著者
和田 昭彦 阿部 修
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.18-21, 2016 (Released:2016-01-30)
参考文献数
10

MRトラクトグラフィーの神経線維追跡を基本原理として,脳領野を対象とした神経ネットワークの描出・解析を行う手法(structural connectivity analysis)が臨床応用可能となっている.グラフ理論を用いた隣接行列の解析で得られる特徴量からネットワークの全体および局所評価が可能である.近年,アルツハイマー病の発症・進行に認知機能関連の神経ネットワークの断裂・統合障害が関連するとの仮説が提唱されており,アルツハイマー病の診断・進行のバイオマーカーとして神経ネットワーク解析の貢献が期待される.
著者
庄司 友和
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.3-8, 2018 (Released:2018-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
2

近年,computed tomography(CT)装置は診断や治療方針の決定において重要な役割を果たしている.一般的に放射線検査はAs Low As Reasonably Achievableの原則に従い,実施されなければならない.しかしながら,日本のCT検査による医療被ばくは世界第1位であり,撮影条件の最適化および線量管理の重要性が高まっている.そのような背景の中,2015年に日本初の診断参考レベルが公表され,現在では各施設が撮影部位ごとのプロトコルを見直し,医療被ばくの最適化に大きく貢献している.本誌では,診断参考レベルに用いられているCT dose indexの変遷と最新の測定法および線量指標を用いた線量管理について述べる.
著者
木村 徳典
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.198-203, 2013 (Released:2013-07-27)
参考文献数
14

MRイメージングの収集系の進歩は単位時間あたりの SNRの増大とパラメータの多様化の歴史である.画像化のためのハード系に対する制御ソフトであるパルスシーケンスは自由度が大きく,生体組織の緩和時間の壁を前提としながらその制約下で進歩してきた.画像化は Fourier変換(spinwarp)法が基本であり,MRI収集高速化の問題は空間周波数空間である k空間をいかに速く,高い SNRのデータで充填するかにある.MRIコントラストも強調画像から定量化・標準化の流れにある.本稿ではMRIの収集系技術の変遷を概観する.
著者
前田 憲寿
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-10, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
22
被引用文献数
2

肌の見た目や肌表面の状態は,肉眼やマイクロスコープで見れば明らかである.しかし,より詳細に皮膚の状態を観察するためには,何らかの方法で皮膚の特徴を抽出して解析する技術が不可欠である.本稿では,美容皮膚科や機能性化粧品分野において有用な分光・偏光イメージング技術を用いてシミと微小循環血流の状態を画像表示して解析する方法について紹介する.紫外線または青緑色光を利用して皮膚を撮影し,さらに独自の成分解析法を適用することによって,メラニンやヘモグロビンなどの光吸収成分の分布を画像表示することができる.たとえば,紫外線ストロボを用いると,シミの状態を解析することができ,皮膚に青緑色光を入射させることで毛細血管網の状態を解析することが可能である.微小血管観察装置を用いて頭皮を観察したところ,毛髪の多い部位には微小循環(毛細血管)が観察されたが,毛髪が少ない部位には微小循環はほとんど観察されなかった.
著者
田島 英朗
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.287-291, 2016 (Released:2016-11-30)
参考文献数
24

本講座の第1回,第2回では,PETデータ取得のための検出器とその信号処理について概説した.PETの測定データは,測定の過程でさまざまなノイズ成分が加わったり,生体による減弱の影響を受けたりしており,高精度な画像を生成するためには,さまざまな補正を行う必要がある.本稿では,測定されたデータを処理し,各種補正を行い,PET画像を生成する画像再構成法について解説する.
著者
仁木 登 河田 佳樹 鈴木 秀宣
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.128-131, 2016

日本人の3人に1人はがんで死亡している.近年,CTの革新的な進歩により,がんの検診・診断・治療において三次元CT画像は中心的な役割を果たしている.肺がんの低線量CT検診の有効性・安全性・経済性が示され,普及しつつある.三次元CT画像を読影する医師の負担が問題となっている.肺がんCT検診における読影の効率化や診断能の均一化を実現するための,コンピュータ支援検出/診断システムの研究開発が進められている.本講座では,肺がんCT検診のコンピュータ支援診断の現状と課題について述べる.

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出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.281-282, 2017 (Released:2017-11-29)
著者
小西 孝明 道満 恵介 縄野 繁 目加田 慶人
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.46-50, 2019-01-25 (Released:2019-01-31)
参考文献数
6

現在,肝がんは専門の知識や経験をもった読影医の目視で診断がなされており,読影医の負担となっている.そのため,機械学習等を用いた読影支援が望まれている.機械学習においては,一般に多くの症例画像が必要となるが,大量に集めることは困難である.そこでわれわれは,症例不足を補うことを目的とし,健常症例に対して病変を合成することで人工的に症例画像を生成することに取り組んできた.本論文では,形状や大きさ,コントラストが異なるさまざまな見え方の人工病変画像を生成し,CNNの性能向上に有効な画像の生成法を提案する.生成した病変画像を学習データとして実病変画像と併用し,検出器を構築した.20症例に対する検出実験の結果,従来手法より検出精度が向上することを確認した.
著者
伊藤 康一
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.163-168, 2020-09-25 (Released:2020-10-09)
参考文献数
13

ヒトの脳は,正常加齢に伴って萎縮することがわかっており,この傾向を利用することでT1強調画像から年齢を推定することができる.アルツハイマー病などの脳疾患は,正常加齢と異なる萎縮パターンを示すため,T1強調画像から推定される年齢と実年齢とを比較することにより,診断支援を行うことが可能である.本論文では,3D CNNを用いた年齢推定手法を提案する.提案手法では,3D CNNにより年齢推定に適した特徴量を抽出するとともに,推定精度を改善するために性別を補足情報として全結合層に入力する.日本人健常者からなるT1強調画像データベースを用いた性能評価実験を通して提案手法の有効性を示す.また,提案手法のアルツハイマー病診断支援への応用について検討する.
著者
清水 昭伸
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.103-107, 2020 (Released:2020-06-20)
参考文献数
15

本稿では,A01-2班で行った多元計算解剖学における形態情報統合の基盤技術の成果の中から,ヒト胚子,小児,死後の多元計算解剖モデルに関する成果について述べる.胚子については,顎顔面上のランドマークの時空間統計モデルと脳形状の時空間統計モデル,小児では,肝臓の時空間統計モデルに関する成果について紹介する.死後の人体に関しては,成人の摘出肺を対象とした超解像技術について報告する.