著者
中川 正俊 荒木 乳根子 平 啓子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.51-67, 2007-03-17

大学生の年代は多様な精神保健上の問題が発生するため,一次および2次予防を中心とした大学精神保健対策は,学業の円滑な遂行を支援する上でも重要な課題となっている。そのためには,精神保健上の問題を有するか,または将来発生する可能性が高い学生を早期に把握し,精神保健の専門的サポートを行うことが重要である。またその際に,サポートの対象となる学生を的確に把握する方法として,高い感度と特異度を有するスクリーニング基準の確立が求められている。本論では,本学人間福祉学部への2002年度入学者231名を対象に実施したUPI(大学精神健康調査)の結果と,その後の精神保健上の問題発生ならびに学業遂行状況との関連性を検討した。その結果,心理的問題で学生相談室を利用した者や精神疾患を持つ者は,そうでない者と比較してUPIの得点が高く,また学業の遂行に問題があった者も,そうでない者と比較してUPIの得点が高い傾向が明らかとなった。
著者
藤森 智子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

台湾は1895年からの50年間、朝鮮は1910年からの35年間、日本の統治下に置かれた。学校教育に依拠した日本語普及は低い就学率のため低迷し、それを打破するために社会教育が推進された。台湾では1930年に国語講習所が、朝鮮では1934年に簡易学校が開設された。これらは同様の施設ではないが、学校教育を補完する点で共通している。1910年代以降の教育令をはじめ、政策上の共通項のある両植民地であるが、社会教育においては独自性もみられる。統治末期の日本語普及率の差異は大きく、その要因は政策のみならず日本統治以前のそれぞれの社会における書き言葉や共通語の有無など、政策以外のところにも求められる。
著者
酒井 憲二
出版者
田園調布学園大学
雑誌
調布日本文化 (ISSN:09171169)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.六五-八三, 1999-03-25
著者
金井 守
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-57, 2007

2000年4月の介護保険制度の施行,同年の社会福祉法の成立により,介護及び福祉領域におけるサービスが利用者の選択により利用される仕組みへと変更された。このことは,従来の措置制度における行政処分から権利としてのサービス利用,契約によるサービス利用へと転換するまさにパラダイムの転換による制度変革であった。これにより,サービス提供事業者は,利用者と相対して契約を交わし,契約に基づいてサービスを提供することとなり,そのことは一方では,サービスの市場における競争を喚起しサービスの質を向上させ,利用者から選ばれる事業者となる必要性を生じさせた。従来,介護保険制度における各サービスの運営基準や社会福祉法によって利用者の保護のために規定された諸規制が,事業者の立場からは,利用者保護の必要性を理解しつつも事業者の契約行為に対する制限と受け取られ,契約に対する消極的イメージを払拭できない状況があった。従って本研究では,サービスの質を高める契約のあり方について論じるため,まず措置から契約への制度転換の歴史的経緯とその意義を確認すると共に,民法上における契約の意味を明らかにする。そして,それらを通して,介護サービス利用契約が一般の契約と異なる特徴を整理し,利用者保護の必要性を論じる。次に,既に実施された介護契約に関する調査,介護支援専門員の業務に関する実態調査等の結果を踏まえ,その他の文献から得られた契約とサービスの質に関する視点等から,事業者の契約をめぐる体制,契約締結過程,契約履行過程,契約更新過程等についてその実態や問題点を整理し,契約の概念や理論を概観する。その上で,サービスの質を高める契約の姿・方向性について考察を加え,事業者が契約を媒介し活用して,サービスの質を高める取り組みを行うことができる可能性とその条件を検討する。
著者
河内 利治
出版者
田園調布学園大学
雑誌
調布日本文化 (ISSN:09171169)
巻号頁・発行日
pp.一七五-二一五, 1991-03-25
著者
安田 吉人
出版者
田園調布学園大学
雑誌
調布日本文化 (ISSN:09171169)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.一五三-一八四, 1995-03-25
著者
馬場 純子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 = The human welfare review (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
no.1, pp.97-116, 1998-12-25

痴呆性老人の在宅介護方法開発研究の一環としてK県内のケアセンターを利用する痴呆性老人とその介護家族を対象とした継続評価観察調査において主介護家族の負担感を測定し,その変化や影響する要因について検討した。2ヶ月に一度ずつ計4回,質問紙調査票を用いて各ケアセンターの指導員・看護婦などの専門職による個別訪問面接調査を行った。有効回答票はは28ケースである。負担感の測定には,Zaritらの負担感スケールを使用し,主介護者の負担感の変化について,何が効果的に影響したのかを探るため,要因と考えられる痴呆性老人の病状や行動評価,問題行動,サービス利用状況及びその他の支援との関連を検討した。その結果,ケースマネジメントによるサービスの調整や相談・助言などの支援を受けて8ヶ月後に負担感が変化したものは24ケース,そのうち負担感が増大したものが15ケース,軽減されたものが9ケースであった。負担感の変化と相関が認められたのは,老人への介護の対応状況とデイサービスの利用回数の変化であった。全体的な傾向は,ADLやACTIVITYなどの行動評価に顕著な改善が見られても,対応困難な問題行動が改善されない場合には負担感は増大する,また専門職による精神的支えや適切な助言及び諸サービスの調整などの援助が積極的に行われているケースにおいては,痴呆の程度が進んでも負担感が増大するわけではないなどの傾向が示された。
著者
馬場 純子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 = The human welfare review (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
no.3, pp.59-78, 2000-12-30

近年,わが国においては「ケア」と「介護」を同義語とすることをはじめ,「ケア」という言葉が氾濫しているといっても過言ではない状況にある。公的介護保険制度の開始,社会福祉基礎構造改革や社会福祉法の制定など,わが国の社会福祉をめぐる状況が大きく変化している現在,本研究はそれを自明のこととするのではなく改めて「ケア」の概念,意味するところを問い直そうと問題提起するものである。その第一歩として,人が「ケア」或いは「ケアする行為」をするのはなぜか,その動機や理由,人を「ケア」「ケアする行為」に導くもの,その基盤について,特にインフォーマル・ケアを中心に主に社会学的側面からの検討を行った。その結果,個人には人との関係を通してのみ満たされることのできるwell-beingに必要なものがあり,異なる関係においては異なる機能がもたらされるということが判明した。そして同じケアでもその担い手との関係によりもたらされるものが異なるという知見は,今後の地域福祉型社会福祉における社会的分業に貴重な示唆を与えるものであるが,人を「ケア」或いは「ケアする行為に」導くものの説明に十分な説得力あるものとはならなかった。今後は併せて哲学的,倫理的な側面からの検討を行う。
著者
馬場 純子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本調査研究は、介護保険下における居宅部門の介護支援専門員(=ケアマネジャー)の業務実態、特にケアマネジメント業務の実施状況を把握し、ケアの質の維持・向上を推進するために介護支援専門員の質的向上、スキルアップへの方策等の開発を探索することを目的に、介護支援専門員の日常業務について一ヶ月間にわたる業務量調査(タイムスタディ)(37ケース)を実施した。ケアマネジメントのプロセスに沿って業務をコード化し、どのような業務を、誰を対象に、どのような方法で、何分行ったかを毎日記録し、業務時間数を算出するものである。その結果、(1)勤務形態でみると、51%の介護支援専門員が他の仕事との兼務であったが、一ヶ月間の総時間数の平均は全体で約191時間37分、最大値は約332時間34分、最小値は約108時間であった。常勤兼務の平均は約211時間で、担当件数(全体平均54.3件)には大きな差はないが、休日日数は常勤専従の2/3であり、業務量(時間数)は明らかに常勤兼務の方が多い。(2)業務の内容別にみると、課題分析、ケアプランの作成、モニタリング等のケアマネジメントの中心的業務において、常勤専従より常勤兼務の方が時間数が多い。またケアマネジメント以外の「その他の業務」は専従・兼務を問わず全業務の約3割と非常に多くなっているが、常勤兼務は約37%を占め、更に割合が多くなっている。(3)全体的にサービス担当者会議が開催されていない、等の主な知見を得た。また、英国のケアマネジャーの教育・研修では、(1)人々の権利や義務・多様性をpromoteするシステムや構造の開発、維持、評価、(2)個人に最善の成果をもたらすようなサービスの管理・運営、(3)財政資源の活用の管理・運営、(4)チームと個人のパーフォーマンスの管理・運営が、登録マネジャーの資格取得に必須の単位となっている。今後は、タイムスタディの結果を更に詳細に質的に分析し、英国の事情を参考にわが国の介護支援専門員の教育・研修のプログラム開発を進めるとともに、担当件数の削減をはじめとする労働環境の整備も併せて検討することとする。
著者
金井 守
出版者
田園調布学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

研究3年目の22年度は、これまでの研究成果をソーシャルワーク世界会議、社会福祉学会で発表した。また、サービスの質と権利擁護に関係しサービス利用契約の現状と課題を探るため、7施設・1団体を訪問し、事業者へのヒアリングを行い、契約書等の資料を収集した。さらに、これらの分析を行い、民法や権利擁護その他の文献研究を通して3カ年の研究のまとめに取り組んだ。(1) サービス提供事業者の契約に対する取り組みについて、事業者等へのヒアリング、収集した契約書等から以下のことが認められた。(1)事業者が、利用者との契約を通した権利義務関係の発生の意義を認め、契約締結をサービス利用の主要な入口として評価していること。(2)利用者の契約締結の支援、利用料支払い、入院や退所時の支援など契約を取巻く生活状況に課題があること。(3)身体拘束の禁止等国が定めた運営基準に基づく規定を除き、契約書の中にサービスの質に直接的に触れる規定が見あたらず、サービスの質の担保に課題があること。(2) 収集した契約書等資料の分析や文献研究の結果、以下の点が認められた。(1)利用者はサービスの受け手の地位から契約を通して権利主体としての地位を獲得したこと。(2)福祉・介護サービスの利用が契約関係を通して市民法上の権利として認められること。(3)利用者の契約締結能力、代弁、身上監護など、利用者の権利擁護が課題であること。(4)権利擁護ネットワークの構築を通してコミュニティー強化を展望。(3) 理論上の課題として、以下の点が挙げられる。(1)契約を通した福祉・介護サービスの利用への転換は、福祉・介護領域におけるパラダイム転換を伴う重要で基本的な変化であること、(2)福祉・介護サービス利用者が権利主体として認められることから、事業者・家族等の関係者は利用者の権利擁護に努める責任が生じていること、(3)市民法を中心とする「権利・法」概念とそのシステムが福祉・介護領域に進出したことから、福祉・介護領域では、利用者の権利主張と権利擁護が重要な課題として浮上していること。
著者
藤本 末美 福間 和美 松山 直美 中島 礼子 園田 美香 末永 貴代 徳永 活子 金子 智美 陣川 しのぶ 吉川 直美
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.21-43, 2004-03-17

地域における保健福祉活動を考えるにあたって,住民の住んでいる地域(地区)における生活や生活を支える地域組織活動が大きく影響していると考える。しかし,日常生活を営んでいる平常時には,当たり前の存在として過ごしていることが多い。しかし,災害等が発生する非常時には,平常時の生活と地区組織がどのような活動をしているかによって,生活の支え方が大きく左右されるものと考える。今回,雲仙・普賢岳噴火災害地域・K地区について災害から10年を経過した現在までの,住民の生活と地区組織活動の再編成過程について,その関連を検討し新たな知見が得られた。この知見は,今後の平常時の生活と地区組織活動のあり方や,さらに非常時である災害発生時の生活と地区組織活動のあり方に応用展開できるものと思われる。