著者
一関 雄輝 宮本 宏太 齋藤 俊輝 森 一生 町田 好男
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.217-222, 2015 (Released:2015-11-27)
参考文献数
17

われわれはこれまでプロペラ法を中心にMR画像のノイズパワースペクトル(NPS)計測の検討を行い,その二次元NPSはサンプリング密度を反映し,k空間軌跡どおりの周波数分布を示すことを報告してきた.一方,X線イメージング領域では,扱いも容易で数値解析がしやすい一次元NPSが使われることも多い.そこで本研究では,2つの代表的な一次元NPS計測法を用いて,プロペラMR画像の一次元NPSを検討した.「円周平均法」から求めた一次元NPSは,二次元NPSの同一空間周波数域のNPS値を平均化した特性を示し,「仮想スリット法」から求めた一次元NPSは,スリット走査方向のみのNPS値の周波数特性を表していた.また,NPS値の計測精度について検討を行い,円周平均法では低周波領域で計測精度が低いが,仮想スリット法と比較して精度のよい一次元NPS計測が可能であることがわかった.
著者
大内田 研宙 橋爪 誠
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.135-138, 2016 (Released:2016-05-29)

「計算解剖学」とは,高精細医用イメージング技術と情報学の融合によりさまざまな診断・治療法を高度化することを目的とした学術領域である.これまでわれわれは,大量の画像データベースに基づき正常な人体構造を統計的に記述した「計算解剖モデル」とその利用による臨床画像の理解に対して,数理的基礎論,基盤技術論,臨床応用論を構築してきた.多元計算解剖学は,その研究成果に立脚しつつ,(1)細胞レベルから臓器レベルまでの空間軸,(2)胎児から死亡時までの時間軸,(3)生理,代謝などの機能軸,(4)正常から疾患までの病理軸において理論,モデル,手法およびデータベースを発展させ,計算解剖学を多元化することを目的としたものである.これにより単なる画像理解にとどまらない統計数理モデルによる人体の総合的理解に基づき,早期発見や治療の困難な疾患に対する革新的な診断・治療法を創成することを目指している.本稿ではこの多元計算解剖学の目的と概要を述べる.
著者
伊藤 勇太
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.3-8, 2019-01-25 (Released:2019-01-31)
参考文献数
24

拡張現実感(AR)による映像表示を用いた応用において重要なテーマの一つは,AR映像の現実世界との整合性を保つこと,つまり,バーチャルな映像を現実世界にいかに最適に再現し,ユーザーに提示するか,ということである.本稿では,まず医用画像へのAR応用事例を挙げながらARを概説し,AR表示に欠かせない光学シースルーディスプレイ技術について導入する.ARを活用する上で重要な要件である空間・時間・知覚の整合性の概念を紹介する.紹介にあたって,関連する近年の研究を交えながら,各概念について掘り下げていく.本稿は,特に,AR技術を自身の分野に適用することに興味がある読者を想定している.
著者
宮下 充浩 畑中 裕司 小郷原 一智 村松 千左子 砂山 渡 藤田 広志
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.189-195, 2018 (Released:2018-10-07)
参考文献数
13

糖尿病網膜症の初期所見のひとつに毛細血管瘤がある.毛細血管瘤は眼底画像上で小さくてコントラストが低いため,医師であっても目視による検出は困難である.一方で,畳み込みニューラルネットワークは,画像認識の分野で良好な結果を示してきた.そこで,本論文では,畳み込みニューラルネットワークを用いて毛細血管瘤を自動検出する手法とその成果について述べる.最初に,ヘッセ行列に基づくshape index,2重リングフィルタ,ガボールフィルタを適用して,毛細血管瘤の強調画像を作成した.そして,畳み込みニューラルネットワークを用いて毛細血管瘤を検出した.その後,畳み込みニューラルネットワークと,48種類の特徴量に基づく3層パーセプトロンによって偽陽性候補を削除した.眼底画像データベースのDIARETDB1を用いて提案手法の性能を評価したところ,先行研究の性能を上回る良好な結果を得た.
著者
伊藤 貴之
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.150-153, 2012

「可視化」「見える化」という単語の認知度は,ここ数年で急速に向上した.とくに,警察による捜査や取り調べを透明化する意味での「可視化」や,ビジネスの進捗や収支に関する情報共有のための「見える化」が,新聞の社会面や経済面に数多く登場した.一方で「可視化」という単語を「情報の視覚的提示」という抽象的な行為で定義するなら,その範疇は警察やビジネスに限らず非常に多岐にわたるはずである.本稿では,形や色などの視覚的実体を有さない一般的な情報を視覚的に提示する「情報可視化」という技術を概観し,その応用事例をいくつか紹介する.
著者
阿部 恒介 董 建 早川 吉彦
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.65-72, 2012 (Released:2012-04-13)
参考文献数
12

テクノストレス眼症いわゆるVDT症候群を引き起こす要因として,作業中における瞬き回数の減少がある.そこで,VDT作業中において,30fpsのwebカメラで撮った画像から,顔検出・認識と追跡,眼の位置検出,瞬きの検出および瞬き波形の描画を行うシステムを開発した.顔検出・認識にはOpen CVライブラリを利用し,追跡には眉間パターンでテンプレートマッチングを行い,トラッキングした顔画像から眼の位置は2値化差分画像で得た.瞬きの検出には,フレーム間差分,眼の開閉度の検出,虹彩の検出の3通りで行った.これらの方法で,瞬きの瞬間,連続する瞬き,眼を瞑っている状態を画像の変化から測定した波形として得た.各方法でこれらの観測が一致するロバストな瞬き計測システムを作ることができた.
著者
栄藤 稔
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9, 1994 (Released:2016-03-23)
被引用文献数
4
著者
伊藤 聡志 斉藤 文彦 荒井 博俊 山田 芳文
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.167-175, 2013 (Released:2013-07-27)
参考文献数
16

少数の観測信号から画像復元を行う圧縮センシングを MRIの撮像に応用する場合に,三次元撮像は信号の収集軌道をランダムに選択できる次元を二次元に設定できるため,二次元撮像に比べて圧縮率を高めることが期待できる.本研究では,スパース性を導入する関数に我々が提案する三次元 FREBAS変換を使用し,これを MRI三次元撮像の圧縮センシングに応用した.再生像の品質を二次元画像と比較した結果,信号収集率を同条件とした場合に三次元撮像の方が良質な画像が再生されることを確認した.また,圧縮センシングによる三次元の画像再生は膨大な計算コストを必要とすることから,GPUを利用した再構成処理の並列化を行い,画像再生の高速化を試みた.実験の結果,256×256×64画素の画像を 53秒で行うことができ,CPU計算の 807秒に比べて大幅な高速化を達成することができた.
著者
小久保 潤 伊藤 聡志 山田 芳文
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.115-122, 2012 (Released:2012-04-13)
参考文献数
14
被引用文献数
1

圧縮センシングは,信号のスパース性を利用して,少数の信号データから画像を再生する手法である.MR画像は一般にスパース性を持たないため,スパース性を与える関数を導入する.スパース性導入関数には,ウェーブレット変換や空間差分などが多く利用されているが,我々はFREBAS変換を利用した方法について検討を行っている.圧縮センシングによる画像再生では多数回の反復処理を必要とするため,一般に膨大な計算コストを要し,実用上の障害となっている.そこで本研究では,PCに搭載されているGPUを汎用的な処理に使用する方法により,圧縮センシングによる画像再生の高速化を試みた.実験の結果,単一画像の再構成を1.3秒で行うことができ,CPU計算に比べて約9倍の高速化を達成することができた.
著者
朝比奈 諒 藤居 昭吾 山本 悦治
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.212-221, 2014 (Released:2014-08-05)
参考文献数
14

MRI画像シミュレータは,パルスシーケンスやハードウェア開発の効率向上に有用である.しかし,拡散強調画像に関しては計算量が膨大なため,ヒト脳サイズモデルを扱えるシミュレータは報告されていなかった.われわれは新規に提案した高速法を適用することで,年単位の計算時間を数時間にまで短縮した.一方で,シミュレータに対する性能向上への要求は高まる傾向にあり,計算時間の増大を招いている.そこでさらなる高速法として圧縮センシングをシミュレータに応用することを提案する.検討結果によれば,約30%のデータからでもシミュレータとしての動作に耐えられることが推定され,約3倍の高速化が見込まれた.応用例として,拡散強調画像撮像用MPGの振幅変動を想定し,得られる画像を評価した.その結果,データ利用率30%の圧縮センシングでも,MPGの振幅変動と画質劣化との関係を再現でき,開発したシミュレータが装置開発に有用であることが確認できた.
著者
伊藤 聡志 原田 弘章 山田 芳文
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.123-131, 2014 (Released:2014-05-24)
参考文献数
15

MRIにおいて三次元的な関心領域を高速に撮像する方法に,二次元撮像を応用したマルチスライス撮像がある.このマルチスライス撮像は適切な信号収集軌道のもとで撮像を行うと,三次元空間におけるスパース性を利用した圧縮センシングを適用することができる.マルチスライス撮像に圧縮センシングを適用する場合にスライス間にあるスピン密度の連続性を利用し三次元像として再構成する場合と,スライスごとに独立に二次元再構成する場合とで再生誤差の比較を行った.信号収集比率を同条件として比較を行った結果,再構成に利用するスライス枚数が多いほど再生像に含まれる誤差が減少し,再生像の品質が向上することが示された.また,スライス方向に対し画像の輝度値変化が小さい画像ほど三次元再構成による誤差軽減効果が大きくなることが示された.さらに画像にスパース性を導入する関数比較では,三次元FREBAS変換は三次元ウェーブレット変換に比べ,再生誤差の少ない画像を再生することが明らかとなった.
著者
中平 健治 宮本 敦
出版者
日本医用画像工学会
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.103-108, 2012 (Released:2012-04-13)
参考文献数
15

医用超音波画像を対象としたノイズ除去・エッジ鮮鋭化アルゴリズムを提案する.超音波画像では,画像全体の自然さを維持した上でのスペックルノイズの抑制と組織境界(エッジ)の鮮鋭さが求められている.スペックルノイズは撮像条件や撮像部位によって異なった空間周波数特性を持つため,画像の違いに対して一様に良好なノイズ除去を行うことが困難であった.この問題を解消するため,提案法では,画像から推定した空間周波数ごとのノイズ量を用いて,多重解像度解析によりノイズを抑制する.また,モルフォロジカルフィルタにより,不自然な模様を発生させることなくエッジの鮮鋭さを向上する.提案法を並列演算可能な専用プロセッサに組み込み,心臓などの動きの早い部位の観察に対応したリアルタイム表示(60フレーム/秒)を可能とした.