著者
牧野 司
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0170222a, (Released:2017-06-20)

人工知能、生命工学、製造技術などのテクノロジが、現在の延長線上では考えられないようなスピードで進化を始める時点を「技術的特異点 (テクノロジカル・シンギュラリティ) と呼ぶ。シンギュラリティに到達すると、あらゆる社会生活およびビジネスに大きな変化が生じると考えられている。「人工知能が人類を滅ぼしてしまうのではないか」という懸念がある一方、「幾何級数的に進化するテクノロジにより、世界の抱えている課題はそのほとんどが解決可能である」という明るい未来予測もある。「テクノロジカル・シンギュラリティ」という言葉を初めて提唱した未来学者レイ・カーツワイル氏は後者の考えで、カリフォルニアのシリコンバレーに「シンギュラリティ大学」を創設した。世界中から優秀な頭脳を集めて世界の問題解決に挑むと同時に「エグゼクティブ・プログラム」などを通じてその考えを全世界に広めようとしている。本講演では、講師が本年7月に米国シンギュラリティ大学・エグゼクティブ・プログラムで学んできた内容をベースに未来はどうなるのか、私たちは何をすべきか等について述べていく。
著者
岸本 千佳司
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1-2, pp.1-42, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
53

スタートアップ支援の仕組みとしてのアクセラレータは、米国で2005年に創設されたY Combinatorに始まり世界中に広まった。本研究で取り上げる「AppWorks (之初創投)」は、2009年設立で台湾最初期の民間アクセラレータであり、卒業生起業家等によって構成されるコミュニティの規模ではアジア最大級とされる。AppWorksの特徴は、明確な戦略性にある。ビジネス領域ではインターネット産業 (広義にはデジタルエコノミー)、目指すべき市場としては大東南アジア圏 (ASEAN+台湾、香港) にフォーカスする。また、独自のベンチャーキャピタル・ファンドの運営も行い、アクセラレータ卒業生および他の有望なスタートアップに投資している。これを通して、相互扶助と「恩送り」のカルチャーを持つスタートアップ・コミュニティの構築を進め、台湾の電子ハードウェア産業に偏った経済成長モデルの転換を促そうと志してきた。本研究の目的は、アクセラレータも企業と同様、戦略的な経営を行うことで優れたパフォーマンスとユニークな存在感を示すことが出来ることを、AppWorksの事例分析を通して示すことである。AppWorksの「戦略ストーリー」を描くことで、戦略としての一貫性や独自性を検討する。
著者
柴田 健一 立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0160726a, (Released:2017-05-17)
参考文献数
65

本稿では競争ダイナミクスの主な先行研究のレビューを実施した。競争ダイナミクスは、企業の競争行動が競合企業のどのような反応を引き出し、それがどうパフォーマンスにつながるのかを実証的に研究する領域である。競争ダイナミクスの歴史はまだ浅いが、近年は多くの研究成果が発表されている。本稿では、競争ダイナミクスの研究の中から主要な論文を抽出し、そこで用いられている具体的な説明変数、被説明変数を整理し、競争ダイナミクスの研究領域を明確にすると同時に、現時点での当該分野における研究の成果について詳しく議論していく。
著者
高橋 伸夫
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.245-270, 2011

<p>『赤門マネジメント・レビュー』創刊10周年記念「トップダウンロード賞」(有料論文部門)をいただいた拙稿「英文論文のススメ」にまつわる下積み時代のエピソードから始まる連載の第1回。ウェーバーの「鉄の檻」が実はパーソンズの誤英訳で、本当は「殻」の意味だったことを知り、そのイメージが自分の下積み時代の記憶と重なって想像力をかきたてられ、「殻」概念を企業経営の視角として敷衍してみようと企図するまでを描く。</p>
著者
柳 淳也 川村 尚也 山田 仁一郎
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.165-192, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
107

1990年代以降、イギリスを中心にクリティカル・マネジメント研究 (Critical Management Studies:CMS) が興隆しているが、難解な理論的研究が多く対象も広範囲にわたり、日本の経営学分野では広く知られているとは言い難い。そのため本研究ではCMS とは何か、何が「クリティカル」なのか、どういった経緯で誕生したのか、さらに、どういった対象領域で研究が盛んであるかを明らかにするために系統的レビューを行った。その結果、1) 批判理論から発展したCMS は、現在では多様な理論的背景をもち、人種、環境、セクシュアリティ、ジェンダーといった様々な視座に依拠した研究がなされていること、および、2) CMS を特徴づけるものとして、非自然化・再帰性・(非) パフォーマンス志向が挙げられ、近年、パフォーマンス志向についての議論から発展した批判的行為遂行性に関する研究が多くみられること、などが明らかとなった。
著者
藤本 隆宏 前川 諒樹 岩尾 俊兵
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0180315a, (Released:2019-02-15)
参考文献数
36

本稿は、産業競争力の概念を明らかにした上で、生存時間解析のシミュレーションによって、産業競争力の類型と発現過程に関する洞察を得ることを目的とする。ここで競争力とは「選ばれる力」と定義され、「収益力」「表の競争力」「裏の競争力」という多層的な競争力の構造が示される。次に、広義のものづくり論にもとづき、「産業」を同類の設計の製品の集合体、あるいはそれを生産する現場の集合体と規定する。以上の概念規定をおこなった上で、国内・国際競争の軸と競争強度の軸による四つの競争状況についての予想を示し、シミュレーション・モデルによって四つの状況における一定期間競争後の予想生産性分布が再現できることを確認した。さらに、競争強度と現場生存率との間に累積指数分布に近い関係が観察された。また、国際競争における2国の賃金率と現場生存率との関係を調べ、リカード的コスト競争において平均すれば比較劣位な国の現場も「緩やかな競争」では生存可能性が高まるという「越境」現象を確認した。
著者
高橋 伸夫
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.139-157, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
37

本稿は、日本企業X 社を対象に、2004 年度から2015 年度までの12 年間に行われた年に一度の質問調査票を使った全数調査データに基づいている。因果関係は、組織が大きく揺れ、多くの変数が変動する場合にのみ現れるが、長期的定点観測により、見通し指標が職務満足と相関し、時系列で連動していることがわかった。他方、自己決定と職務満足の相関は疑似相関であり、時系列でも連動していなかった。また、社長が事業所を訪問し、従業員と対話の機会を設けたことで見通し指数は向上したが、社長が交代して事業所訪問をやめた途端、見通し指数が低下したことも確認できた。さらに、勤続年数に関係なく、比較的低い見通し指数の人が集まる世代が発見され、コーホート効果も確認されている。
著者
吉田 暁生
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.381-392, 2006-05-25 (Released:2018-03-11)
参考文献数
18

口コミの影響力を考えるにあたって、ランダムサンプリングによる質問紙調査を実施し、新たな知人の定義のもとに電話帳法による知人数推定をおこなったところ、先行研究のインターネット調査との異同がみられた。日本人の「連絡の取れる人」の数の平均は129.9人だったが、インターネット利用者のほうがその人数は多かった。
著者
原 寛和 立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0170327a, (Released:2018-04-19)
参考文献数
85
被引用文献数
3

製品デザインが市場成果に与える影響について、(i)企業レベル(ii)製品レベル(iii)デザイン組織レベルに分類して実証研究のレビューを行なった。いずれの研究も、製品デザインが市場成果にプラスの影響を与えることを支持している。ただし、そのメカニズムは単純ではなく、変数間の媒介効果や交互作用効果を多く含んでいる。これら既存研究のレビューを踏まえ、今後の研究として、(1)戦略的文脈の影響を考慮した研究 (2)消費者の反応を取り込んだデザインプロセスの研究 (3)デザインマネジメントの組織メカニズムの研究が必要であることを報告する。
著者
戸澤 真理
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.173-206, 2012-03-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
35

本論文は、イノベーションを機に現れる新規参入企業の戦略について、企業が新技術をどのように評価するかに焦点をあて、戦略決定とその成敗に影響を及ぼす要因を検討する。ディスカッションの中では本事例とChristensen and Bower (1996) の事例を比較し、彼らの議論の精緻化と新規参入企業の採る戦略について示唆を与えている。
著者
菊地 宏樹 湯 哲海
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.547-564, 2016-11-25 (Released:2017-02-25)
参考文献数
25

Bijker (1995a) では、まずオランダの洪水や堤防を巡る問題を唯物論的モデル・認知論的モデル・社会的形成モデルから説明している。そのうえで、社会的形成モデルの不十分な点を指摘し、より精緻なアプローチとして三つのフレームワーク (システムズアプローチ・アクターネットワーク理論・技術の社会的構成) を提示している。これらを用いて、オランダのデルタプランという大規模な堤防工事の事例分析を行った、というのがこの論文の大まかな内容である。この論文中で技術の社会的構成アプローチ (SCOT) はシステムズアプローチ、アクターネットワーク理論とともに、社会技術アンサンブルという、技術・社会などの異質な要素が密接に結びついたものを分析対象とするアプローチとされている。提唱された当初のSCOTは、社会技術アンサンブル的なものを分析対象としていたわけではなく、様々な批判を受けて、フレームワークをアップデートし、およそ10年の歳月をかけてこのパースペクティブに至った。近年、経営学ではSCOTのアプローチが新しい分析ツールとして紹介されるが、これまでの経営学の研究を見ると社会技術アンサンブル的な観点はむしろ普通に利用されており、SCOTというアプローチは社会技術アンサンブルに至る過渡期的なものであったのではないかと考えられる。それゆえ、まだ理論発展の余地はあり、Bijkerによるフレームワークのアップデートの結果として出てきた技術フレームに列挙されている要素の強弱や関係などを解き明かすといった方向性が考えられる。
著者
河野 英子
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.14, no.8, pp.413-432, 2015-08-25 (Released:2016-08-25)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究は、つながりという視点をもとに、多角化事業において競争優位を構築したプロセスについて明らかにするものである。自動車用ねじから医療機器への多角化成功例となった東海部品工業の事例を取り上げ、そのプロセスを分析した。そこでは、基層的な能力を土台に、弱いつながりの広範囲な形成とその強化のもとで能力を高め、医療機器で成功するために乗り越えるべき三つの壁―技術、規制、市場―を段階的に乗り越えることが可能となったという発見事実を論じていく。
著者
三富 悠紀 秋池 篤
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.5-20, 2018

<p>消費者は時間圧力を感じた時に、時間圧力を感じていない時とは異なる行動をとることがこれまで指摘されてきた。しかしながら、先行研究では外在的に与えられる時間制約と消費者自身が内在的に感じる時間圧力について区別する必要性が指摘されているものの両者を同時にとらえようとした定量的な分析は不足している。本稿ではこの点に着目し、時間制約の有無と時間制約の強さを操作した上で、消費者に電気ケトルの品質を評価してもらい、時間圧力を測定した。測定結果を分析した結果、時間制約は消費者の品質評価に直接影響は与えておらず、時間圧力を介して間接的に影響を与えていることが明らかとなった。本結果より、消費者自身が内在的に感じる時間圧力を重視した分析をする必要性が示される。</p>
著者
水野 誠 生稲 史彦
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.441-462, 2011-10-26 (Released:2017-10-10)
参考文献数
12

世界的に有名なクリエイティブ・エージェンシーであるワイデン・ケネディの東京オフィスで5人のクリエイターとプランナーにインタビューを行い、彼らの仕事のスタイルや消費者インサイトを獲得する方法について聴いた。その結果は、社内における異質性を前提としたコラボレーション、消費者理解のための現場の取材や観察、それに基づくメンタル・シミュレーション、社外の人々との公的・私的なネットワーキング活動が重要であることを示している。