著者
宇津宮 隆史
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.396-398, 1998-07-01
被引用文献数
1
著者
山下 幸紀 一戸 喜兵衛 ドーソン ジェフリー
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.450-458, 1979-04-01
被引用文献数
2

Carcinoembryonic antigen(CEA)活性を大量に含んでいると考えられている卵巣のムチン嚢胞癌の嚢胞液から,CEA様物質を分離,精製し,その物理化学,および免疫化学的性状を,3種の大腸癌由来の標準CEA(CEA-Montreal,-Hopelandl-Roche)と比較検討し,以下の結果をえた.1.過塩素酸(PCA)に抽出された分画のCEA活性は,CEA-Rocheと完全に交叉するCompetitive Inhibition Gurveを,Radioimmunoassay(RIA)により示した.2.しかし,PCA抽出分画には,大量のCEA活性が沈澱物中に失われていることが,拡大腸癌CEAに対するImmunodiffusion法により判明した.すなわち,PCA抽出分画は沈降線を示さなかったのに対し,従来注目されていなかった沈澱分画が,CEA-Monttrealと一部共通する沈降線を,抗CEA-Montrealとの間に示した.3.^<125>Iで標識されたPCA抽出分画,および,更にこれから分離されたConcanavalin A(Con A)結合性分画と,抗大腸癌CEAとのImmunoprecipateを,Sodium Dodecyl Sulfate (SDS) polyacrylamide Gel Electrophoresis (PAGE) により分析したが,標準大腸癌CEAのImmunoprecipitateが示す放射能活性ピークは認められなかった.4.PCA処理を行わずに,精製の第一段階に,Con A Sephalose 4B Column Chromatographyを用い,Con A結合性分画を分離し,更に,Sepharlose 4B Column次いでSephalose G200 column ChromatographyにてCEA様物質を精製し,同様にSDS-PAGEによる分析を行ったところ,5% SDS-PAGEにおいて,標準大腸癌CEAのImmunoprecipitateが示すと同様,標準蛋白であるMyosin(210,000m.w)とβ-Galactosidase(135,000m.w.)との間に_<125>Iのピークが認められた.以上の結果,ムチン嚢胞液中に認められるCEA活性は,分子量の面からも,また免疫化学的正常の面からも,大腸癌CEAと同一の糖蛋白により示されたものであることが明らかになった.
著者
浜崎 俊郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.25-34, 1964-01-01

最近食糧事情の改善に伴い肥満者が増加し, 本邦に於ても漸く肥満症が医学的に注目される様になつたが欧米における程の関心は未だ寄せられず, 臨床的研究は極めて少い. 産婦人科領域の肥満者には性機能障害, 産科合併症が多いので, この点からも女性肥満は多く問題を残している. 私は肥満婦人について臨床統計的観察を行うと共に, 性機能や脂質代謝を検討し, 性機能改善や産科合併症の軽減を目的として治療を試み, 他方では本症と関係する若干の動物実験を行つた. (1)昭和35年から3年間の当科外来患者中肥満非妊婦68例, 肥満妊婦37例について, 肥満者の頻度, 婦人科的疾患, 肥満の契機, 月経, 既往症, 妊娠分娩時合併症等を検討した. (2)臨床検査は, 性機能検査としては子宮腔の長さ, 腟脂膏の角化係数, 子宮内膜像, 基礎体温等を検討し, 脂質代謝を窺うために, 血清コレステロール(Kiliani-Zak法), 血清燐脂質(酸化-沃度法), 血中焦性ブドウ酸(清水-島薗氏法), 血中α-ケトグルタール酸(清水氏法)を測定した. (3)動物実験ではdd系雌性成熟マウスを用いGoldthioglucoseを注射し, 体重, 摂取熱量, 腟脂膏からみた性周期に及ぼす影響や腹腔臓器に及ぼす影響を観察した. (4)治療には間脳に作用し食欲を抑制するといわれるCafilonと低カロリー食metrecalを使用し, 性機能, 詣質代謝の改善を計つた. (1)肥満非妊婦の頻度は15.9%で内分泌環境の急変する時期を契機として発生するものが55.9%で大半を占め, 月経異常は29.0%にみられ, 既往に異常妊娠分娩を経験したものが22.8%である. 肥満妊婦の頻度は4.1%で高令者, 経産婦に多く, 妊娠分娩時合併症では妊娠中毒症(7.1%), 弛緩性出血(12.0%)が多く, 児については過熟児が多い傾向にある(10.5%). (2)肥満婦人では子宮腔の長さは7cm以上のものが多い(75.0%)が, 腟脂膏の角化係数では40%以下のものが55%, 子宮内膜像では67.5%に異常を認め, 基礎体温曲線では典型的二相性を示さないものが37.5%で性機能障害が多いことが窺われた. (3)血清総コレステロールは肥満度と共に増加するが肥満度+50%以上では却つて減少した. コレステロールエステルも同様の傾向を示すが遊離コレステロールでは一定の傾向を認めない. 血清燐脂質, C/P比, 血中焦性ブドウ酸, α-ケトグルタール酸も大体肥溝度と正の相関を示すが, α-ケトグルタール酸は肥満度+50%以上では却つて減少した. (4)マウスにGoldthiogucoseを注射し肥満を発生せしめ得た. 摂取熱量の増加と持続的発情に次いで発情停止を, 腹腔臓器では子宮, 卵巣の萎縮を認めた. (5)Cafilon療法では体重減少は1カ月平均4.4kgで, 最高体重減少は124日間治療の21.3kgである. Metrecal療法では1カ月平均体重減少は5.1kgである. 治療により全例に自覚症状の改善を認め, 月経異常はCafilon療法により45.5%に改善した. 血中焦性ブドウ酸, 血清コレステロールは治療中一定の増減傾向を示さない. 結論)(1)肥満婦人には性機能障害が多い. (2)肥満妊婦では異常妊娠分娩が多い. (3)脂質代謝は肥満度+50%未満までは障害されているが+50%以上では却つて軽快している. (4)Goldthioglucose注射によりマウスに肥満, 性機能障害を認めた. (5)Metrecal療法はCafilon療法より優れている. (6)脱脂療法により性機能障害は改善されるが, 脂質代謝障害には一定の影響を及ぼさない.
著者
小林 浩
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.1263-1267, 2011-05-01

子宮頸がんは本邦では年間15,000人が発症し3,500人が死亡する疾患であり,女性特有のがんの第2位を占める.発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV 16型・18型)というウイルスの持続的な感染が原因となって発症する.このウイルスに感染すること自体は決してまれではなく,性交経験がある女性であればだれでも感染する可能性がある.最近10年間で特に20歳代や30歳代の若年層で罹患率が増加している.HPVに感染してもほとんどの場合,ウイルスは自然に排除されるが,排除されずに長期間感染が持続する場合があり,ごく一部の症例で数年〜十年かけて前がん病変の状態を経て子宮頸がんを発症する.この間に子宮頸がん検診を行えば前がん病変を早期発見し,治療することができる.女子中学生などへの子宮頸がん予防ワクチン,乳幼児へのヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチン接種については,平成22年度の国の補正予算でその公費助成費用が措置された(子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業)ことから,市町村では実施準備が整い次第,当該ワクチン接種の公費助成を開始している(一部市町村では既に公費助成を開始している).子宮頸がん予防ワクチンの公費負担が開始されたが,各市町村により接種対象者が異なるので十分把握する必要がある.ワクチン接種に関するガイドラインとその実務的な内容を記載した.
著者
吉川 光夫
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.1283-1292, 1966-11-01

排卵は性ステロイドホルモンによつて抑制をうけるが, その本体については異論があり見解の一致がえられない. 筆者はそれらのもつEstrogenecityを重視し, これをその本質的な作用の一つとみなす立場を主張し Estrogenを用いてその実験的な裏付を行なつた. Estrogenの発情作用についてはDD系去勢成熟マウスを用いEstradioldipropionate, Estriol, Estriol tripropionateの比は40:2:1の割合であることを認めた. Estrogenの性腺抑制作用を検討しEstriolは従来Estrogen of vaginaといわれ, その性腺抑制作用についてはうたがわしいとみなされたが投与量の如何によつて性腺抑制作用を有することを認め, これをもとに排卵性周期を確認した婦人5名にEstriol tripropionate 5mgを月経周期の第3〜15日に投与し全例に排卵抑制を認めた. Ethinylestradiol-3 methyletherを用い, ラットにこれを連続して服用させた実験群と周期的に服用させた実験群とに分け, 卵巣の組織学的所見及び下垂体PAS陽性細胞出現率より周期的投与群が連続投与群に比べ著明な性腺抑制作用のみられぬことを認めた. 以上の結果よりEthinylestradiol-3 methyletherを人の排卵抑制には20日間服用法で, 月経周期5日目より1日当り60〜80γ服用させ, そのいずれにおいても排卵抑制が認められる結果をえた. 同時に尿中Total Gonadotropinを測定し軽度の減少を認め, 長期に亘る服用例でも重篤な性器出血その他の副作用を認めなかつた.
著者
黒石 哲生
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.944-951, 2003-08-01
被引用文献数
1

わが国の婦人料系がんの予防対策のための基礎資料を得る目的で,厚生労働省の人口動態統計と国勢調査人口に基づいて,乳がん,子宮がん,卵巣がんの1950年以降の死亡数・率の動向を調べた.また,今後現在のような死亡動向かいましばらく続くとして,これらのがん死亡数・率の将来予測を行った(2000年〜2020年).2000年におけるわが国の全がん死亡数は,女で116,344人であり,そのうち乳がん,子宮がん,卵巣がんはそれぞれ9,171人,5,216人,3,993人で全部位のうち7.9%,4.5%,3.4%を占め,部位別では第5位,8位,11位にあった.またそれぞれ年齢調整死亡率は人口10万人当たり10.6,5.3,4.3であった.1950年以降,乳がん,卵巣がん死亡数(年齢調整死亡率)は増加(上昇)し,子宮がん死亡数は減少(低下)してきた.この傾向が続くとして2020年の死亡数を予測すると,それぞれ13,700人(2020年/1999年の比は1.54),7,600入(1.87),3,500人(0.68)ほどと推計された.ただし,子宮がんでは最近下げ止まりの傾向がみられ,上記の推計は過小評価の可能性があると思われる.卵巣がんにも最近低下の兆しがみられるが,真かどうか数年見守る必要がある.年齢階級別に乳がん死亡数の将来予測をみると40歳以上のどの年齢層でも増加することがみられた.年齢階級別に卵巣がん死亡数の予測を行うと増加の激しいのは80歳以上および70〜79歳の年齢層であった.年齢階級別に子宮がん死亡数の予測では80歳以上の高齢者では増加がみられたが,80歳以下の各年齢階級では減少がみられた.
著者
大浜 紘三
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1687-1695, 1978-12-01
被引用文献数
1

ヒト胎生初期における染色体異常の頻度および発生に関する各種要因,ならびに性比を検討するため,妊娠12週以前の人工流産児の染色体を検索し以下の結果を得た. 1. 1,224例の培養を行ない1,087例の染色体分析が可能で,その中53例(4.9%)に染色体異常が認められた.染色体異常は,モノソミーX5例(45,X,t(3q+; 6q-)の1例を含む),トリソミー39例,複合異数体4例,3倍体2例,4倍体2例,モザイク1例で,トリソミーの内訳はトリソミー16が8例,トリソミー22が7例,トリソミー21が6例,トリソミー18が3例,トリソミー2, 5, 14各2例,トリソミー4, 7, 10, 11, X, 15, 17, C, D各1例であり,モザイクの1例は46/47, +22であつた. 2. 染色体異常の発生要因検討により,高年婦人よりの例に染色体異常特に配偶子形成時の染色体不分離に起因するトリソミー,複合異数体の頻度が高いことが認められたが,父親年令との関連については否定的であつた.また妊娠歴,月経状況,結婚状況および妊娠前後の薬物服用の分析では,特に染色体異常発生の要因となるものは認めず,原爆被曝についても明確な結論は出し得なかつた.ただ妊娠中に極く少量ではあるが不正性器出血を認めた10例のうち4例に染色体異常が見い出された. 3. モノソミーX,3倍体を除く1,079例の性比は102.1(男545例,女534例)で,既にこの時点で僅かながら男優位になつていることが認められたが,8週0日以前の例では逆に女児がやや多く(男324,女331,性比97.9),また妊娠順位の検討では初回妊娠例に女児が多かつた(男62,女69,性比89.9).更に染色体異常例だけについて見た場合も女児が多い(男20,女25)結果であつたが有意差は認められなかつた.(χ^2=0.69, p<0.1)
著者
松山 敏剛 松隈 敬太 塚本 直樹 柏村 正道 柏村 賀子 木寺 義郎 岩坂 剛 井上 功 杉森 甫
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.196-202, 1982-02-01

1973年より1980年までの8年間に,広汎性子宮全摘術を施行した396症例中,術後摘出標本の子宮頚部亜連続切片の病理組織検索で,初期浸潤癌,あるいは,それより軽度の病巣しか認めなかった症例62例を発見した.これらの症例は術前,浸潤癌と診断して(Ib期54例,IIb期8例)手術を行なったにもかかわらず,実際は初期浸潤より軽度の病巣しか無かったわけで,術前の生検診断の誤りと考えざるを得ない.そこで術前の生検標本を再検討した結果,生検標本を誤まって真の浸潤癌と診断した原因として,1.腺管内侵襲を深い浸潤と間違った.2.標本がtangentialに切れているために浸潤と間違った.の二大原因が考えられた.さらに,生検の小切片のみでは,浸潤癌であることは診断できても,それが初期浸潤であるか,真の浸潤であるかの鑑別は困難であることが多いことも判った.そこで,同時に行なった細胞診,コルポ診の診断を調べてみると,いずれか一方が真の浸潤癌を否定した症例は44.2%,両者共真の浸潤癌を否定した症例は37.2%であった.少なくとも,コルポ診,細胞診共に真の浸潤癌を否定し,生検のみ真の浸潤癌と診断した場合は,円錐切除診を行在い,over diagnosisを防ぐべきであったと考えられた.癌の診断における生検診断のover diagnosisの可能性については過去にあまり注目されていないが,前述した様な可能性を考慮に入れて,臨床医は生検診断を鵜呑みにせずに,細胞診,コルポ診,臨床所見を総合して,疑問があったら積極的に円錐切除診を行なう態度が必要であろう.