著者
北川 勝彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.363-383, 2001-03-15

本研究ノートは、1980年代中頃から1990年代末にいたるまでに発表された南アフリカ経済史に関する諸研究の展望を試みたものである。主として『南アフリカ経済史ジャーナル』(South African Journal of Economic History) 、『南アフリカ歴史ジャーナル』 (South African Historical Journal) および『南部アフリカ研究ジャーナル』 (Journal of Southern African Studies) に掲載された諸論文を調査研究した。南アフリカ経済史の解釈をめぐる「リベラル派」と「ラディカル派」 の論争をふりかえり、経済史研究で主として取り上げられた諸問題一現代南アフリカ経済論、農業と農村社会の変化、鉱業と製造業、19世紀植民地経済、奴隷制社会などーを考察するにあたって重要と考えられる諸研究を順次整理した。現在、南アフリカ経済史研究は、1880年代から両大戦間期にかけての工業化をめぐる問題に焦点、があわせられているように思われる。
著者
古松 丈周
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.315-329, 2017-12-10

本稿は、ポール・M・スウィージーの資本主義発展論を、彼のローザ・ルクセンブルク論の検討を通して明らかにするものである。ローザ・ルクセンブルクの『資本蓄積論』は、資本主義の枠内での資本蓄積の可能性を否定し、剰余価値実現のための需要を非資本主義世界に求めた。この理論は多くのマルクス主義者によって否定されてきたが、スウィージーはこの理論を否定しながらも、彼女を高く評価し、彼女の問題意識を引き継ぎながら自らの理論を構築していった。初期の主著『資本主義発展の理論』のローザ・ルクセンブルク論、そしてローザ・ルクセンブルク『資本蓄積論』のイタリア語版によせた序文にはルクセンブルクに対する批判とともに、彼女の問題意識をどう引き継ぐかという問題意識が示される。そして『資本主義発展の理論』の16章「世界経済」では、ルクセンブルクの理論を世界経済分析に発展させ、非資本主義地域が資本主義地域の資本輸出の対象となり、資本蓄積の源泉となることを明らかにしたのである。
著者
本多 新平
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.611-629, 1967-10-25
著者
許 海珠
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 = The economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.261-284, 2019-03

近年、無人コンビニ・スーパー、二次元コード決済、シェア自転車など、「中国発イノベーション」が世界の関心を集めている。「中国発イノベーション」はどのようにして起こったのか、本論はアリババとテンセントの事例を通して、中国のIT企業が躍進する背景と要因、IT企業の成長と「中国発イノベーション」との関係性について考察した。
著者
中澤 信彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.353-364, 2017-12

このたび『バーク読本-保守主義の父〉再考のために』と題する書籍を刊行する機会に恵まれた。同書は、科研費にもとづく共同研究の研究成果として、専門分野を異にする10名のバーク研究者が執筆したものである。この小論では、筆者が編者として編集作業の過程で振り返らざるをえなかった自分自身の研究史に触れながら(Ⅰ)、同書がバーク研究・保守主義研究のいかなる新地平を切り拓こうとしたのかを確認し(Ⅱ)、同書の成果がこれからのマルサス研究にもたらす豊かな可能性の一端を瞥見したい(Ⅲ)。
著者
杉原 四郎
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.725-740, 1994-10-30
著者
佐藤 真人
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.101-142, 2008-12-05
著者
松尾 精彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.93-114, 2016-10

2000年10月5日の第一回抽選から始まった番号選択式の宝くじLOTO6も,去年2015年9月7日には第1000回目の抽選を迎えた.この宝くじは,購入者が1~43の数字の中から6個の数字の組合せを選び,主催者が用意した抽選器が抽出する6つの番号(本線番号)のうち最低3個同じ番号が共有されれば賞金がもらえる.この抽選器を製作した業者や抽選器を操作する主催者が未熟であったり,不正を犯したりしない限り,この宝くじの本選番号を当てることは不可能である.ましてや,当選確率の高い組合わせを見つけることも同様に不可能である.それにもかかわらず,いくつかの雑誌やWebサイトで本選番号の予選法が述べられている.これらの予選法は,本選番号となりうるいずれの組合せも互いに独立で等しい確立で選ばれることを無視し,何らかの傾向があると主張するものである. 大抵は,ある種の性質を有する組合せを選ぶと当選する確立が高くなると主張する.しかしどの方法も,その事象の確立が高いだけのことで,その事象が数多く生起しても何ら不思議はないものである.これらの予測法は多岐に渡り,事象の起こる確率を計算することが困難であるものがほとんどであるので,このような俗説についてここでは述べない.あえて言っておくと,3回の異常な抽選を除いた997回の抽選で期待される1等の口数は2606口であるのに対し,実際の当選口数は2521口数でしかない.つまり,予想は役に立たないということだ.ここではあくまでも,抽選においては,どの本選番号も独立で同確立で選ばれることを仮定して計算を行う.この論文で議論するのは,ロト6購入者の番号の選び方に傾向があるのかを調べることである.雑誌の情報などではなく,購買者集団が自らの意思で,どのような組合せを選ぶのかを調べることである.機械(抽選器)には傾向はないが,人には傾向がある.その傾向を明らかにすれば,他の人々が選びそうな組合せを避けることができ,仮に1等が当たった場合には賞金を独り占めにする確立が高まる.
著者
中澤 信彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3-4, pp.249-271, 2015-03-10

本稿の課題は、ハイエクがバークをどのように読んだのか、その読解の詳細を追跡することによって、ハイエクの保守主義観の特質と意義を明確化することにある。ハイエクが残したバークへの言及は分量的に決して少なくないが、断片的なものばかりである。そこで本稿では、ハイエクがバークの膨大なテクスト群のうちの何を参照したのかにとりわけ着目しつつ、ハイエクの主要著作におけるバークへの言及の有様を時系列的に整理する。本稿の構成は以下の通りである。第1節では論文「真の個人主義と偽りの個人主義」におけるバークへの言及を検討する。第2節では壮年期の主著『自由の条件』を検討し、第3節では『自由の条件』の補論「なぜ私は保守主義者ではないのか」を検討する。第4節では『自由の条件』と並ぶ後年の主著『法と立法と自由』を検討する。最後にこれまでの議論を整理し、「つまるところ、ハイエクはバークをどのように読んだのか?」という問いに、できるだけ明快な答えを与えたい。
著者
上久保 敏
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.81-88, 2002-06-01
著者
植村 邦彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.289-305, 2010-03-10

英語の〈civil society〉は、16世紀末から使われ始めた言葉である。日本語では通常「市民社会」と訳されているが、この言葉は本来アリストテレス『政治学』における「国家共同体」の訳語として英語に導入されたものであり、17世紀のホッブズとロックにいたるまで、この意味で使われた。この言葉の前史と初出時の語義を確認することが、本稿の課題である。
著者
佐藤 真人
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.105-128, 2011-03-10

本稿は、資本主義的蓄積の敵対的性格の一側面の分析として、戦後日本の資本主義的発展に伴う資本利益率格差の推移に実証面から第一次的に接近する。資本利益率は、経済学において伝統的な利潤率とは区別されるが、企業経営分析では一般的であり、当事者の意識により近い点で独自の意義を持つ。また資本利益率の中では、総資本営業利益率、税引き前当期純利益率、及び自己資本営業利益率に注目する。さらに自己資本営業利益率との関係で登場する自己資本比率(=資本/資産=1-負債/資産)、及びその格差にも触れる。 本稿の設問を直裁に表すと、戦後日本の資本利益率、及びその格差は、どのように推移しているか。またそれらは資本主義的発展と、どの様な相関があるかということである。この観点からの観察と分析の結果、資本利益率(及び格差)と経済全体の資本主義的発展を表す諸変数との間に多少の条件付で強い負の相関関係が確かめられる。その単純化した経済的意味は、経済全体の資本主義的発展が急速な時期は資本金規模別資本利益率 格差が縮小する(逆は逆)ということである。
著者
中屋 宏隆 河﨑 信樹
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.197-215, 2014-09

ドイツは、2011年に脱原発を再び宣言した。日本では、その政策実現に向けた動向が注目されている。また、多くの研究文献でも、ドイツの脱原発の動きは検討されており、本稿では、そうした研究史の吸収に加え、これまであまり検討されて来なかったドイツの原子力発電のエネルギー政策上の意義を考察するための研究材料を整理することを目的としている。その結果、ドイツはかつて十分に原発大国と言える状況に陥っていたという事実とドイツのエネルギー政策の中での原子力発電の役割を再検討する必要性が明らかになった。