著者
寺田 和弘
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.122-128, 2016

大阪府は森林面積5万6千ha,林野率は31%と,いずれも全国で最下位となっている。大阪平野部を取り囲むように位置する山地は現在では豊かな森林に覆われているが,かつては,府民や都市部の生活を支えるため,森林の木々が農耕用や薪,柴,炭などの燃料として利用され,過剰に伐採された結果,木のない荒廃した山が広くみられた。大阪府南部の泉南地域(現在の泉南市・阪南市・岬町)は,かつて荒廃した,はげ山が広範囲に存在した。こうした山々では表土が流出していたため,森林の自然回復が望めず,大雨が降ると崩壊や土砂流出が度々発生していた。また,崩壊により谷に溜まった土砂は度々,土石流となって渓流を下り,道路の損壊や,集落や田畑に土砂が流れ込むなどの被害を引き起こした。こうした災害を防ぐため,この地域では昭和の初期から治山事業による森林基盤の造成事業が続けられてきた。当時の作業は,人力によるもので,ツルハシ等で斜面に階段切付を行い,石筋工等を設置し,その段上にマツ等の苗木を植える植栽工,崩れた斜面を安定させる山腹工,渓流に堆積した土砂を固定する小規模な治山堰堤が主な工種となっていた。このような対策がとられてきたが,森林機能が完全に回復する状況には至らなかった。そのような状況の中,昭和27年7月11日未明,阪南市の山間部にある鳥取池が決壊する大規模な災害が発生した。府では,この鳥取池の災害の翌年の昭和28年度から治山事業による本格的なはげ山復旧に着手した。はげ山復旧事業は昭和38年度までの11年間にわたり実施され,積苗工・石筋工による筋工18万8千m等により山腹からの土砂の流出を抑えるとともに植栽261haが実施された。また,谷部には玉石コンクリート等の治山ダム45基を設置して,谷に堆積した土砂を固定するとともに,山脚を固定した。事業実施から50年の歳月が流れ,泉南地域で裸地化した山は見られなり,現在では,広葉樹を主体とした豊かな森林が広がっている。はげ山復旧事業以降も,荒廃した渓流には治山ダム等が設置され,泉南地域では近年,大規模な災害は発生していない。今回の「後世に伝えるべき治山~よみがえる緑~60選」の候補地選定にあたり,大阪府庁に断片的に残されていた過去の災害や治山事業等の記録を調べると,過去の災害の履歴や,治山事業の実施状況,山地における森林の変遷から,治山事業による森林造成事業は,山地災害防止をはじめとする森林の持つ公益的機能の向上に大きな役割を果たしてきたことが見て取れる。これらの成果は,特別な取り組みからではなく,治山技術者が日々取り組んでいる通常の治山事業の積み重ねから生まれたものである。治山事業の資料は通常,保存期間が過ぎると破棄され消滅することとなるが,治山事業を実施するだけでなく,その記録を整理し残すことで後世に現在の治山事業の果たしている役割を伝えられるよう取り組んでいくことが重要と考える。
著者
森 文一
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.44-52, 1959 (Released:2016-05-23)
著者
菅原 正巳
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.92, pp.47-59, 1973 (Released:2011-03-05)
著者
土屋 信行
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
no.330, pp.57-72, 2013-04

治水対策は国が国民に対して備えなければならない必須の最重要施策である。これは国の責任において国民の命と資産を守る安全保障と捉えるべきである。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告によれば,気候システムの温暖化には疑う余地がなく,大気や海洋の全球平均温度の上昇,雪氷の広範囲にわたる融解,世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である。このことにより干ばつ,熱波,洪水など極端な気象現象のリスクの増加,水災害の危険性も増大している。台風の大型化,降雨強度の増大などによりこれまで100~200年確率を目指してきた河川でも実際には既に,治水安全度は著しく減じていると言える。さらに,地球温暖化というさらなるリスクの増大を捉えたとき,これまでの計画高水流量という指標に対し行ってきた水災害対策を,超過洪水をも視野に入れて検討する事が求められている。このような状況から超過洪水はもはや起こることが確実であり,これに備えることは予断を許さないところまで来ていると考える。首都圏のように中枢機能が集積している地域では,国家機能の麻療を回避するため,被害の最小化を目指すことが必要である。
著者
松浦 茂樹
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.158, pp.9-27, 1984 (Released:2011-03-05)
著者
田中 茂
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.251, pp.60-75, 2000 (Released:2011-03-05)
著者
北川 善廣 山口 浩三 吉武 成寛
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.68-98, 2011

世田谷区は下水道暗渠化された目黒川水系と呑川水系の5つの緑道を環境空間に組み入れ、ふれあいの場、憩いの場などの河川環境整備に向けた調査研究を行っている。本文では、世田谷区内にある多摩川水系の丸子川、谷戸川および谷沢川、下水道暗渠化された目黒川水系と呑川水系の5つの緑道、さらにその緑道に再生された2つのせせらぎ水路を対象として・利用状況と住民の意識・せせらぎ再生に適した緑道と水源となる緑地等の分布・既に再生された水路の利用状況と問題点などについてアンケート調査と現状調査を行い、その結果に基づいて、世田谷区の河川環境整備の方向性を示すことにする。
著者
北川 善廣 山口 浩三 吉武 成寛
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.318, pp.68-98, 2011 (Released:2012-12-03)
著者
垰田 宏
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.259, pp.34-70, 2001 (Released:2011-03-05)
著者
古田 良一
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.44, pp.41-46, 1965 (Released:2016-07-05)
著者
守田 康太郎
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.22, pp.134-146, 1961 (Released:2016-05-23)
著者
村上 卓也
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
no.353, pp.105-125, 2017-02

平成23(2011)年3月11日,午後2時46分頃,三陸沖を震源とする我が国災害史上最大級Mw(モーメントマグニチュード)9.0の巨大地震が発生した。余震を含め震源域は,三陸沖から茨城沖にかけて全長約450km,幅約150kmの範囲に集中し,この地震で発生した断層面のすべり量は最大20m以上と,かつて経験したことのない大規模な地殻変動を伴うものであった。この地震に伴い,大規模な津波が発生し,震源に近い東北地方太平洋沿岸部では巨大津波が甚大な被害をもたらした。仙台湾沿岸では,集落を中心に仙台塩竃港・仙台空港・仙台東部道路及び県・市道,工業地帯,農地等が壊滅的な被害を受けたほか,海岸保全区域の防潮堤はほぼ全壊・消失,海岸防災林もその多くが消失するなどの甚大な被害を受けた。海岸防災林は,潮害の防備,飛砂・風害の防備等の災害防止機能を有している。また,農地や集落を守るなど生活環境の保全に重要な役割を果たしており,津波に対しては,津波エネルギーの減衰効果,漂流物の捕捉効果及び内陸部への津波到達時間の遅延効果を有し,その早期復旧が求められている。仙台湾地区の海岸防災林の復旧については,国直轄事業による民有保安林の復旧要望を宮城県知事から受け,民有林直轄治山事業により林野庁が国有林と一体的に直接,その復旧を進めており,他所管事業と施工時期等について調整を図りながら,林帯地盤の復旧が完了した箇所から順次,植栽を実施し,平成23(2011)年から概ね10ヶ年での完了を目指しているところである。
著者
和田 一範
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.100-120, 2018

<p>防災の基本は,自助・共助・公助である。自助・共助・公助を語るにあたっては,自助・共助と,公助との連携を考えることが重要である。 自助・共助は,災害に際して,単に避難をするだけではない。また,これを支援する公助も,単に公的な支援の拡充という視点で展開するのではなく,自助・共助側からの発信を受けて,これに応える形で施策を展開してゆく,真の協働のパートナーとしてとらえてゆくことが重要である。 自助・共助側からの自主的な取り組みにこそ,大きな意味と効果がある。公助の推進にあたっては,自助・共助から発信する必要性に基づく,公的な支援,公助の展開をシステム化する。 自助・共助と,公助との連携を社会システム化し,継承してゆくことが重要である。 上杉鷹山の三助,武田信玄の竜王河原宿,信玄堤の神輿練り御幸祭と三社御幸の故事から,これらの教訓をひもとき,つないでゆくことの重要性を再認識する。</p>
著者
山崎 不二夫
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
no.126, pp.1-20, 1979 (Released:2011-03-05)