著者
朝岡 孝平
出版者
日本商業学会
雑誌
JSMDレビュー (ISSN:24327174)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-8, 2021 (Released:2021-04-09)
参考文献数
49

本論文では,消費文化理論(CCT)の諸文献をレビューし,CCT研究の射程の広がりや消費者行動/マーケティング研究者や実務家にとってCCTが持つ意義を検討する。CCTとは,製品やサービスにまつわる様々な文化的側面を持つ消費者の行為とそれに関わる現象について,それが生じるメカニズムや消費者にとっての意味を明らかにし理論化しようとする研究領域である。本論文ではまず,既存研究で整理されたCCTの4つの研究プログラムについて概観する。次に,近年のCCT研究の射程の広がりとして,(1)市場システムダイナミクス,(2)消費のポリティクス,(3)技術への注目という3つの研究群について紹介を行う。これらを踏まえて,CCT以外の研究者やマーケティングの実務家にとってCCTが持つ「消費者やマーケティング現象を理解することに役立つ」という意義を説明し,今後の研究課題についても述べる。
著者
外川 拓 石井 裕明 恩藏 直人
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-78, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
53
被引用文献数
3 3

既存研究においては、パッケージへの画像掲載により、好ましい消費者反応を得られることが示されてきた。本研究では、こうした効果がどのような時に変化するのかを検討するため、解釈レベル理論を援用した。解釈レベル理論は、対象との心理的距離によって対象への捉え方が変化することを提示している。 実験 1 では心理的距離のうち社会的距離に注目した。その結果、消費者がギフトを想定した場合(社会的距離:遠)、画像非掲載パッケージが製品評価を高め、自分自身での消費を想定した場合(社会的距離:近)、画像掲載パッケージが製品評価を高めることが示された。 実験 2 では心理的距離のうち時間的距離に注目した。ギフトを贈与するまでの時間的距離を操作したところ、消費者が遠い将来の消費を想定した場合は、画像非掲載パッケージが製品評価を高める一方、近い将来の消費を想定した場合は、画像掲載パッケージが製品評価を高めることが示された。
著者
金 雲鎬
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_45-4_56, 2010

従来の卸売流通研究では,卸売企業が情報システムを導入するのは厳しい取引環境の中で生き残るための戦略として説明する視点が多く,情報システムを導入するメカニズムに関する議論は少ない。特に市場シェアを拡大している大規模卸売企業がなぜ・どのように情報システムを導入するのかに関してはあまり議論されてこなかった。これに対して,本稿では小売企業との企業間関係に注目して,大規模卸売企業が情報システムを導入するメカニズムを分析する。延期—投機理論を分析枠組みとして,リスク転嫁とプロセス革新の局面から捉える。分析の結果,大規模卸売企業の情報システム導入は,延期行動であり,小売企業との間での共同革新によって起こることが主張される。
著者
水越 康介 日高 優一郎
出版者
日本商業学会
雑誌
JSMDレビュー (ISSN:24327174)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.33-39, 2017 (Released:2019-10-29)
参考文献数
70
被引用文献数
1

本稿では,ソーシャル・マーケティング研究について検討し,今後の具体的な研究指針を提示する。この試みは,近年ますます注目される社会的活動において,マーケティング活動やマーケティング研究が果たす意義を明らかにするとともに,営利企業の活動にとどまらないマーケティングの可能性を示す。具体的に,本稿では,ソーシャル・マーケティングがコマーシャル・マーケティングの応用として発展し,個人の行動変革を目的とするダウンストリームに注目してきたことを確認する。その上で,近年の新たな研究として,社会変革までを見据えたアップストリームに注目するとともに,アップストリームとダウンストリームの相互依存関係に関する実証的な研究が必要とされるようになっていることを示す。
著者
松井 剛
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.25-41, 2012-03-31 (Released:2014-03-01)
参考文献数
55

本論文の目的は、北米市場における日本産マンガ出版の事例分析を通じて、グローバル・マーケティングが直面する文化障壁について考察することにある。筆者自ら作成した書誌データベースなどを活用した事例分析によれば、大衆的な文化製品を輸出する際には、進出先市場で共有されている文化規範と、輸出される文化製品に対応する進出先の文化製品に関するステレオタイプという 2つの障壁に直面する。本論文は、大衆文化製品に与えられたスティグマがゆえに生まれたこうした文化障壁を克服するためのマーケティング努力を、ゴフマンのスティグマ管理という概念を通じて解釈する。
著者
田中 祥司 髙橋 広行
出版者
日本商業学会
雑誌
JSMDレビュー (ISSN:24327174)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-7, 2020 (Released:2020-04-24)
参考文献数
28

本稿は,ブランドの本物感における知覚・認知の程度の違いによる階層性に注目しながら,下位ランク(階層)から上位ランク(階層)への移行に影響を与える要因の解明を試みたものである。具体的には,潜在ランク理論を用いた分析によって,ブランドの本物感の階層性(四つのランク)を見出した。同時に,その階層性と本物感を構成する要素との関連について,上位のランクになるほど,物象的から象徴的な要素へと移行することを示唆した。さらに,上位のランクに移行する際に影響を与える要因を検討した結果,企業のこだわりが一貫して重要な要因であること,最初の移行(ランク1からランク2),および,最後の移行(ランク3からランク4)においては,こだわりに加え,感情的関与も重要な要因であることを明らかにした。
著者
間島 羽奈子
出版者
日本商業学会
雑誌
JSMDレビュー (ISSN:24327174)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.9-16, 2021 (Released:2021-04-09)
参考文献数
46

超高齢社会において,生きがいの獲得につながる生涯学習が重視されているが,社会教育施設のサービス品質が高齢者の学習満足度に与える影響は検討されてこなかった。本稿は,社会教育施設の一つである公立図書館を取り上げ,①図書館の提供するサービスが,高齢者の学習満足度に与える影響,および,②提供サービスと学習満足度の関係に対する利用頻度のモデレート効果を検討する。図書館のサービス品質を構成する代表的な3つの次元とともに,学習プログラムに関するサービス品質を測定する尺度を設計し,60~69歳の利用者(n = 206)を対象に質問紙調査を実施した。階層的重回帰分析の結果,「場としての図書館」と「学習プログラム」の2つの次元が学習満足度を高めていた。また,利用頻度が少ない場合に,「学習プログラム」が学習満足度をより高める傾向にあった。本研究の貢献は,サービス品質研究の対象を生涯学習の文脈に伸展させ,社会教育施設としての図書館のサービス品質が高齢者の学習満足度に与える影響を明らかにした点にある。
著者
織田 由美子
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.21-34, 2020 (Released:2020-06-30)
参考文献数
57

本稿では,結婚や育児,介護等プライベート領域の市場化において,伝統的な役割規範が維持されるプロセスを,Butler(1990)のパフォーマティビティの概念に基づいて明らかにすることを試みる。より具体的には,「婚活」ブームを通して配偶者探しの市場化が普及する一方で,男性の経済力を重視するといった伝統的な役割規範が維持されるプロセスを明らかにする。これまでの研究は,市場調達における利用者の矛盾やストレスを解決する方法や,市場をアイデンティティ構築の場として活用するといった観点であり,消費者のエージェンシーを前提とした研究であった。本稿では,新たな実践の採用(再意味化)と伝統的規範の引用という両面から,変化のプロセスを検討する。分析結果からは,実践を促進する言説が,伝統的規範に矛盾しないという言説と同時に展開されることで,市場化が促進されつつ伝統的規範が維持されたという可能性が示された。
著者
久保 知一
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-16, 2020 (Released:2020-12-26)
参考文献数
91

流通における卸売業者のミクロ的な介在根拠は,卸売業者が個々の顧客に対して提供する顧客価値にある。本論では,卸売業者がどのような顧客価値を提供しているのか,そして顧客価値はどのような組織的メカニズムによって作り出されているのかを問い,多属性モデルに基づいて卸売業者の顧客価値提供を描写する概念モデルを提案し,さらに実証分析を行った。その結果,配送の延期と流通サービスのカスタマイズ度が顧客価値に正の影響を与えており,それらは組織能力,仕入れの投機,そして人的資産特殊性から正の影響を受けていることが示された。
著者
木村 純子 ラッセル W.ベルク
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.39-55, 2004 (Released:2011-05-20)
参考文献数
18

本稿は、消費文化の受容について考えることを目的としている。分析対象として日本で活発に行われている西洋文化としてのクリスマス消費を取り上げる。これまでの議論は、西洋文化に日本文化を従属させる (グローバル論者) 、あるいは日本文化に西洋文化を従属させる (伝統論者) といった「西洋中心の文化帝国主義モデル」であり、文化を本質的なものとして捉え、日本の文化状況を均質化に行き着くものとして理解していた。ところが、消費文化の受容過程に目を凝らすと、実際は、文化は西洋か日本かのいずれかに均質化していくわけではない。本稿が依拠する変容論者は、消費文化の受容を日本人が主体的に異文化を受け止め利用していく過程 (=文化の再生産) と捉える。文化の再生産には、二つのしかたがある。一つは西洋をなじみのあるものに変えるしかたである。もう一つは西洋を西洋のまま維持するしかたである。このことから、日本の文化は、均質化に向かっているものとしてではなく、異類混交とした状況にあるものとして理解されるべきである。
著者
小林 哲
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-12, 2018

<p>医療や教育サービスにおいて,サービス終了時に便益を享受することができず,その後しばらくして便益がもたらされることがしばしば存在する。このような現象は便益遅延性と呼ばれており,顧客満足の評価や顧客参加の在り様に大きな影響をもたらすことが指摘されている。</p><p>しかし,このサービスにおける便益遅延性は,私たちにひとつの理論的な問題を提起する。便益遅延性がサービスの基本特性である生産と消費の同時性(不可分性)に反するというのがそれである。もし,サービスにおいて生産と消費が同時になされるのであれば,消費すなわち便益の享受が遅延することはない。一方,医療やサービスにおいて便益が本当に遅延するのであれば,それはサービスの基本特性である生産と消費の同時性に反することになり,この種の医療や教育は"サービスではない"とみなすこともできる。そこで,本稿では,サービスの基本特性に立ち返り,便益遅延性の発生メカニズムを探ることで,このような矛盾が生じる理由を明らかにし,サービス・マネジメントの新たな可能性について考察する。</p><p>結論を先に述べるならば,医療や教育サービスにおける便益遅延性は,サービス・デリバリー(生産)と便益の享受(消費)との間に顧客資源が介在することによって生じる。さらに言えば,便益遅延性は,このような顧客資源介在型サービスの特徴のひとつに過ぎない。したがって,医療や教育サービスの成果を高めるには,便益遅延性のみならず,それをもたらす顧客資源介在型サービスの特徴を理解しマネジメントする必要がある。</p>
著者
櫻井 秀彦 丹野 忠晋 増原 宏明 林 行成 山田 玲良
出版者
日本商業学会
雑誌
JSMDレビュー (ISSN:24327174)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-18, 2019 (Released:2019-10-29)
参考文献数
25

本稿では医薬品卸と薬局間の医療用医薬品の納入価格の影響要因について実証研究を行った。降圧薬の薬価とその卸価格の差の薬価に対する割引率を分析対象とした。薬局に対する,ある医薬品メーカーの薬剤の割引率は,その薬局がメイン卸(最も高いシェアの卸企業)としている卸企業がその医薬品メーカーとどのような資本関係(系列関係)にあるかによって大きく影響を受けていた。強い系列卸をメイン卸とする薬局は,そのメーカーの医薬品を割引されない一方で,弱い系列や非系列の卸をメインとする薬局は大きな割引を得ていた。また,特許で保護されている薬剤には数量割引が確認された。更に,複数の薬剤を一括して取引して価格を決める総価取引は,割引率に大きな影響を与えないことが示された。
著者
小本 恵照
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-15, 2006 (Released:2011-05-20)
参考文献数
31

本稿は、開示データが入手できる109のフランチャイズ・チェーンを対象に、フランチャイズ加盟店の廃業率を算出し、併せてフランチャイズ契約が加盟店の廃業率に与える影響を分析したものである。廃業率については、フランチャイズ加盟店の廃業率が非加盟店の廃業率に比べ高いことが判明した。加盟店の廃業に与えるフランチャイズ契約の影響については、テリトリー制が採用されている場合と加盟金が多額な場合に廃業率が低いことが明らかとなった。前者については、テリトリー権を付与しても依然として競合チェーンの参入は可能であることを踏まえると、市場が必ずしも競争的ではないか、ブランド内競争がブランド間競争より厳しいという、いずれかの結果を反映したものと考えられる。後者については、加盟金の金額が、開業支援の充実度やフランチャイズ加盟によって獲得できる将来利潤の大きさを示す結果とみられる。
著者
松尾 睦 細井 謙一 吉野 有助 楠見 孝
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.43-57, 1999 (Released:2011-08-16)
参考文献数
48
被引用文献数
1 1

本研究の目的は、自動車販売会社における営業担当者の知識獲得プロセスを検討することにある。販売方略に関する手続的知識は、定性的および定量的な質問紙調査によって測定した。分析対象となる108名の営業担当者を、経験年数に応じて新人群 (営業経験3年未満) 、中堅群 (3年~9年) 、ベテラン群 (10年以上) に分類した上で、手続的知識と販売業績について相関分析を行ったところ、営業経験を積むほど手続的知識と販売業績の正の相関が強まることが明らかになった。この結果は、営業担当者の知識が経験によって宣言的レベルから手続的レベルに変換されるというAnderson (1982、1983) の認知的スキル獲得モデルによって解釈できるとともに、エキスパート研究における10年ルールと対応するものである。
著者
岸谷 和広
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.33-52, 2016 (Released:2017-05-25)
参考文献数
52
被引用文献数
1

本稿の目的は、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)上でのコミュニケーションに関する双方向性(双方向コミュニケーション、ユーザーコントロール、反応性)とSNSがユーザーに提供する価値、SNSに対するユーザーのロイヤルティとの関係を検討することである。同時に、それぞれの関係に対するSNSの技術的・社会的特性(プラットフォーム)の影響(モデレート分析)を検討する。プラットフォームとして、フェイスブックとツイッターを取りあげ、それぞれのユーザーに対してインターネットによる質問紙調査を行い、共分散構造分析を用いて分析した。その結果は、1)それぞれのプラットフォームにおいて、双方向性と反応性は、社会価値と情報価値それぞれに対して正の影響を与えていたのに対して、ユーザーコントロールは、情報価値に対して負の影響を与えていた。2)プラットフォームの効果として、フェイスブックユーザーはツイッターユーザーよりも情報価値が与えるサイトロイヤルティへの影響が大きいのに対して、ツイッターユーザーはフェイスブックユーザーよりも社会価値が与えるサイトロイヤルティへの影響が大きいことがわかった。その結果を受けて理論的そして実践的含意を論じ、本研究の問題点と将来の研究の方向性を示した。
著者
武居 奈緒子
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.17-35, 2006 (Released:2011-05-20)

本研究の目的は、新興呉服商が、卸売商支配の流通で、どのように成長し最終的に百貨店業態へと業態革新を遂げたのかについて、一次資料に基づいて論証することである。新興呉服商の仕入革新の特徴は、流通チャネルの短縮化、安定的仕入れルートの確保、仕入商品の拡大からなる。新興呉服商と産地の仲買との共存と離脱という呉服商の革新的行動は、大規模小売商としての道を切り開き、大量販売・高品質による信用・多品目取扱いの基盤となり、日本における百貨店の原型が形成されることが明らかとなる。
著者
高嶋 克義
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.33-51, 2007 (Released:2011-05-20)
参考文献数
43
被引用文献数
3

小売業態論は, 小売業態を分析単位として小売業態革新のダイナミクスにおける特徴を捉えるアプローチであり, 新規参入業者による業態革新と業態への収敏化という傾向を想定している。本研究では, これらの傾向を革新者のジレンマやドミナント・デザインといった技術革新論の視点で捉え直すとともに, この想定が抜本的アウトプット革新という限定的な革新概念からもたらされることを説明する。そのうえで, 抜本的革新一漸進的革新, アウトプット革新一プロセス革新という多様な革新を考慮し, 小売企業の組織能力による革新への影響を考えることで, 小売業態革新の展開には2つの対照的なパターンが存在することを理論的に導き出す。
著者
堀口 哲生
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-15, 2019 (Released:2019-05-31)
参考文献数
82

企業間競争の激化等の要因により,企業は技術的・市場的に新規性の高い新製品を以前よりも頻繁に導入することが求められている。このような新規性の高い新製品開発においては,新製品開発者が如何に正しい判断を行えるかという点が大きな課題となる。本研究では,先行研究,統計分析の結果をもとに,戦略的状況における意思決定の行われ方として,分析的判断,直観的判断,連想的判断の3つが存在することを明らかにした。その上で,技術的・市場的に新規性の高い新製品開発において,どのような意思決定がより有効なのかについて明らかにした。
著者
中川 宏道 星野 崇宏
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.1-15, 2017

<p>値引きとポイント付与とでは,どちらのセールス・プロモーションの効果が大きいのであろうか。本研究では,食品スーパーにおける集計された購買履歴データを用いて,ポイント付与に関するプロモーション弾力性および値引きの弾力性の推定をおこない,両者の効果の比較をおこなった。プロモーション弾性値の測定の結果,ベネフィット水準が高くなるほど値引きの弾性値が高くなる一方,ポイント付与の弾性値は低くなる傾向が確認された。これらの結果,商品単価が低く値引率・ポイント付与率も低いときには,ポイント付与の方が値引きよりも売上効果が高くなることが確認された。小売業が低いベネフィット水準においてプロモーションをおこなう場合には,値引きよりもポイント付与の方が有利であることが示唆される。</p>
著者
木村 純子 ラッセル W.ベルク
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.39-55, 2004

本稿は、消費文化の受容について考えることを目的としている。分析対象として日本で活発に行われている西洋文化としてのクリスマス消費を取り上げる。これまでの議論は、西洋文化に日本文化を従属させる (グローバル論者) 、あるいは日本文化に西洋文化を従属させる (伝統論者) といった「西洋中心の文化帝国主義モデル」であり、文化を本質的なものとして捉え、日本の文化状況を均質化に行き着くものとして理解していた。ところが、消費文化の受容過程に目を凝らすと、実際は、文化は西洋か日本かのいずれかに均質化していくわけではない。本稿が依拠する変容論者は、消費文化の受容を日本人が主体的に異文化を受け止め利用していく過程 (=文化の再生産) と捉える。文化の再生産には、二つのしかたがある。一つは西洋をなじみのあるものに変えるしかたである。もう一つは西洋を西洋のまま維持するしかたである。このことから、日本の文化は、均質化に向かっているものとしてではなく、異類混交とした状況にあるものとして理解されるべきである。