著者
石田 明 小畑 秀文
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.911-917, 1991-12-01
被引用文献数
8

音声認識装置を例にとって考えると、音声信号処理の分野で雑音処理は重要な研究課題である。特に背景雑音は、音声入力と間違えて応答する原因になるなど、認識率の著しい低下を招く。この問題は、実環境に存在する様々な非定常な雑音、とりわけ、ドアの開閉音のような継続時間の短いものに起因することが多く、この種の雑音対策は単純ではなく、より高度な雑音処理技術が必要とされる。本論文は、雑音環境の中の継続時間の短い非定常雑音と人間の音声とを区別する手法について述べたものである。本手法は、雑音と音声とを区別する重要な手掛かりとして、母音らしい部分を含むか否かの情報を用いることとし、そのための特徴量として周期性/ピッチ周波数/最適線形予測次数/5母音との距離/第1ホルマントのQという五つの特徴量を選定した。本論文では、この特徴量について詳細に検討を行い、特徴量の分布とそれらの変化パターンとを用いることで、音声と非音声の区別を高精度に行うことができることを示す。また、この手法をS/N比の低下した信号に対して検討を行い、耐雑音性の点でも優れた特徴量であることを示す。
著者
ツァガーン バイガルマ 清水 昭伸 小畑 秀文 宮川 国久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.140-148, 2002-01-01
被引用文献数
16

本論文では, 3次元可変形状モデルを用いた腹部CT像からの腎臓領域の抽出法を提案する.この方法は, 適当な位置に配置した初期モデルを連続的に変形させて目的の輪郭面を抽出するが, 今回は特に輪郭形状の平均やばらつき, 及び, 近傍の輪郭曲面との相関を考慮して変形を行う手法を提案する.具体的には, モデル曲面上の主曲率に注目し, その平均値と分散, 更に, 近傍の曲面との共分散を用いて変形する手法を開発した.本文では, 提案手法を実際の3次元腹部CT像からの腎臓領域抽出問題に適用した結果を示し, 本手法の有効性について議論する.
著者
李 元中 小畑 秀文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.2161-2169, 1997-08-25
被引用文献数
10

顔画像の認識, 圧縮などの応用には, 顔の輪郭や目, 鼻, 口等の形状ならびにそれらの位置関係を正しく認識する必要がある. しかし, 安定かつ正確な各顔部品のエッジを抽出する手法はまだ確立されていない. 本論文では顔画像から顔部品の安定した位置検出を行い, それに基づいて顔のスケッチ画像を抽出する手法について述べる. 具体的には, まずMorphology手法を基本とし, 本研究で開発したCircle_filterとRectangle_filterにより, 顔の向きによらない瞳の中心点の位置を抽出する. 次は, 両瞳の中心点を手掛りとして各顔部品の相対位置を決め, 各顔部品の範囲を限定し, その中で各顔部品のエッジを検出する. それに基づき, 各顔部品の特徴点の位置を決め, それらを結ぶ曲線により顔のスケッチ画像を得る. 多数の顔画像に本手法を適用した結果, スケッチ画が安定に得られることがわかり, ロバストな手法であることが示された.
著者
井関 文一 バイガルマ ツァガーン 小畑 秀文 大松 広伸 柿沼 龍太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1533-1535, 1999-09-25
被引用文献数
20

本研究では,胸部CT画像から肺野内の血管の3次元木構造を抽出する方法を示す.先に我々が提案した再帰的領域探索法を用いた方法では,必ず探索開始領域を探索に先立って決定する必要がある.今回我々は,肺野内の血管を抽出する際に,心臓から肺野内への血管の侵入部分である肺門部の位置を気管支形状との関係から推測し,肺門部における血管の断面領域を探索開始領域とするアルゴリズムを開発した.更に,このアルゴリズムにより,気管支と同様に血管の自動抽出が可能であることを示す.
著者
萩原 義裕 水澤 信忠 ファン・ティ・ホン・ザン 清水 昭伸 小畑 秀文 縄野 繁 武尾 英哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.425, pp.1-6, 2002-11-01
被引用文献数
4

本研究の目的は,マンモグラム上のコントラストが極めて淡い乳がん微小石灰化像の高精度な抽出方法を提案することである.提案方法は,ウェーブレット空間から求められる特徴量を用いてマハラノビスの距離比に基づいた分類器を用いたものである.特徴量は40種類の中からROCカーブの下面積Azを最大にするように選択される.本システムは,モルフォロジカルフィルタを基にした方法により抽出した候補領域を利用するため,背景組織の誤抽出を防ぎつつ,淡い微小石灰化像の高精度な抽出が実現される.提案システムを用いた実験の結果では,従来システムと比べ,微小石灰化像の抽出率を落とすことなしに,誤検出率を大幅に削減できた.これにより,提案システムの有効性が確認された.
著者
磯部 義明 大久保 なつみ 山本 眞司 鳥脇 純一郎 小畑 秀文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.279-287, 1993-02-25
被引用文献数
50

癌領域を同心円形孤立性陰影と仮定し,これを選択的に抽出するQuoit(輪投げ)フィルタを新たに開発した.このフィルタはいわゆるMorphologyフィルタの一変形であるが,(1)入力画像として同心円形でかつ中心から周辺に向かって単調減少するモデルを仮定した場合,フィルタ出力が解析的に表現できる特徴をもっている(結果が予測できる),(2)このフィルタを2回連続して適用すると,上記モデル画像を選択的に復元する能力を有する,などの興味ある事実を明らかにした.次いでこのフィルタを乳癌X線陰影抽出に応用し,12症例全例の乳癌部分を正しく抽出することを実証した.
著者
柳田 友尚 清水 昭伸 小畑 秀文 縄野 繁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.579, pp.101-106, 2005-01-14
被引用文献数
6

本論文では, 人体の3次元アトラスを用いて, 腹部CT像から複数臓器を同時に抽出するアルゴリズムを提案する.この手法では, あらかじめ用意されたアトラスを浮動画像とし, 入力の3次元画像を参照画像として位置あわせを行ない, 位置合わせ後の参照画像の各画素にアトラスの臓器ラベルを割当てることで臓器を抽出する.ただし, アトラスと未知画像の臓器の間では, 個人差によって位置や形が大きく異なるため, それらにも対応出来るように工夫した.本論文では, 提案手法を実際の画像に適用した結果を評価し, 有効性について考察する.
著者
小畑 秀文 増谷 佳孝 佐藤 嘉伸 藤田 廣志 仁木 登 森 健策 清水 昭伸 木戸 尚治 橋爪 誠 目加田 慶人 井宮 淳 鈴木 直樹 縄野 繁 上野 淳二
出版者
東京農工大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

本申請課題においては、5年間にわたる研究成果のとりまとめと、研究成果を社会・国民に発信することの2つが目的であった。第一の目的である研究成果のとりまとめにおいては、計算解剖学の目的、研究組織、計画班および公募班それぞれの研究成果(著書・論文のリスト、特許を含む)と共に、計算解剖学という新たな領域としての状況、計算解剖学主催による学術研究集会およびアウトリーチ活動、諮問委員による研究評価、などを含め、研究成果報告書として取りまとめて印刷・製本した。また、同報告書の内容に研究成果をより理解しやすいように一部の動画をも含めてCDも作成した。これらは関係研究機関に配布した。第二の目的である研究成果の社会・国民への発信に関しては、2つの取り組みを行った。一つは、「3Dプリンタで臓器モデルを作ろう!」と題した中学・高校生向け講座である。これは日本学術振興会主催の「ひらめき☆ときめきサイエンスプログラム」の一つとして2014年8月21、22日の2日間にわたって名古屋大学にて開催したもので、CT画像から臓器を抽出し、それを3Dプリンタで打ち出すまでを体験させた。次代を担う世代に計算解剖学の成果の一端を分かりやすく紹介したものである。二つ目は東京農工大学にて開催した「計算解剖学」最終成果報告シンポジウムである。計算解剖学プロジェクトで新たに開発された基礎から応用(診断・手術支援)までの研究成果を関連分野で活躍する研究者・技術者に対して広く紹介した。また、専門的・学術的な立場から計算解剖学の現状評価と今後の方向性や課題を議論し、次のステップへの礎とした。
著者
小畑 秀文 小場 弘之 西谷 弘 長谷川 純一 山本 眞司 鳥脇 純一郎 松本 徹
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究では日本人に多い胃がんと肺がんに焦点をあわせ、既に整備済みのマンモグラムデータベースと併せて、主ながん検診用画像のデータベース化の整備を行うことを目的としている。本研究は2年度にわたるが、この間に整備されたデータベースについて以下にその概要を述べる。胃X線二重造影像:本データベースは診断の難易度や病変の種類などのバランスがとれるように選別されたFCR像76枚から成る。このうち65枚が異常陰影を含む。胸部CT像:本データベースでは、肺がん検診に利用されるスライス厚10mmのものと、精密な検査に用いられるより薄いスライス厚のもの2種類を含む。肺がん検診用は症例数70症例であり、25症例が肺癌症例である。精密検査用については、症例数7症例で、いずれも肺癌症例である。胸部単純X線像:本データベースは間接撮影像50症例、直接撮影像50症例から成る。工学サイドの利用者であっても、一般的には撮影法やその読影法の基礎もわからないのが普通である。そのため、アルゴリズムの組立てに助けとなるように、それらに関する解説を用意したり、専門医のスケッチ画や診断所見を各画像ごとに与えるように努めた。
著者
胡 学斌 小畑 秀文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.596, pp.37-44, 2002-01-18

コンボリューション変換を受けた音声の混合信号を独立成分分析で分離する方法のほとんどは、分離フィルタのパラメーターを周波数領域で算出する。しかし、信号の周波数成分の間でほとんどの周波数において部分的な相関性を持つことが多い。その相関性がある程度大きくなると、すべてのBSSのパフォーマンスが低下することが予想でき、その悪影響を無視することができない。本論文では、池田および村田[1]によって提案されたTDD方法をベースとした再帰的な新手法を提案する。本手法を用いた実験結果から、部分的な相関性を持つ信号であっても、原信号の復元が高精度でできることが示された。SN比も改善度は周波数ごとに異なるものの、全体的には向上することが確認された。