著者
石田 大典
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.27-41, 2018 (Released:2018-11-17)
参考文献数
73
被引用文献数
1

過去に取り組まれてきた市場志向研究において,3つのタイプの市場志向(先行型,反応型,萌芽型)がイノベーションや新製品パフォーマンスへ及ぼす影響については十分に議論されてきたが,そのメカニズムについては必ずしも明らかにされていない。そこで本研究では,製品開発チームの学習プロセスに着目し,市場志向と新製品パフォーマンスを結び付ける媒介要因として検討した。日本の上場製造業企業から得られたサンプルを基に分析を行ったところ,先行型市場志向と反応型市場志向は製品開発チームの市場学習を促進させ,萌芽型市場志向は製品開発チームのアンラーニングを促進させていた。また,製品開発チームの市場学習は新製品優位性を高め,結果として新製品パフォーマンスを高めていた。一方,アンラーニングはマーケティング創造性を高めていたが,マーケティング創造性は新製品パフォーマンスへは結びついていなかった。
著者
大竹 光寿
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.1-15, 2017 (Released:2018-06-30)
参考文献数
86

本論文では,既存ブランドの海外展開をきっかけにしてブランド・アイデンティティが再構築され,企業成長を遂げていくプロセスを検討する。特に注目するのは,市場環境が変化しているのにもかかわらず,ブランドに対する信念や組織能力,ブランド・イメージに捕らわれるあまり,ブランドの革新が進まず,従来の組織活動が継続してしまうという慣性である。こうしたブランド・マネジメントの慣性は,ブランドの原点に立ち返りそれを現在直面している状況に合わせて解釈するという創造的原点回帰を通じて,ブランドの理想像としてのブランド・アイデンティティが再構築されることで緩和されうる。国内外で生じた慣性が相互に緩和されることで企業成長が実現されていく点が示される。
著者
井上 淳子
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.2_3-2_21, 2009 (Released:2012-02-07)
参考文献数
42
被引用文献数
2

本研究では、消費者の態度であるブランド・コミットメントによって実際の購買行動が説明できることを確認した。コミットメントに関する先行研究の検討と複数カテゴリーのデータを用いた分析から、ブランド・コミットメントの要素として感情的コミットメント、計算的コミットメント、陶酔的コミットメントの3つを特定するとともに、ブランドの購買確率やバラエティ・シーキング行動、推奨行動との関係を明らかにした。ブランド・コミットメントの各次元は消費者の行動に対して明確に異なった影響を及ぼしており、これらの結果はブランドをマネジメントしていく上での有効な示唆を含んでいると考えられる。
著者
白 貞壬
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.35-51, 2003

この論文の目的は、段階別戦略行動というカギ概念に注目しながら、グローバル・リテーラーの海外戦略の意思決定や戦略行動が、参入時、参入後に段階別に変化することを指摘することである。小売企業のグローバル化をめぐる理論は、ドメスティック行動からグローバル行動への戦略行動の拡大プロセスを理論的に解明しようとしてきた。しかし、小売企業のグローバル行動の中で、標準化-適応化問題という戦略行動が参入時と参入後で変化するということに対して、認識がやや希薄であった。この問題を明らかにするために、日本におけるグローバル・リテーラーであるトイザらスとカルフールの戦略行動の変化を時系列に追い、従来対立すると考えられてきた標準化-適応化戦略が参入時、参入後の段階においていかに統合されるかを分析した。
著者
梅澤 伸嘉
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.95-102, 2003 (Released:2011-05-20)

新しい市場を創造した先発商品を「新市場創造型商品」と呼ぶならば、そうした「新市場創造型商品」は市場で長期間NO.1のシェアを保ち続ける確率が高いこと、その主たる要因が消費者の評価に関係していることを実証的に明らかにした。同時に、後発がその市場でNO.1になれる確率はきわめて小さいことなども検証し、先発優位か後発優位かの議論に関して1つの展望を切り開いた。
著者
近藤 公彦
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_3-4_16, 2010

小売業者にとってPOS 情報は、効果的なマーチャンダイジング(MD)を実施し、取引先に対して有利に交渉を進めるうえできわめて重要な情報である。このため、POS 情報は取引先に全面的に公開しないことが常識と考えられてきた。コープさっぽろはこの常識を覆し、POS 情報を全面開示することによって取引先からのMD 提案の仕組みをつくり、新たなチャネル・パートナーシップを構築した。本研究はコープさっぽろをケース研究の対象とし、協働MD 組織の役割、取引先とのwin-win 関係、模倣困難性などの視点からPOS 情報開示に基づくチャネル・パートナーシップ構築の理論的検討を行い、チャネル研究の新たな課題を提示する。
著者
清宮 政宏
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.91-112, 2004 (Released:2011-05-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1 2

従来、成果主義ベース管理 (またはアウトプット管理) と行動主義ベース管理 (またはプロセス管理) の対比で研究がなされてきた営業管理様式であるが、行動主義ベース管理の優位点や必要性が提起されてきながら、営業管理においてそれを採用することによる効果や成果との因果関係についてはあいまいなものであった。今回の研究では、この営業管理様式と営業成果の因果関係を詳細に分析するため、営業管理様式を構成するものを、6つの管理方式に分け (アウトプット管理、リレーション管理、プロセス管理、行動量管理、管理方式のレビュー・修正、報奨) 、また営業成果も3つに分けて (営業員への効果、顧客における効果、企業での成果) 、これらの管理方式とそれぞれの営業成果との因果関係の検証をこころみた。その結果、アウトプット管理と報奨は、弱いながらも直接的に企業への成果に寄与するのに対し、リレーション管理、プロセス管理、管理方式のレビュー・修正は、営業員への効果、顧客における効果に強く直接的に寄与し、結果的に企業での成果を高めることが確認された。