著者
鈴森 薫
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp."N-395"-"N-405", 2001-11-01
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
池田 信
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.15, no.12, 1963-10

人に於て精子免疫に基ずく不妊が存在するか否かを検討するために, 先ず成熟モルモットを用い4群〔1群, モルモット睾丸乳剤+Freund's Adjuvant(F. Adj.)注射群. II群, モルモット肝乳剤+F, Adj, 注射群. III群, F. Adj. のみ注射群. IV群, 無処置群〕の実験を試みた. 法射後約3週後に, i) 抗原としてモルモット精子乳剤(蛋白含量0.6g/dlの0.5ml)を注加して, 剔出子常によるSchultz-Dale試験, ii) モルモット精子乳剤(蛋白含量0.6g/dlのものを原液抗原)を抗原として血清による沈降反応, iii)血清や頚管, 腟分泌液のモルモット精子に対する精子不動化作用等を検べた. I群はSchultz-Dale試験で14例中12例(85.7%)陽性, 沈降反応では6例中4例陽性であった. 精子不動化作用はI群では対照に比し顕著な不動化作用がみられた. 更にI群及び馬, 牛, 豚等の血清附加 F. Adj. で感作した成熟雌の子宮を腟と共に剔出し, 当該抗原を子宮腟部, 子宮内にのみ注入するに子宮収縮はみられなかったが, 子宮漿膜面に接触させると, 顕著な収縮がみられた. 又I群のSchultz-Dale試験で精子乳剤抗原の微量を用いると反応は陰性であり, 陽性となるためにはある一定量以上の抗原の量が必要であった. I, II, III, IV群を成熟雄と同棲せしめ最長6ヵ月にわたり観察した所, I群では10例中2例, II群では10例中6例, III群では6例中4例, IV群では6例中5例妊娠し, 明らかに有意差を示した. かくの如くモルモットでは免疫を強化することにより, 人工不妊を起し得るが, これは精液が子宮腟部, 子宮内壁に接触して攣縮が起り不妊を起すと考えるよりも, 寧ろ子宮内, 頚管, 腟等の分泌液中の抗精子抗体のため精子の不動化が起り, 不妊が起きると考える方が妥当であろう. 次に人の精子免疫に基ずく不妊が存在するならば上述の成績から, 血清, 頚管粘液の精子に対する作用を重視すべきであるから, 原因不明不妊, 経産, 十代の未婚の婦人の血清をとり, 人精子に対する作用を比較検討したが, 不妊症21人と対照の各々20人との間に差を認め得なかった. 又不妊症と経産婦人の排卵期の頚管粘液を採り人精子に対する作用を検べたが有意差はなかった. 更に健康人の精液をとり, 生理食塩水を加え, ガーゼで濾過し, 遠沈, 沈渣で浮游液を作り, 凍結融解し, 蛋白含量12γ/mlに稀釈し不妊症, 経産, 十代の未婚婦人の皮内に0.05ml宛注射し, 15~20分後に反応を検べたが有意差はなかった. 故にモルモットでは免疫を強化することにより人工不妊を起し得たが, 人では自然性交時には性器より吸収される精子量が微量なため, 精子に対する抗体の産土量が少いためか体液中には不妊を起す抗精子抗体は証明されない. 従って体液内抗精子抗体による不妊症の存在は, 人に於ては考えられない.
著者
森 巍 金岡 毅 関場 香
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.265-273, 1973-04

Prostaglandin F_<2α> は新しい子宮収縮剤として, 又学問的にも極めて興味ある薬剤として最近注目をあびている. しかしながらその産科学的な評価については未だ明確に確立されてはいない. そこで私達は私達の病院に入院した陣痛未発来の妊娠末期婦人185例について, これを Pg F_<2α> 8.3μg/min 注入群, Pg F_<2α> 16.7μg/min 注入群, Oxytocin 8-20 mU/min 注入群の三群にわけ, Balloon 法又は Open-tip 法による子宮内計測により次の観察結果を得た. (1) 陣痛発来効果は Pg の方が Oxytocin よりもややすぐれている. (2) しかし児娩出効果は Oxytocin が Pg に比しすぐれている. (3) Bishop の頚管成熟度別に注入開始から分娩迄の時間をみると, Oxytocin がはるかに Pg よりもすぐれている. (4) 子宮収縮曲線において Pg により誘発される収縮は振幅がやや低く, 収縮時間が長く, 頻度の多いものが多く, Oxytocin は初めから規則的な子宮内圧の大きい, 収縮時間の比較的短かい子宮収縮がみられる. しかし Pg を 16.7/min とすると Alexandria unit でみた子宮活動は Pg も Oxytocin も ほゞ同様となる. (5) しかしながら子宮活動がこの様に高まり, 子宮内圧が高まつてきても, 子宮頚管の開大度や頚管の成熟度の改善率は Oxytocin と比較して Pg ははるかに劣つており, 子宮活動が高まつても分娩を積極的に進行させる効果は Oxytocin がすぐれているものと考えられた. (6) Pg の投与は子宮筋の Oxytocin に対する感受性を増加させ, Pg をあらかじめ投与することにより Oxytocin の priming effect を生ずることが in vivo, in vitro 両方の実験で判明した. (7) Pg の陣痛既発来例に対する陣痛促進効果は Oxytocin より劣つていた. (8) 児の Apgar 指数, 体重減少率, 母体の分娩時出血量は Pg, Oxytocin ほゞ同様である. 以上から, Pg は Oxytocin と比較して, 特にすぐれた陣痛誘発剤とはいえないが, Oxytocin 感受性の低い妊婦, 頚管未熟妊婦, 緩徐な陣痛発来を期待したい妊婦などにはその価値が認められる.