずる」が継続的に観察された幼児の行動記録から行動の変容プロセスを明らかにした。その際,他者との相互交渉が幼児の意識及び行動の変容を促す要因と繋がっているのかについて検討した。結果,(1)望んだ状況にするための「ずる」が一定期間繰り返されることによって周囲が疑問を抱くようになる,(2)周囲の幼児が「ずる」に対して疑問や不満を抱き,指摘するようになる,(3)「ずる」を行う幼児が指摘を受け,自身の行動の意味や結果について考える機会を得る,(4)突然変化するものではなく徐々に変容していく,という4つの段階を経ていることが明らかとなった。
著者
谷川 夏実
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.105-116, 2013-08-31

本研究の目的は,新任保育者の危機を通じた専門的成長について,省察を手がかりとして明らかにすることである。省察をとらえる視点として<(1)問題状況のとらえ方の変容><(2)実践に取り組む姿勢の変容>に着目し,幼稚園教諭2名の,1年余りに渡る継続的なインタビューデータを分析した結果,それぞれの新任保育者に固有のリアリティ・ショックとそれに伴う省察がみられ,省察を通じた専門的成長を読み取ることができた。この結果から,新任保育者が省察によって問題状況を解釈する枠組みを獲得し,それに基づき実践に取り組む姿勢に変容がみられるまでには,一定の期間と機会を与えられることが必要だということが示唆された。
著者
佐伯 胖
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.347-357, 2008-12-25