著者
久保 健太郎
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.759-762, 1968-07
著者
落合 東朔
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-9, 1970-01
被引用文献数
1

挿管法により家兎及びヒトの子宮収縮を記録し以下の成績を得た. 1) 家兎非妊: estrogen 投与時は去勢時に比し, 収縮の高さは著明に増大し持続時間も延長するが回数に差はない. progesterone 投与時は est. 投与時より高さの増大は少なく, 持続は短縮するが回数は著しく増加する. est.-prog. 投与時は prog. 投与時より高さは大きく持続も長いが回数は減少する. 2) 家兎妊娠: 妊娠10日は高さの小さな持続の短い頻回の収縮であるが, 妊娠20日には高さは増し持続も延長するが回数は減る. 妊娠30日は20日と比較し高さは変化しないが持続は長く回数は少ない. 妊娠30日の胎盤附着部と非附着部を比べると, 持続, 回数に差はないが, 高さは前者平均 (以下平均を略す) 1,9mmHgに対し後者 4.5mmHgであり附着部の収縮の抑制を認めた. 3) ヒト非妊: 月経時が最も大きく規則的な収縮で高さ 4.5mmHg, 持続23.2秒, 10分間の回数(以下回数と略す)は22.5回である. 増殖期になると, 中等大のやゝ不規則な収縮で高さ2.5mmHg, 持続17.9秒, 回数22.7回である. 分泌期は最も小さくさざ波様で高さ1.5mmHg, 持続16.0秒, 回数22.9回である. 閉経後の収縮は高さ1.3mmHg, 持続22.3秒, 回数16.0回であり, 閉経後の年数が長い程, 回数は減少し小さい. 4) ヒト妊娠初期: 分泌期の収縮に類似し, それより小さく高さ0.8mmHg, 持続16.8秒, 回数22.7回である. 5) ヒト分娩時: 分娩第1期は高さ37.9mmHg, 持続87.9秒, 回数3.8回であり, 分娩第2期は高さ57.1mmHg, 持続84.1秒, 回数5.5回である. 6) ヒト妊娠初期流産: 高さ3.5mmHgで, 進行流産が高さ4.7mmHgで最も大きく, 不全流産が1.8mmHgでこれにつぎ, 完全流産が1.4mmHgで最小である.
著者
鈴木 五六
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.24-32, 1967-01

胎児心音に関する今日までの研究は,いずれも単独記録であり,胎児心電図と同時記録によつて,その関連を検索した報告は甚だ少ない.これは胎児心電図との同時記録が技術的に困難なためでもあるが,著者は胎児心音,心電同時の写真記録により両者の相互関係を求め,これが臨床上いかなる意義を示すか検討した.すなわち妊娠,分娩時を通じI II時間は0.15~0.22秒,II I時間は0.15~0.31秒,QI時間0.02~0.06秒の範囲にあり,分娩時児心音数減少例でこの範囲を僅かに逸脱するものが数例みられた.II I/I IIは従来まで1.0~1.6を正常とし,それ以外の値をとると,出産時仮死が多いというが,必ずしも該当しないようである.むしろQII/√<RR>の値,I II時間の不整に臨床意義を認め,前者では0.33~0.39を正常,それ以外の値をとれば仮死児の出生の多くなること,後者では0.03秒以上の不整のとき分娩時胎児心音数減少の起りやすいことを認めた.胎児心音の波形ではI音に続く雑音,分裂,振幅不揃などの出現が,児の切迫仮死を示すものとして重視するものもあるが,今回の検索ではこれに反し,この種の成績に意義を見出せなかつた. 次に胎児心音の臨床応用として,母体に硫酸アトロピンを投与し,胎児心拍数の変動が起るまでの時間から胎盤機能の判定を行う方法が最近実施されている.これに代る安全な方法として2%塩化カルシウム20ccの静脈内注射によつても,この種の検査は実施出来ることを認めた.本検査法が果して胎盤機能を示すものか再検討した結果,本法により現われた胎児心拍数の変動は,母体に投与された薬物そのものの作用によるものでなく,母体心拍数の変動により二次的に影響されたものでないかとの成績を得た.したがつてHonらのいう重症妊娠中毒症,あるいは予定日超過例にみる胎盤機能不全例において,本検査成績の出現し難いということ,これにより胎盤機能が判定できるという説とは異つた成績となつたが,橋本らのいうような胎児機能,すなわち本法実施により胎児心拍数の著明な変動を来たした症例に仮死児が多いという成績に対しては,仮死が必ずしも多くみられなかつたが,分娩中胎児心音数の100以下減少例が多かつたという面で一致の成績を得た.
著者
木原 香織 平山 寿雄 広井 正彦
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.1025-1032, 1999-11-01
参考文献数
14

ハムスター卵という異種の雌性配偶子を用いて,卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection;ICSI)を施行することで,人為的配偶子操作が精子染色体に及ぼす影響の検討,並びに重度男性不妊症における精子染色体の解析を,本学の倫理規定にのっとり,精子提供並びに染色体分析の承諾を得た後,行った.ICSI法とSPA(sperm penetration assay)法を用いた正常男性における精子染色体の異常発現率を検討すると,ICSI法において染色体異常は6.7%,SPA法においては6.9%と差を認めなかった.Percoll法,swim up法といった精子調整法の精子染色体への影響を検討すると,Percoll使用群においては,ICSI法では6.9%,SPA法では6.3%に染色体異常が観察されたのに対し,swim up群においては,それぞれ8.3%,6.7%で,精子調整法の違いによる精子染色体異常の発生率に有意な差は認められなかった.精子前培養法のTEST-yolk buffer(TYB)による保存時間が精子染色体に及ぼす影響を検討すると,ICSI法,SPA法とも24&sim;35時間に対し,60&sim;72時間の保存では有意に染色体の構造的異常の増加が認められ,TYBにての低温長期保存においては,慎重な配慮が必要であると考えられた.男性不妊症患者12名において,精子濃度と精子染色体異常との関係をみると,精子濃度10&sim;20×10^6/ml,1&sim;10×10^6/ml,0&sim;1×10^6/mlの3群における染色体異常の発生率はそれぞれ9.5%,7.9%,10.7%で有意な差は認められず,運動,形態とも正常な精子を選択使用する限りにおいては,受精した精子には数的,構造的染色体異常は正常群と比較して差がなく,ICSI法により受精が可能となった場合,正常妊娠に導く可能性が十分にあることが示唆された.
著者
林 俊郎
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.211-220, 1970-03

妊娠ラット子宮筋の活動を, in situで筋電図学的に研究した.そして得られた筋電図のpatternについて, 周期的に発生する活動電位群の間隔, 活動電位群の放電持続, 群中棘波の発生頻度, 棘波の伝播範囲, 振幅及び速度を示標とし, 妊娠に伴う子宮筋の興奮性変化を見た.その結果, 妊娠中期, 妊娠末期を比較すると, 子宮筋の興奮性は妊娠の経過と共に漸増するのが見られる.妊娠末期では小切開を加えただけでも著しく収縮活動が亢進し, 分娩を誘発完了する.これは最下部胎嚢の内圧の変化, 切開部周囲の筋線維の伸展性が変化することによると思われ, 分娩の発来機序について示唆を与えるものである.非胎盤附着部, 胎盤附着部における活動電位の発生様式を妊娠経過に従つて, その差異を検討したところ, 胎盤附着部における興奮伝播性は非胎盤附着部に比し, 多少抑制されているようにみえるが, その他の興奮性を示す要素には相違は認められず, 胎盤による局所抑制作用を過大に評価することは難しいと結論せざるを得なかつた.estradiolを与えた家兎卵管については, その基本的収縮様式は, 卵管采部, 膨大部では弱い蠕動性収縮が頻回に現われ, 次々子宮側に伝播することが多く, 時にゆり返す様に逆伝播が起こる.しかし狭部に到ると弱い蠕動性収縮の中にtetanicな強い収縮を混じ, 子宮側に移行すれば次第に増強する.卵管子宮移行部では興奮の伝播に関して特別な障碍, 又は抑制はなく, 一方に発生した興奮は殆んど常に他方に伝播し得る.その方向は正逆いずれの場合でも起こり得るが, 本実験条件下では正伝導が多かつた.
著者
小林 博
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.521-530, 1968-05

生体にstressが加わるとcatecholamines〔(以下CAと略), adrenaline (以下Aと略), noradrenaline (以下NAと略), dopamine (以下DAと略) の総称で特にA, NAを指す〕が増量することは基礎的並びに臨床的な実験によって確かめられている. Selyeのstress学説による適応ホルモンの概念の導入によりCannonのemergency reaction と stressとの関連が問題とされて来たが, Selye自身も強調している如く, 適応ホルモンの機転が唯一の非特異的防禦手段ではなく, 自律神経系も又重要な役割を演じていることは疑いがない. 妊娠という試練を母体はどう受け止めるか. 妊娠中毒症はこの様な負荷に対する異常反応に基づく生体のbalanceの破綻 (換言すれば適合不全) によって起ると解されないだろうか. 著者はこの様な観点から自律神経系のneurotransmitterであり昇圧物質でもあるCAの妊娠中毒症における動態について検討を加えた. 尚測定に当っては尿中CAの測定に際し問題となっていたDOPAを除去する為, イオン交換樹脂Duolite C-25を使用した. その概要は以下の如くである. 1) 妊娠後半期になるとNAの平均値は上昇し, 高値を示すものもあり, かつバラツキも著明となり自律神経系の不安定性が示唆された. 2) 妊娠中毒症では毎日連続的に測定すると, NA値は必ずし.も血圧の動きとは関係なく, 周期的な波状の変動を示した. 全平均値は妊娠末期と差がない. この事から血圧上昇には血管のNAに対する感受性の光進も又重要な因子となることが推測される. 3) 分娩子癇の患者では子癇発作後 pheochromocytoma に於てのみみられる様な, 正常人の約30倍にも達するNAがspike状に放出され, 一たん減少後, 再び一見rebound的に上昇している. これは子癇独自の現象で, その意味ずけはいまだ困難である. 4) 尿中CA値と血圧とは相関関係が明らかでなく, CAが一次的に昇圧機序レこ関与するとしても, 二次的には, 他の昇圧機構ないし血圧維持機構が作働することが推測される. すなわちCAが妊娠中毒症の一元的な原因とはいえないが, 交感神経系が妊娠中毒症発症に関与していることは充分考えられる.
著者
小泉,佳男
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, 1999-02-01

女性性器の単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)又は2型(HSV-2)の初感染における血清抗体(IgM, IgG)の推移をELISAを用いて検討した. HSV感染初期におけるIgM抗体の陽性率は第5〜7病日でHSV-1は53.3%, HSV-2は28.6%, 第11〜15病日ではHSV-1, HSV-2ともに100%であり診断的意義は高いと思われた. IgM抗体価の平均的な推移はHSV-1, HSV-2感染ともに2〜3週をピークとして徐々に低下したが症例ごとにみるとIgM抗体価の推移が三つのパターンに分けられることが判った. つまり2〜3週をピークとして低下する群, ピーク以降も低下しないで8前後の1%値を続ける群, 抗体価は上昇しないで2前後の低い値のまま持続する群の3群である. IgM抗体が8前後の高値のまま持続する群は, HSV-1感染例に比べてHSV-2感染例の方が有意に多かった. IgG抗体の陽性率は第5〜7病日ではHSV-1感染例とHSV-2感染例でそれぞれ13.3%と0%, 第11〜15病日でそれぞれ93.3%と62.5%となりHSV-2の方が陽転率が低かったが有意差はなかった. IgG抗体はIgM抗体よりも出現はやや遅れ, IgM抗体にはやや劣るものの診断的価値はあると思われた. IgG抗体はHSV-1, HSV-2ともに3週頃まで上昇したが, 抗体価は低く3カ月目まで臨床的にヘルペス既往のない妊婦や再発を繰り返す性器ヘルペス患者よりも遥かに低い値で推移した.