著者
朝日 由紀子
出版者
白百合女子大学
雑誌
白百合女子大學研究紀要 (ISSN:02877392)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.A77-A94, 2006-12

マーク・トウェインの最高傑作『ハックルベリー・フインの冒険』は、アメリカ文学の古典としての地位を確立している作品であるが、一方、その語り手ハックルベリー・フインがこの世に登場したときから、社会的な排撃が起こり、以来、時代風潮のなかで社会道徳による断罪が批評家の評価の仕方に影響を及ぼしてきた点で、特異な作品である。この経緯をたどることは、必然的にアメリカ文化の深層と断層を知ることになろう。
著者
越 森彦
出版者
白百合女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

18世紀フランスの法廷書類(「訴訟趣意書」)を一次資料とすることで、スキャンダル・ジャーナリズムとの関係から、ジャン=ジャック・ルソーにおける自伝的言説の成立過程およびその文体的特徴を明らかにすることを目的としている。初年次はフランスのパリ国立図書館において、次年次はスイスのヌシャテル市立図書館において、それぞれ『名高くも面白おかしい訴訟事件』と『我が肖像』の読解を行い、「公論」と自伝的言説の関係を分析した。
著者
吉成 啓子 齋藤 兆古 岩崎 晴美 友末 亮三 松前 祐司 堀井 清之
出版者
白百合女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

スポーツ動作の解析は,高速度カメラ,筋電図,加速度計などを用いて行われてきた.しかし,その手法は比較研究が中心であり,「熟練者の動作」=「巧みな動作」という主観的・経験的議論にとどまることが多い.そこで本研究では,スポーツ動作としてテニスのサーブを選択し,画像の固有パターン認識手法を用いて,「巧みな動作」を科学的・客観的に判断することを試みた.その結果,テニスのサーブ・フォームにおける上級者と初級者の本質的相違が,画像の固有パターン認識手法によって抽出可能である,ということが明らかになった.方法,結果,考察の要点をまとめると次のようになる.「方法」スポーツ動作の中の不変量を,画像の固有パターン認識手法を用いて定量化することを検討した.被検者は,上級者として男子テニス選手1名,初級者としてテニス歴半年未満の男子1名の合計2名とした.各被検者は,縦状に緑,赤,青の3色に色分けされたウェアを着装し,最大努力のフラット・サーブを行った.サーブ動作を測方に設置したデジタルビデオカメラを用いて毎秒30コマで撮影した.「結果と考察」テニスのサーブにおいては,フォワード・スウィングの際の脊柱を中心とした身体の回旋速度を大きくするために,テイクバック時に上体をいったん後方に捻り,"タメ"を作ることが重要であるとされている.上級者初級者とも,赤・青・緑の色の部分のみを取り出した画像を解析した結果,3次元空間画素分布表示の場合は色の少ない部分はグラフ上に表示されず,こうした動きの本質的な相違のみを表示できるということが分かった.このことは,画像の固有パターン認識手法が,従来主観により論じられてきた「巧みな動作」を客観的に検討する手法として有効である,ということを示している.
著者
粂井 輝子
出版者
白百合女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

平成14年度はワシントン大学に所蔵されている『北米時事』新聞の川柳欄を閲覧コピーし、川柳をコンピュータに入力、平成15年度は『加州毎日』新聞の川柳欄を閲覧コピーし、川柳を同様に入力した。さらに『ユタ日報』の川柳欄の川柳も収集、コンピュータに入力した。両年とも、日系コミュニティでの人脈を通じて、戦前・戦中の川柳人と接触し、個人所蔵資料の閲覧コピー、面談聞き取りを行った。戦時中ジェローム強制収容所で発行された川柳しがらみ吟社の「しがらみ」、ツールレーク隔離収容所の「怒涛」などを収集した。平成16年度は、戦時中の収容所で発行された文学誌のなかの川柳を入力した。同年では、入力した川柳15000句を分析し、2004年度アメリカ学会(アトランタ)で、戦前の川柳に関する学会発表を行った。この発表で、日本アメリカ学会の英文ジャーナル誌への寄稿を依頼された。また、サバティカルで滞在中のハーバード大学ロングフェロー研究所の教授から、ドイツのアメリカ学会誌への寄稿を依頼された。(現在、入校中、発行は2005年度)。さらに補足的研究のために平成17年3月にシアトルとロサンゼルスで調査を行った。また平成16年6月にはアイダホ州ミネドカ強制収容所跡地を見学した。アメリカの川柳は、いわゆる狂句とは異なり、季語のない俳句ともいえる。川柳人の社会階層は、日本人会幹部から、季節労働者、年齢的には「老人」から10代の若者、性別も男性が多いものの、主婦や未婚女性も交じっている。一つの句は短いが、万単位で残る膨大な量を分析することで、記録を持たないと思われた一般庶民のさまざまな声が聞こえてくる。アメリカ移民の「人生の記録であり、心情の詩」である。
著者
石井 直人 佐々木 裕里子
出版者
白百合女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、冨田博之氏(1922-1994)が収集した日本の児童演劇・演劇教育に関する膨大な文書資料(データ件数7,837件)および新聞記事(データ件数12,317件)を整理した。これらの資料は、児童文化史の変遷を調査する一次資料として広く研究に役立てられることが期待される。データベースの作成、資料の再分類により、コレクションの全体像を明らかにし、その歴史的価値を再確認することができた。
著者
井上 隆史 山中 剛史 TAILLANDIER Denis 井関 麻帆 田中 真夕美
出版者
白百合女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

三島由紀夫の手稿類(創作ノート、下書き原稿、ゲラへの書き込み、書簡など)を調査すると同時に、二葉亭四迷、宮沢賢治など三島以外の作家の手稿研究の従来の成果や問題点について検証した。そして、フランスの生成論について検討、哲学(解釈学)や美術史の議論も取り込んで、より望ましい手稿研究の方法論を探った。これを踏まえ、三島の代表作「金閣寺」や遺作四部作「豊饒の海」の創作ノートを研究し、後者に関しては、創作ノートで検討されていたが、その後大きく変更された第四巻の当初の構想を発展させ、「幻の第四巻」を仮構した。