著者
志水 彰 山下 仰
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

1.研究目的:コミックビデオの視聴による笑いの前後で血液中のNK細胞活性を測定し、笑いによる変化を求めた。笑いの評価は主観的な面白さをPOMSで、客観的な評価を大頬骨筋電図の面積積分値の大きさで行った。2.実験の進行状況:現在までに男女あわせて12名(男性8名、女性4名)の測定を終えている。(平均年齢22.9±3.5歳)最終的に20人を測定する予定である。3.現在までの結果:(1)主観的な評価でコミックビデオを面白いと感じた場合は、視聴後にNK細胞活性は有意に上昇した。(2)先の結果をビデオ視聴前と視聴後で比較した場合、コミックの場合もコントロールの場合もNK細胞活性に有意な差は見られなかった。(3)コミックビデオ視聴前後のNK細胞活性の差とコントロール刺激ビデオ視聴前後のNK細胞活性の差を比較した場合にも有意な差は見られなかった。(4)この結果は、笑うという動作はNK細胞活性に影響せず、面白いという情動はNK細胞活性を上昇させると解釈できる。4.今後の研究の展開について:今後は被験者の性格、気分、大頬骨筋電図の面積積分値とNK細胞活性の関係をさらに求めたい。また、今までの成績では男性被験者に比較して女性被験者はNK細胞活性の変化に乏しかったが、これも感受性の違いによるものと思われるが、現在のところ女性被験者数が少ないためにはっきりしたことはいえないのでこの点についても検討したい。
著者
鈴木 真
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、幸福とその測定に関する哲学研究を、経験科学における研究と接続することを試みた。とりわけ、哲学、特に倫理学において重要な、誰かにとっての善としての幸福(福利)とは何かという問を再考し、その意味の幸福が自然界ではどのような物事に存しているかを、心理学や脳神経科学などの経験科学の知見にもよりながら検討し、福利に関する一種の反応依存説(好み依存説)を擁護した。また、心的状態が経験に適応するという事態が反応依存説に問題を引き起こすという批判を論駁した。そして、各人の幸福が測定や比較が可能なものとして存在すると主張するには、誰かにとっての善に関する想定を現実を踏まえて弱める必要があると論じた。
著者
高木 史人 矢野 敬一 立石 展大 蔦尾 和宏 伊藤 利明 生野 金三 浮田 真弓
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は当該研究の2年目として、平成28年度に行ったシンポジウムの成果を活かして、さらなる研究の深化を期した。具体的には国語科の文部科学省検定済教科用図書及びその教師用指導書に徴して、「伝統文化」教材の扱われ方と指導書における指導法への言及の分析を進めた。なお、平成29年告示の『小学校学習指導要領』では、従来の学習指導要領における国語科の「3領域及び1事項」という区分が見直された。従来の1事項が〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕であったものが、今次の学習指導要領では大きく〔知識及び技能〕〔思考力、判断力、表現力等〕〔学びに向かう力、人間性等〕の3本の柱が立てられ、その中の〔知識及び技能〕が「(1)言葉の特徴や使い方に関する事項」「(2)情報の扱い方に関する事項」「(3)我が国の言語文化に関する事項」に分かたれ、その(3)が従来の〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の前半「伝統的な言語文化」部分に相当するものと見られる。この間の学習指導要領の推移、変化の分析に多くの努力を行った。これらは生野金三・香田健児・湯川雅紀・高木史人編『幼稚園・小学校教育の理論と指導法』(平成30年2月、鼎書房刊、206ページ)にまとめられた。また、高木は「社会的・共=競演的でひろい悟り」へのアプローチ―小学校教育史、国語科教育史との係わりから―」(『口承文芸研究』第41号、平成30年3月、日本口承文芸学会刊)において平成29年12月に行った科研費メンバーによるシンポジウムの概略を紹介しつつ、現行の伝統文化教育の根拠となっている平成18年改教育基本法第2条第5項の淵源が、昭和16年3月改正の小学校令第1条第3項にあることに触れて、日本の長い教育史の中ではこれは伝統的でなったことと結論づけた。伝統という語じたいが昭和初期の流行りであった。
著者
森 明彦
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

平安時代銭貨の小型化・粗悪化の原因を料銅不足とする通説は説得力に欠ける。本研究は鋳造実験を通して関係史料を見直し、平安時代貨幣制度崩壊の原因を考究した。その成果は次の三点である。すなわち、①平安時代最初の銭貨隆平永寳に関する『日本後紀』の欠字部分の推定を行い、『出土銭貨』33号に奈良朝銭貨から隆平永寳への転換に対する新見解を発表し、②工房和銅寛での鋳造実験で、銭貨粗悪化と料銅不足および小型化との関係が直接的ではない事を確かめ、内容の一部を続日本紀研究会記念論文集に投稿し、③平安時代銭貨の料材に古和同も含まれるとの説に対し、金属組成・同位体比の点から成立しないことを発刊予定の著書に組込んだ。