著者
山脇 孝晴 手島 英雄 竹島 信宏 山内 一弘 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.328-334, 1996-05-01
被引用文献数
6

子宮体部明細胞腺癌 (以下明癌) 症例および一部に明細胞腺癌成分を含む内膜型腺癌 (以下一部明癌) 症例の臨床病理学的検討を行い, 以下の成績を得た。1. 癌研究会附属病院婦人科にて, 1950〜1994年に初回治療を行った子宮体癌1,152例中, 明癌は16例 (1.4%), 一部明癌は21例 (1.8%) であった。2. 累積生存率の算定にKaplan-Meier法を用いると, 明癌, 一部明癌は, それぞれ, 子宮体癌全体に比し, 有意に予後不良であった (p<0.001) 。3. 明癌のsubtypeは, papillary 5例 (31%), solid 9例 (56%), tubulocystic 2例 (13%) であった。4. 明癌において, hyaline body 8例 (50%), bizzare nucleus 7例 (44%), psammoma body 5例 (31%), 壊死6例 (38%), リンパ球を主体とした細胞浸潤8例 (50%), リンパ管侵襲5例 (36%), 血管侵襲4例 (29%) および異型内膜増殖症1例 (7%) に認められた。5. 明癌において, 病理組織学所見と予後とを比較すると, 癌病巣周囲のリンパ球を主体とした細胞浸潤の有無が最も予後と関係した。すなわち, 細胞浸潤がみられなかった8症例では, 癌が粘膜に限局していた1例を除けば, 7例中6例 (86%) が1カ月から1年7カ月で癌死したのに対し, 浸潤がみられた8症例では, 6例が無病生存, 1例が坦癌生存, 1例は2年7カ月で癌死であった。6. 一部明癌の中で, 転移, 再発を来した6症例中5例 (83%) は, 原発巣では明癌成分がわずかであったにもかかわらず, 化学療法, 放射線治療前の転移, 再発巣では, 明癌成分が著明に増加していた。以上, 子宮体部明癌の予後には, リンパ球を主体とした反応性細胞浸潤が関係している可能性が示され, その欠如は危険因子の一つになりうると考えられた。また, 一部明癌では, 転移, 再発巣において, 明癌成分が優位に増殖する傾向が明らかになり, 今後, 明癌のみならず, 一部明癌症例に対しても, 新たな積極的な治療が必要と考えられた。
著者
印出 秀二
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.261-269, 1978-03-01

初期流産,黄体機能不全,排卵誘発例等の内分泌動態を分析するための正常対照を得るべく,正常月経周期16例,正常初期妊娠14例につき,排卵前より可及的経日的に血中LH (HCG), FSH, P, E_2, HCG (RIA法,RRA法,及びβ-subunitのRIA法)値を測定し,正常域(M±SD)を設定した. 1) 正常月経周期においては,LHは排卵期に鋭いLHピークを示し,卵胞期では後半の方が前半よりも高く,黄体期では前半の方が後半よりも高値を示し,LHピークを中心とする山型のカーブを示した.卵胞期の平均は黄体期の平均とほぼ同等の値であつた. FSHはLHピークに一致して小さなピークをつくり,卵胞期の方が黄体期より高値を示した.PはLHピーク後,増加し始め,+6日〜+9日に6ng/ml〜18ng/mlの正常域を待つピークを示し,この間5ng/ml以下の値を示す例は存在しなかつた.E_2は,-5日より増加し始め,-1日にピークを示し,次いで0日が高く,+1日に極小,+6〜+9日にかけ再び小さなピークを形づくる. 2) 初期妊娠においては,LH (HCG)は+11日に正常月経周期の値を有意に越し,+20日にはLHピークを有意に越し,+21日以降急増する.FSHはLHと一致した小さなピーク後,妊娠が成立しても卵胞期より低値の黄体期レベルを持続する.Pは+12日より正常月経周期の値を有意に越し,以後漸増して+42日頃,一時低下し,その後再び増加する.E_2は+13日より正常月経周期の値を有意に越し,+28日より急増する.HCGのβ-subunitは,早いもので+9日より検出され,RIA, RRA値ともに+49日頃ピークを示す.
著者
加藤 友康 清水 敬生 梅澤 聡 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1337-1342, 1994-12-01
被引用文献数
2

直腸に直接浸潤もしくは播種巣を形成した卵巣癌症例に対する, neoadjuvant 化学療法(NA化療)後の直腸合併切除の意義について検討した. 1988年7月から1992年12月までに当科でNA化療後に直腸合併切除を行ったIIIc期7例, IV期4例(漿液性腺癌10例, 類内膜腺癌1例)を対象とした. IIIc期例は試験開腹後にNA化療を開始した. IV期例ではPerformance status (PS)が悪いため試験開腹は施行せず, まず癌性胸腹水に対して免疫療法を施しPSの改善を図った後, ただちにNA化療を開始した. 化療のレジメンはCP (cyclophosphamide: 500mg/m^2, day 1; cisplatin: 10mg/m^2, day 1〜7)であり, 4〜6コース投与した. 効果はPartial Response 9例, Minor Response 1例, No Change 1例であった. NA化療後, 子宮・卵巣・直腸をen blocに摘出した. 人工肛門が造設されたのは計画的に骨盤内臓全摘術を行った1例のみであった. 上腹部臓器に転移巣が残存した5例は, 可及的に摘出した. 術後の残存腫瘍径は, 残存腫瘍なしが5例, 0.5cm未満が2例, 2cm未満が3例, 2cm以上が1例であった. 術後合併症例はみられず, 術後治療によるPSの改善が効を奏したと思われる. 11例の全生存期間(5例死亡)は平均26.8ヵ月であった. なお, 残存腫瘍径が0.5cm未満の症例7例(2例死亡)中, 2年未満の死亡例はなかった. 直腸合併切除及び播種巣の可及的切除により残存腫瘍径を0.5cm未満にすることが可能な症例では, NA化療後の直腸合併切除はQuality of Lifeを損ねることなく, 予後に大きなimpactを与えると期待できる.
著者
麻生 武志 TATSUMI Kenichi YOSHIDA Hisahiro YOSHIDA Yataro
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.88-96, 1983-01-01
被引用文献数
1

MN血液型不適合のために過去4回妊娠29-36週にて子宮内胎児死亡を来した症例に対して新しく開発した母体血中抗体除去法を施行し生児をうることができたので報告する.本妊婦の血液型はO,NNss,CcDeeで夫はO,MMss,CcDEeであり,今回の妊娠18週における抗M抗体は×512に上昇したため再度の胎内死亡を防ぐために先ず抗体を含まない新鮮凍結血漿を用いてplasmapheresis(1回の交換量2,500ml)を6回実施したところ重症の輸血後肝炎を発症した.肝炎の急性期が過ぎた後抗体除去法を開始したが本法は成分採血装置により患者血漿を採取し,バッグ内で4℃,10分間,1/2.5量のMM血球と反応させ抗M抗体を吸着除去した後に血漿を再輸注するもので,血漿量3.0-7.0L/週の割合で妊娠23-32週にわたり計22回行った.これにより母体血中抗体の上昇は×512に留まり,羊水中ODD-450値はLiley graphのupper mid zoneの範囲を維持し,母体肝機能は正常化して児頭大横径の変化も標準的であったが,妊娠33週に入り胎動の減弱とNST上sinusoidal patternがみられ胎児切迫仮死の診断の下に緊急布切を行い1,960gの女児をApgar score 2で娩出,児は強度の貧血を呈したため交換輸血,血小板輸濫等を要したが生後の身体的知能的発育は正常である.本法の原理は他の抗体除去にも応用可能で,血液型不適合による胎児貧血の進行を抑え胎外生活が可能となるまで子宮内生存を延長させる方法として副作用も少なく有用であると考えられる.
著者
野末 悦子
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.146-154, 1966-03-01

わが国に於ける妊産婦死亡率は, 今尚文明諸外国に比し高率である. この原因を探求し死亡を減少させるには, 個々の例が如何なる条件のもとに死亡したかを分析しない限り充分ではない. そこで人口動態死亡票をもとにして死亡例を求め, 1957年1月から1959年12月迄の3年間に於ける神奈川県妊産婦死亡に関し実地調査を行ない, 諸条件を分析する事により, 如何にすれば死亡が予防可能であるかを考察した. 1. 妊産婦死亡数は分娩の多い25〜29才, 30〜34才に多いが, 死亡率は35才以上に高い. 2. 調査後, 死因を訂正すべきものが27.2%認められ, 妊娠中毒症は多く, 出血は少なく届出られている. 3. 死亡の時期で最も多いのは, 分娩後24時間以内で, 39.5%を占めている. 4. 医師を受診した回数の少ないものが多く, 特に生活程度下の群では, 死亡迄0〜2回しか受診しないものが85%を占めている. 初診が遅れるため, 妊娠中毒症の発見が遅れている. 5. 施設の利用は年々増加の傾向にあるが, 生活程度下の群では35%が自宅で死亡しており, 異常発生時初診者も, 専門医30%, 助産婦35%で医師受診率は低い. 6. 施設内死亡の中60.9%が入院後24時間以内の死亡であり, 79%が勤務時間外の死亡である. 7. 大量出血の55.3%は輸血が行われていない. 8. 子宮外妊娠死亡の初診者の73%が一般医で, 55%は手術前に死亡している. 9. 諸条件を分析した結果, 保健指導強化により14.8%が, 診療の充実により48.2%が, その両者により21%が, 経済状態その他の環境の改善により11.1%がそれぞれ予防可能である.
著者
春山 喜重
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.92-98, 1987-01-01

妊娠16週から41週までの妊婦に、延べ5、294回、また47例の正期産骨盤位分娩例に超音波断層法を施行し、胎盤付着部位と胎位胎向との関係を検討した。なお、子宮奇形、筋腫合併、卵巣嚢腫合併、多胎、早産、羊水過多、前置胎盤、未熟児、胎児奇形、狭骨盤などの異常妊娠は検査対象から除外した。得られた成績は次の通りである。1)妊娠各期を通じて、胎盤付着部は、中央付着が最も多く、その頻度は60.9〜74.0%におよんでいた。2)骨盤位の発生頻度は、妊娠16〜19週で48.2%であったが、妊娠28〜31週で16.0%、妊娠36〜41週では5.0%と激減した。また、胎盤付着部別の骨盤位の発生頻度は、妊娠16〜19週では、胎盤卵管角付着では38.0%、側壁付着では50.0%、底部付着では52.8%、中央付着では47.2%と大差はなかった。しかし、妊婦36〜41週の検討では夫々20.2%、 6.4%、 9.0%、 1.1%であり、中央付着での胎位変換率は他の部位より明らかに高かった(p<0.01)。3)正期産骨盤位では、その約60%が胎盤卵管角付着であった。以上の事実から、骨盤位発生の大きな原因は、本来の子宮腔の形状である逆三角形的な洋梨状形態が著明に変形した場合であり、胎盤が卵管角、側壁、底部に付着する時には、胎児の自己回転が障害されるためであると結論された。
著者
影山 惇彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.165-174, 1966-03-01

水は生体の主要構成成分の一つであり, 全ての生体反応の普遍的媒体として極めて重要な存在である. 特に新生児期においては, その動きが哺育面に及ぼす影響は極めて大きい. 吾が教室では, つとにこの点に注目し水出納の面から研究をすすめている. さてその内で重要な比率を占める不感蒸泄量を測定するため, 恒温恒湿室をつくり, その中に精密な直視式自動人体天秤を設置した. この装置によつて, 新生児の水出納が各種ホルモンによつて如何に影響されるかを検討した. 使用薬剤は4-Chlorotestosterone acetate (Macrobin), 17 β-Valerylonyandrostane 3〜one (Apeton Depo), 1-Methyl'Δ Androstenolone acetate (Primobalan), Norandrostenolone phenylpropionate (Durabolin), 17 α-ethyl-19-nortestosterone (nilevar)なる5種の蛋白同化ホルモンである. 投与法は1回限りの筋肉内注射とし, 使用量は前3者は10mg/kg, 他はそれぞれ5mg/kg, 1.5mg/kgとした. 尚測定条件は上記の恒温恒湿装置により25℃, 湿度70%の環境をつくり, 児を安静に保つため, 毎時10gr哺乳をしながら, 直視式自動人体天秤(秤量100kg, 感量500mg)により逐時的に体重測定を行い, 同時に毎時の尿量をも測定した. 実験の結果は次の通りである. (1)生後48〜60時間の成熟女児の安静時における不感蒸泄量は毎時約0.73±0.12gr/kgであり, 尿量は毎時1.44±0.46gr/kgである. (2)蛋白同化ホルモン投与後の不感蒸泄量の推移には2型がある. 第1型は投与直後より減少しはじめ, 4〜8時間で元の値に復元する. 第2型では概括的にみて直後一過性に稍々増加するが, その後次第に減少傾向を辿り, 12〜20時間で元の値にもどる. 尿量はいづれも投与後次第に減少するが一定時より復元傾向を示す. (3), (2)に於ける水排出量と, その間の哺乳量とを比較すると, 新生児の水出納は蛋白同化ホルモン投与により一過性ではあるが陽性平衡を示している. (4) 血清蛋白量, ヘモグロビン値はこの実験時間内では, 著しい変化をみとめられない. かくて, 新生児に対する, ホルモン哺育の意義に関しては, その蛋白同化面を全く否定するわけではないがそれによる体重増加が主として, 水貯溜に基くものであることが, 我教室の菊池等の実験と相俟つて確認された. (5)しかもこの際の水貯溜機序に於て, 不感蒸泄量と利尿量との間に対蹠共軛的な動きがみとめられ, 生体全体としてHomeostaticに水分量を一定量に保たんとしながら, 増減することが認められた.
著者
松尾 健志 石原 楷輔 菊池 三郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.603-610, 1991-06-01
被引用文献数
1

妊娠中期に超音波検査で前置胎盤と診断される症例の頻度が分娩時に比し異常に高いといわれ, その理由はいまだ不明な点も多い. そこで経腹・経直腸および経腔の各走査法で本症診断の基本となる頚管像検出能を比較検討し, さらに妊娠中期に前置胎盤と診断された症例の超音波所見について経時的検討を行ない上記理由の解明を試みた. 1. 各走査法による頚管像検出能 : 1) 頚管像の検出率は, 妊娠12〜23週では経腹走査法52.0〜62.5%に比し経直腸・経腔走査法ではそれぞれ85.7〜87.5%, 100%であつた. 2) 経腹走査法では子宮峡部を同定できなかつた. 2. 前置胎盤と診断された症例における超音波所見の経時的変化 : 1)経直腸走査法による観察 (1) 妊娠16〜20週において, 経腹走査法で胎盤位置を診断した965例のうち低置, 前置とされた64例, 12例は, 経直腸走査法では低置43例 (4.5%), 前置4例 (0.4%)と診断された. (2) 前置と診断された4例は以後分娩時までその位置診断に変更がなく帝切時に前置胎盤と確認された. (3) 低置から正常位へ診断が変更された症例の頻度は妊娠32週未満では79.1%で, それ以後の11.1%に比し有意に高かつた (P<0.05). 2)経腔走査法による観察 (1) 妊娠13〜20週において胎盤位置を診断し, 261症例のうち低置および前置はそれぞれ18例 (6.9%), 13例 (5.0%)で前置は全例に峡部像を認めた. (2) 峡部が全例消失した妊娠22週までには前置は2例 (0.8%)のみとなり, 以後分娩時までその位置診断に変更はなく帝切時に前置胎盤が確認された.(3) 低置18例のうち分娩時までに診断が変更された症例の頻度は88.9%であつた. 以上より, 妊娠中期に前置胎盤と診断される症例の多くは, 頚管像検出能が低い経腹走査法により, 子宮下節伸展に伴い内子宮口との位置関係が変化しやすい低置胎盤を前置胎盤と誤認した症例であり, 一部に子宮峡部消失前の診断例も含まれていたと考えられた.
著者
小関 聡
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1322-1328, 1994-12-01

HCV抗体測定法が開発されて輸血時のスクリーニング検査に導入されたことにより輸血後C型肝炎は激減したが, それ以外の感染経路については不明な点が少なくない. 今回その一つとされる母子感染の実態を明らかにする目的で, 当科ならびに関連病院を受診した4,801例の妊婦とその出産児を対象に, C型肝炎の母子感染の発生とその成立因子について検討し, 以下の結果を得た. 1) HCV抗体陽性者は4,801例中59例(1.23%), RT-semi nested PCR法によるHCV-RNA陽性者は25例(0.52%)であった. 2) HCV抗体陽性者のうち, 現在までに分娩に至った14例において, 分娩時臍帯血中HCV抗体は全例陽性であったが, HCV-RNAは全例陰性であり, 胎内感染と明らかに断定できる症例は存在しなかった. 3) 追跡中の13例の児のうち3例にHCV-RNAが検出され, 母子感染の発生率は全妊婦に対し0.06%, HCV-RNA陽性妊婦に対し23%であった. また, これら3例では, 妊娠末期の母体血清GPT値が軽度上昇を示したのに対して, 他の10例はすべて正常範囲内であった. 一方, HCV-genotype, 妊娠末期の母体血中HCV-RNAの半定量, HCV抗体価およびγ-GTP値と, 母子感染成立との間に関連性は認められなかった. 4) 児のHCV-RNAが陽性となった3例のうち, 1例は母体でのHCVとHIVとの重感染が認められたが, HIVの母子感染は認められなかった. 5) 母乳中にHCV-RNAが検出された症例が3例認められたが, これらの児からはHCV-RNAは検出されず, 母子感染における母乳の意義は不明であった. 以上より, C型肝炎の母子感染の存在が確認され, 母子感染成立の因子の一つとして妊娠末期における母体の肝炎の活動性が重要であることが示唆された.