著者
許 經明
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.167-192, 2017

<p>本研究では、携帯電話産業において、コア部品サプライヤーの知識を中心とするブランド企業と生産受託企業の製品開発分業という企業間分業を分析した。本研究の定量分析の結果によると、生産受託企業がコア部品サプライヤーのツール・キットを活用することと、コア部品サプライヤーと技術コミュニケーションを行うことが、ブランド企業との製品開発分業における意思決定権限に正の影響を与えることが明らかになった。このようなトライアドの企業間分業においては、企業 (プリンシパル) と協業相手 (エージェント) の分業における意思決定の権限の割り当ては、企業 (プリンシパル) と協業相手 (エージェント) のどちらが相手企業よりどれほど第三者の知識を「獲得」するかによって決まることになると考えられる。</p>
著者
柴田 友厚 馬場 靖憲 鈴木 潤
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.213-232, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
28

企業が持続的に成長するには、現在の事業領域と技術領域を超えた新たな領域での探索が有効な方策のひとつである。先行研究は、近傍領域の探索に傾斜しがちな企業の特性を指摘すると同時に、探索活動を類型化した上でそれぞれの効果を明らかにしてきた。本稿は、先行研究が注意を払ってこなかった探索をすすめるプロセスに着目し、その解明に貢献することを目的とする。まず、探索の階層性という新たな概念を提示したうえで、富士フイルムとコダックの探索戦略の違いを明らかにする。そして両社の盛衰が分かれた理由を、探索の階層性に立脚して探索プロセスの違いから考察する。
著者
長谷川 曉司
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.10, no.9, pp.661-674, 2011-09-25 (Released:2017-10-10)
参考文献数
1

近年、特許の重要性が高まっているが、特許戦略のイメージは未だ確立されていない。今までの日本では特許は守りのイメージで考えられていたが、今後は攻めのイメージで特許を捉える必要がある。そのためには全社的に特許戦略を考えていくことが重要であると言える。特許戦略を考える際には、事業部門、研究部門、特許部門で特許を取得する目的を明確にし、競合他社が模倣することができない範囲を検討する必要がある。このように特許戦略を考えることが他社の参入を極力排除し事業の収益に大きな影響を与えるのである。
著者
許 經明
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.167-192, 2017-08-25 (Released:2017-08-25)
参考文献数
88

本研究では、携帯電話産業において、コア部品サプライヤーの知識を中心とするブランド企業と生産受託企業の製品開発分業という企業間分業を分析した。本研究の定量分析の結果によると、生産受託企業がコア部品サプライヤーのツール・キットを活用することと、コア部品サプライヤーと技術コミュニケーションを行うことが、ブランド企業との製品開発分業における意思決定権限に正の影響を与えることが明らかになった。このようなトライアドの企業間分業においては、企業 (プリンシパル) と協業相手 (エージェント) の分業における意思決定の権限の割り当ては、企業 (プリンシパル) と協業相手 (エージェント) のどちらが相手企業よりどれほど第三者の知識を「獲得」するかによって決まることになると考えられる。
著者
會澤 綾子
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.193-204, 2017-08-25 (Released:2017-08-25)
参考文献数
23

Weick (1987) は、高信頼性組織を支える三つの要因 (1) 必要多様性、(2) 信頼性の特徴、(3) イナクトメントについて論じている。複雑なシステムへの対応には限界があるという前提に立ちながらも、個人や組織によって打ち勝つ可能性や、物語を通じた組織文化の重要性を提言するものである。全体を通じて多様性について繰り返し語っていることにも特徴がある。高信頼性組織の研究では、のちにWeick, Sutcliffe, and Obstfeld (1999) やWeick and Sutcliffe (2001) によってフレームワークが構築され、マインドフルネスという概念が提示されるが、Weick (1987) で提唱される多様性はこのマインドフルネスを読み解くキーワードにもつながると考えられる。
著者
大槻 智洋
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0160624a, (Released:2017-07-10)

シャープがついにフォックスコン (Foxconn、鴻海) 社から巨額投資を受けることになった。飲み込まれる恐怖は尽きないが、フォックスコン社にも投資をしなければならない理由がある。互いの背景を知り、未来志向で手を取り合えば、両社は民生機器産業に新たな成長モデルを提示できるはずである。カリスマCEO の郭台銘氏の背景を推察する。さらにEMS/ODM 企業のビジネスモデルや、それを支える台湾の社会情勢、あるべき民生企業の経営方針にも言及する。
著者
秋元 創太 三富 悠紀 井上 剛
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.23-34, 2017-02-17 (Released:2017-02-25)
参考文献数
13

ユーザーイノベーションに関連する研究は、非常に多岐な分野へと広がっている。それに伴って、ユーザーイノベーションを起こせるような先駆的な顧客、所謂リードユーザーの特定が着目されている。本稿では、①はじめてリードユーザーを特定し、②特定したリードユーザーが考案した製品コンセプトを評価するプロセスを構築し、第三者から高い評価を得ることの二つの貢献をした Urban and von Hippel (1988) の解説と評論を試みる。その上で後続の研究を確認し、リードユーザーによって生み出された製品コンセプトが本当に優れているのかについて疑問を提示していく。
著者
牧田 幸弘
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.37-40, 2016-01-25 (Released:2017-01-25)

日本ビジネスシステムズ株式会社 (JBS) の虎ノ門ヒルズオフィスは、「社員の発想力、実行力、情報発信力、共鳴力を最大限に引き出し、変革を実現する新オフィス」として、第28回日経ニューオフィス賞のニューオフィス推進賞/クリエイティブ・オフィス賞を受賞した。JBS虎ノ門ヒルズオフィスは、オフィスワーカーが快適で精神的にゆとりを感じ、感性を刺激し、創造性を高める働き方を誘発する場となっていること、コンピュータネットワークなどの情報通信技術 (ICT) を活用した新しいワークスタイルとマネジメントを積極的に推進する知的生産の場となっている。また、JBSでは、フリーアドレス導入により生じる社員の所在確認などの問題を、自社でアプリを開発して解決している。本稿では、クリエイティブ・オフィス賞の受賞企業のオフィスの取組をICT活用による事例を交えて紹介する。
著者
徐 寧教 大木 清弘
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-20, 2016-01-25 (Released:2017-01-25)
参考文献数
55

本稿は新興国企業の日本的生産システムへの認識が、新興国企業の能力構築にどのような影響を与えるかを明らかにした研究である。現代自動車は、日本的生産システムを能力構築の「全面的な目標」と認識してその全面的な導入を目指すも、それを完全には達成できなかった。しかし目標を達成できなかったことが、彼ら独自の生産システムの構築を国内外で促していた。ここから、(1) 日本的生産システムが「全面的な目標」として認識されることが、新興国企業の国内外の能力構築を促すという日本的生産システムの新たな波及効果と、(2) 先進国企業の技術・知識・マネジメントが新興国企業の海外進出をサポートする役割を持つことを議論した。
著者
岸本 千佳司
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.527-600, 2015-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
74
被引用文献数
1

本研究の課題は、台湾ファウンドリ企業 (主にTSMC、一部UMCを念頭に置く) の技術能力、具体的には、①柔軟・高効率の生産システムの構築、および②プロセス (関連) 技術の開発について、筆者自身の面談記録や『公司年報』のような原資料を活用し、その詳細に踏み込むことである。既存研究では、1990年代以降、台湾ファウンドリ (特にTSMC) が先発企業との技術ギャップを急速に埋めていったのは、半導体製造装置の大モジュール化・標準化が進んだことを背景に、こうした歩留まりが高く加工時間が短い最先端装置を積極的に導入したことによるところが多く、しかも、その資金的負担は台湾の投資優遇制度によりかなりの程度軽減されたということが指摘されている。本研究は、それを重要な要因と認めつつも、その後の台湾ファウンドリ (特にTSMC) の持続的発展については、技術能力構築の独自の取り組みがあったことを明らかにする。すなわち、プラットフォーム戦略による多品種少量生産への対応、工場の自動化・ICT管理の活用、その前提の装置・ツール等の標準化推進、日常的な改善、経験・ノウハウの全社的共有の仕組み、研究開発と量産部門の連携による迅速なプロセス量産立ち上げなどである。また、プロセス関連技術でも、先端ロジックの1–3年ごとの世代交代実現、システムLSI向けのロジック以外の特殊プロセス拡充、近年の後工程・実装分野への進出と先端トランジスタ研究の実施などがある。しかもこれらの取り組みが、専業ファウンドリというビジネスモデルの要請に沿って、技術的潮流の変化を踏まえつつ、高度化する顧客ニーズに的確・十全に応える製造サービス業としての姿勢を堅持して進められてきたことを明らかにする。なお、技術能力の分析に際しては、藤本 (2003)『能力構築競争』の枠組みを参考にしそれを簡略化した形で、「表層の優位性」(生産性・品質・コスト管理や技術開発力、オペレーション能力のレベルの高さを反映すると思われる表面に表れた事象) と「優位性の土台」(表層の優位性の背後でそれを支える活動や仕組み、それに影響する事業戦略やビジネスモデル) の2層から整理した。
著者
山城 慶晃
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.77-88, 2015-02-25 (Released:2016-02-25)
参考文献数
15

This article reviews Albert and Whetten (1985) which was the start of research of organizational identity in business administration. The general images of identity had been a) only one, b) unique, and c) unchangeable. In contrast, Albert and Whetten (1985) argued that organizational identity are a′) stated and single-or-multiple, b′) compatible and self-classified, and c′) changeable, which they expanded the previous interpretation of identity and made it applicable more broadly. However, the following researches cited the three criteria of organizational identity in Albert and Whetten (1985) with three simple words as central, distinctive and enduring, which made the original meanings of what it referred to dragged into vague words. Indeed, there are some researches which misunderstand Albert and Whetten (1985) such as Ashforth and Mael (1989). In order to make sure what the three criteria of organizational identity are this paper explains each criterion of organizational identity using the examples from Albert and Whetten (1985).
著者
岩尾 俊兵
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.67-76, 2015-02-25 (Released:2016-02-25)
参考文献数
4

This technical note introduces and expounds routine dynamics, the research field that are getting widespread attention in management science. It is found that there are some key points in routine dynamics. Routine dynamics sees change of organizational routine (OR) as an ordinal thing based on the observations of university-related organizations. For this kind of change, organizational agents have important effects. Agents refer ostensive aspect of OR as a rule, but improvise concrete actions depending on the situations. After that, interactions among agents select and retain new ORs. Organizations change in this way from the routine dynamics viewpoint. Routine dynamics is a fruitful view, but some unsolved questions also exist.