著者
園部 勲
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.105, no.6, pp.101-153, 2002

本論文では、非摂勅諭的な量子重力理論に対するスピンフォーム模型についてレビューする。スピンフォームとは時空に2次元的に広かったオブジェクトである。この描像が、ループ量子重力理論やPonzano-Regge-Turaev-Viro状態和模型、BF重力理論などなどからそれぞれ独立に導かれることを説明し、スピンフォームという統一的観点による量子重力理論の定式化について解説する。
著者
瀧 雅人
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.119, no.4, pp.171-243, 2012

2009年にAlday、GaiottoおよびTachikawaによって発見された新しいタイプの「双対性」について概論したい.摂動的な計算結果の観察から、彼らはN=2四次元超対称ゲージ理論のインスタントン分配関数が、二次元共形場理論のVirasoro共形ブロックと解析的に結びついていることを見抜いた.すなわちこれは四次元ゲージ理論の分配関数と二次元共形場理論のカイラル相関関数が等価であることを意味している.つまり少なくともこれらのセクターにおいては、両理論の間に双対性が存在していることが強く示唆されている.このレビューでは、共形ブロックとインスタントン分配関数の組み合わせ論的計算手法を紹介する.その後でAlday-Gaiotto-Tachikawaの原論文に従い、AGT対応を発見法的に確認する.さらに、その他の双対的記述や弦理論との関係、あるいは証明の試みなどについても紹介したい.なお本稿は、2010年11月に東京工業大学素粒子論研究室で行ったセミナーの講義ノートを大幅に加筆したものである.
著者
篠原 俊一
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.101, no.3, pp.111-202, 2000

我々の住む世界を、パラメーターのない理論により第一原理から導き出す事が、素粒子物理学の究極の目的であることは疑いのないことである。しかしこの問題に対し、摂動的な弦理論は不適当であり、更に一段階進化した理論が必要とされている。IIB行列模型(IKKT模型)はそのような理論の候補として提案された模型である。それは摂動的弦理論を内包しているだけにとどまらず、いままでは全く手が出なかった非摂動的な問題に解決の糸口を与え、現実世界の記述へ向けた新しい道筋を示した。IIB行列模型では時間、空間と物質はもはや不可分なもので、全てがダイナミカルに影響をおよぼし合うのである。本論文ではIIB行列模型の弦理論との関係、そしてIIB行列模型に特有な性質についてレビューを行う。