著者
西田 正人 笠原 国武 金子 實 岩崎 寛和 林 一雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.1103-1111, 1985-07-01
被引用文献数
11

39歳の子宮癌患者から新しい子宮体内膜腺癌細胞株(Ishikawa株)の樹立に成功した.細胞は単層シート状に配列して増殖し,容易に重積する.培養開始後3年8ヵ月を経過して安定した増殖を続けており,現在第60代に至っている.細胞増殖倍加時間は9代,40代,50代でそれぞれ約36,29,27時間である.染色体はdiploid領域にモードを持っている.本細胞をヌードマウスに移植すると分化型子宮体内膜腺癌に一致した管状腺癌組織を再構築する.移植腫瘍組織とin vitro培養細胞からエストロゲン,プロゲステロンレセプターが共に陽性に検出された.in vitroにおいて培地中からestrogenを除去しても細胞増殖は維持され,本細胞株はestrogenに依存性を示さなかった.
著者
斉藤 静雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.358-364, 1968-04-01

妊娠時におけるestrogens (ES) 代謝は胎児・胎盤を1つの単位として複雑な過程で行なわれていると考えられている. 私は胎盤に含まれているESがどの様な割合で胎児または母体側へ移行し, それがどの様なES代謝上の意義を持つか, 特に estrone (EO), estradiol (ED) が estriol (ET) 合成に対して, どの程度の役割を演じているかを知る目的で, 臍帯動・静脈血液, 胎盤後血腫および母体末梢静脈血液中の遊離型および結合型ESの3分画を測定し検討を試みた. (1) 臍帯動・静脈血中ESの大部分は結合型ETで血清50ml当り動脈側67.0μg, 静脈側52.0μgと動脈側の方が高値を示した. このことは同一新生児について比較した値でも同様であった. 結合型EO, EDは動脈側0.7μg, 0.4μg,静脈側 0.5μg, 0.3μgと共に微量であった. 遊離型ESは動脈側はEO O.2μg, ED 0.2μg, ET 0.7μgと極めて微量であったが, 静脈側ではEO 0.9μg, ET 3.9μgが認められた. しかしEDは0.4μgと微量であった. これら遊離型ESは胎盤内のESが移行したものと思われる. (2) 胎盤後血腫および母体末梢血中ES量を比較すると, 末梢血中では遊離型ESは血清50ml当りEDが1.2μg認められたのみで, EO, ETは0.3μg, 0.4μgと微量であった. しかし胎盤後血腫中では遊離型のEO 0.9μg, ED 3.6μg, ET 3.7μg が認められた. 結合型ESはEO, EDは胎盤後血腫中では2.1μg, 0.6μg, 末梢血中では3.4μg, 0.8μgとほぼ同値を示したが, ETは胎盤後血腫中の方が8.2μgと末梢血中の4.6μgより高値を示した. 以上の結果より考えると, 胎盤内のEO, EDが胎児側へ移行する割合は極めて少ない事から, これらがETの主な前駆物質であるとは考えられない. また臍帯動脈側のETが静脈側より高値を示すことから胎児側でもETの産生が行なわれているものと考えられる.
著者
遠藤 哲宏
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.459-467, 1971-06-01
被引用文献数
1

子宮収縮の機構を解析する研究の一環として分娩時子宮収縮に要するエネルギー量を測定し,また分娩が新生児のエネルギー代謝にどの様な変化を与えているかという点から新生児のエネルギー代謝量を測定し次の結果を得た. 1) 分娩時母体エネルギー代謝量(10分間)は,分娩第1期初産婦20.5±2.48Cal/10min経産婦,22.2±2.21Cal/10min,第2期初産婦39.5±5.68Cal/10min,経産婦34.3±3.16Cal/10min,第3期初産婦11.2±2.75Cal/10min,経産婦10.8±2.09Cal/10minで,分娩時第2期に最も大きく,第1期はその1/2〜2/3,第3期は1/3〜1/4であつた.単位時間内に於けるエネルギー代謝量は初産婦でも経産婦でも殆んど同じである. 2) 分娩時子宮収縮1回に要するエネルギーは,分娩第1期初産婦は2.8±0.57Cal経産婦は3.3±0.38Cal,分娩第2期初産婦は3.4±0.75Cal経産婦は3.4±0.22Calであつて,いづれも同程度のエネルギー代謝量であつた. 3) 分娩1回に要する総エネルギー代謝量は,初産婦では薬2000Cal経産婦800Calとなり,初産婦は経産婦の約2.5倍のエネルギーを消費することになる. 4) 新生児エネルギー代謝量は,分娩直後が最も高く,分娩後2時間まで高値が続き,4時間後より急激に低下し,6時間より24時間まで低い値で安定している.その後3日,4日はやや低く,5日よりやや高くなる. 5) 未熟児は,分娩直後にやや高いが,2時間後より6日目まで正常新生児に比較して低い値で変動も少ない. 6) 正常分娩児と異常分娩児との間には差は認められなかつた. 7) 早産児,予定日超過児のエネルギー代謝量は正期産児よりやや低い. 8) 新生児の運動に要するエネルギー代謝量は,哺乳10.2±4.08Cal/kg/h,沐浴5.3±1.96Cal/kg/h.啼泣20.6±5.96Cal/kg/h.経運動11.5±6.02Cal/kg/h.であつた. 9) 分娩後チアノーゼを認める新生児と正常新生児を比較すると,酵素消費量とエネルギー代謝量は差が著明で,チアノーゼ郡は正常群の約2/3である.
著者
木下 勝之
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp."204(S-128)", 2000-02-01
著者
近藤 正彦 岡村 靖
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.2000-2004, 1987-11-01
被引用文献数
24

冷え性の病態に関する基礎的データの収集と,自律神経失調症との関連の解明を目的とし,冷え性に関する質問紙とConell Medical Index(CMI)を用いて調査を行い統計学的考察を加えた.対象は318名の女性で,年齢は20から51歳,平均26.4±6.1歳であった.結果は以下のとおりであった.(1) 対象の38.7%が冷え性を感じており,更年期のみならず若年者にも冷え性は認められた.(2) 発症の平均年齢は19.3±5.1歳であり,思春期後期の発症が多かった.(3) 冷えを多く感じている身体部位は足,ついで手であった.(4) 冬もしくは就寝前に冷えは増強した.天候や身体状況,とくに寒冷刺激により冷えが変化することが特徴的であった.(5) 冷え性の多くは生活上の工夫をしていたが治療を受けたものはわずかであった.(6) 冷え性のものには他の多くの身体症状を認め,CMIの得点も高かった.これより心因の関与の少ない本態性の冷え性は,自律神経失調症の部分症状としてとらえ得ると考えられた.(7) 冷え性のものの母親も多くは冷え性であり,冷え性の発症に関して遺伝的要因の関与が示唆された.
著者
金子 啓二郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.697-706, 1979-06-01

新生児の胎生年齢評価法中,信頼度の高いDubowitz法を,低出生体重児を含む日本人新生児に応用して,300例につき,彼等の成績と比較し,さらにその簡略化を試み,以下の結果を得た.1)21項目の評価総点Xと胎齢Y間の回帰方程式はY=0.3012X+22.914(相関係数r=0・9298.延評価回数n=720)で,平均95%信頼限界は±1.98週(初回評価のみ)であった.評価得点と胎齢間の相関度では,神経学的得点(10項目)は体表的(11項目)および総点(21項目)に比し,推計学的に有意に低く,体表的得点と総点間には有意差がなく,また評価時期についても有意差を認めなかった.我々とDubowits et al.の相関係数の比較におては,生後24時間未満の総点間で,後者が有意に高かった.3) 個々の評価項目の得点と胎齢間の相関度は,乳頭形成が最高で,乳腺の大きさ,足底のしわの順であり,項目相互間の交又相関は,前記上位の2項目間が最高であった.4) 300例中201例につ得点の生後日数による影響を,300例以外に評価した80例につき検者間の誤差を検討した.5) 以上の結果より,総点法より"腹位懸垂"を除いた20項目と"耳の形+乳腺の大きさ+足底のしわ"の3項目を,2生日以内 (72時間未満) に評価する法を我々の簡便法とした.後者の回帰直線は,Y=1.5150X+26.130 (r=0.8949・n=481) で,rは総点法よりも有意に低く,回帰曲線に対し平均95%信頼限界は±2.07週 (初回評価のみ)であった.6) Newcastle score (1976) に関する我々の結果によると,上凸の放物線状の回帰曲線に対して,平均95%信頼限界は±2.05週であった.7) 未経験者2人と著者間の誤差については,総点法と20項目法では有意差がなく,高度の2簡便法中Newcastle scoreは評価法を調整して一致化をはかった後も,"皮膚のきめ"の影響から有意差を残したが,我々の3項目法では有意差がなくなった.故に,簡便法では精度の低下よりもむしろ検者間の誤差が問題であり,ルーチンの検査としては検者間での評価方式の一致化が重要である.
著者
中村 幸雄 吉村 泰典 玉樹 有告 山田 春彦 飯塚 理八 鈴木 正彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.2157-2164, 1987-12-01
被引用文献数
1

Polycystic Ovary Syndrome (PCO) 9例に対し,Luteinizing Hormone Reieasing Hormone analogue(LHRHa,Buserelin)を900μg/day点鼻投与,human menopausal gonadotropin (hMG) を90分毎に律動的に皮下投与し (LHRHa+hMG法),hMG単独の律動的皮下投与法 (bMG法) と比較した.LHRHa+hMG法は,12周期全周期排卵し,2例妊娠 (1例単胎女児出産,1例流産),1例Ovarian Hyperstimulation Syndrome (OHSS) 発生した.hMG法は26周期中22周期排卵,妊娠0,OHSS 5 例であった.排卵迄のhMG使用量はLHRHa+hMG法 : M±SE : 1,700±203IU,hMG法 : 2,344±223IUでLHRHa+hMG法が有意に少なかった.LHRHa+hMG法では,LHRHa投与後LH,Fonicle Stimulating Hormone (FSH),LH/FSH比,Estradiolは有意に低下し,hMG投与後LHはさらに低下,FSHは上昇傾向を示した.hMG法では,hMG投与後,LH,FSH,LH/FSH比は有意に低下するが,LH/FSH比の低下の割合は少ない.以上,LHRHa+hMG法は,hMG法に対しLH,LH/FSH比を低下せしめ,hMG便用量少なく,排卵率高く,OHSS発生率の少ない排卵誘発法といえる.