著者
井上 淳子 上田 泰
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.18-28, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
42

本研究はアイドルを応援する(推す)ファンがアイドルに対して心理的所有感を持つことを主張し,その影響について論じるものである。具体的には,アイドルに対するファンの心理的所有感は,同じアイドルの他のファン(同担)に対する複雑な意識を生み出し,さらにその意識が当人のウェルビーイングと推し活動を継続させる原動力となることを理論的かつ実証的に明らかにする。550人のアイドルファンから収集したデータを分析した結果,アイドルに対する心理的所有感は心理的一体感と心理的責任感から構成され,心理的一体感が同担仲間意識に,心理的責任感が同担競争意識に影響を及ぼすことが実証された。また,ファンのウェルビーイングは2つの同担意識からともに正の影響を受ける一方で,現在のアイドルを推し続けたいという推し活継続性は,心理的一体感と同担仲間意識から正の影響を受けるものの,同担競争意識から負の影響を受けることが明らかになった。
著者
井上 淳子
出版者
早稲田大学
雑誌
産業経営 (ISSN:02864428)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.73-88, 2003-12-15

新製品開発は企業にとって存続と成長を左右する重要な活動である。どの企業もその成功のために多大な資源を投じているが,現実には多くの新製品が失敗に終わっている。新製品開発に不可欠な情報分析ツールは確実に進化しているものの,開発プロセスにおける意思決定の精度には問題が残されている。本稿では,新製品開発の成功要因と認識されてきた開発関係者のコミットメントについて,その弊害的側面に着目することにより,新製品の成功を阻む非合理的な意思決定の原因を探った。コミットメントのエスカレーションは,過去の意思決定や選択が思い通りの成果をあげていない場合に引き起こされ,意思決定者を誤った行動に固執させてしまう。プロジェクトの成功見込みについて危険信号が出されているにもかかわらず,その警告を無視したり歪めて解釈したりしてプロジェクトを続行すれば,最終的に新製品の失敗と莫大な損失をもたらしかねない。新製品開発には多大な努力と費用がかかり,特に費用は開発段階が進むほど増大する。開発プロセスのレビュー・ポイントにおける決定が新製品の成否に大きく関わるため、その意思決定に弊害をもたらすコミットメント・エスカレーションを回避することは重要な課題である。そこで本稿では,マーケティング領域においてほとんど適用されてこなかったコミットメントのエスカレーション理論を用いて,新製品開発プロセスにおけるエスカレーションの影響要因を導出し,その回避策を考察した。
著者
井上 淳子 冨田 健司
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.55-67, 2002-02-22 (Released:2012-11-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年,医療機関を取り巻く環境は確実に厳しさを増している。各医療機関とも生き残りを賭けた熾烈な競争を強いられ,大きな変革を迫られている。ビジネスの世界において他社と協調的な関係を結ぶ傾向は,病診連携,病病連携,医療と福祉の連携など医療業界においてもみられるようになった。機能分化や医療資源の効率的活用が叫ばれる今日,医療機関どうしの連携はますます重要性を増している。本稿では,亀田総合病院の地域医療ネットワーク事業を事例にとり,成功要因の分析を行った。同院の成功は,情報共有を通じた地域医療機関との戦略的提携,顧客である地域医療機関との良好な関係性構築,徹底した患者(顧客)志向によって説明できる。同院は「企業」戦略ではなく,ネットワーク組織全体がもっ人的資源や,物的資源,情報の利用により,組織全体の利益・便益が向上することを目的とした「組織」戦略をとっている点が特徴的である。
著者
井上 淳子 赤松 直樹 斉藤 嘉一 寺本 高 清水 聰
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.41, 2019-06-30 (Released:2019-08-18)

慶應義塾大学 本稿では,2000年以降のマーケティング・サイエンスと消費者行動研究のトレンドを把握すべく,Marketing ScienceとJournal of Consumer Researchに掲載された論文のアブストラクトをテキスト分析し,両分野に重なるトピックと各分野に特定的なトピックを導き出した。 またJournal of Marketing Researchに掲載された論文の引用傾向を検討し,同誌がマーケティング・サイエンスと消費者行動研究の議論に共通の場を提供する重要な鍵である可能性を指摘した。最後に,両分野の知見が有機的に結びつくことで今後の発展が期待される研究テーマを示し,関連する既存研究をレビューした。(マーケティング・サイエンス,消費者行動,研究動向,知覚,認知,社会的ダイナミクス)
著者
有賀 敦紀 井上 淳子
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_1-1_12, 2013 (Released:2018-08-31)
参考文献数
30

人間は希少なものに魅力を感じる(希少性効果)。本研究では、ものの価値規定における希少性効果の存在を確認するとともに、その効果が生起する要因を実験によって解明した。その結果、希少性効果は対象の相対的な数の少なさではなく、特徴に基づく対象の減少的変化によって生起することが明らかになった。つまり、希少性効果を活用して商品価値を増大させるためには、商品が他の消費者によって購買され、その数(入手可能性)が減少していく様子を可視化することが有効であると示唆される。
著者
井上 淳子
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.2_3-2_21, 2009 (Released:2012-02-07)
参考文献数
42
被引用文献数
2

本研究では、消費者の態度であるブランド・コミットメントによって実際の購買行動が説明できることを確認した。コミットメントに関する先行研究の検討と複数カテゴリーのデータを用いた分析から、ブランド・コミットメントの要素として感情的コミットメント、計算的コミットメント、陶酔的コミットメントの3つを特定するとともに、ブランドの購買確率やバラエティ・シーキング行動、推奨行動との関係を明らかにした。ブランド・コミットメントの各次元は消費者の行動に対して明確に異なった影響を及ぼしており、これらの結果はブランドをマネジメントしていく上での有効な示唆を含んでいると考えられる。