著者
清水 嘉子 関水 しのぶ 遠藤 俊子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.261-270, 2010 (Released:2011-04-07)
参考文献数
13
被引用文献数
7 3

目 的 本研究では,臨床での汎用性を高めるため,清水,関水,遠藤他(2007)が開発した多面的な育児幸福感を捉えるCHS(Child-care Happiness Scale)の短縮版を作成し,その信頼性と妥当性の検討を行った。対象と方法 6歳以下の乳幼児を持つ母親を対象に,CHSの育児の中で感じる幸せな気持ちが生じる様々な場面についての41項目を,5段階で評価を求めた。併せてCHS短縮版の妥当性の確認のため,心理的健康を測定する「主観的幸福感」と「ベック絶望感」の回答も求めた。結 果 有効回答672名であった。短縮版の項目を選定するために,CHSの41項目の回答について因子分析を行い,「育児の喜び」,「子どもとの絆」,「夫への感謝」の3因子からなる13項目を選定した。3つの因子のそれぞれの項目の内的整合性を表すα係数は,0.77~0.86と充分な値が得られた。CHS短縮版と主観的幸福感との間には,有意な正の相関があった。一方,ベック絶望感とは,有意な負の相関があった。また,「育児の喜び」と「子どもの絆」は母親年齢が高くなると低下する傾向が,一方「夫への感謝」は末子年齢が4歳以上よりも1歳以下の母親の方が高く,また1人っ子の母親が最も低くかった。結 論 考察では,CHS短縮版とオリジナルCHSとの違いやその実用性,そして今後の問題ついて議論した。CHS短縮版は心理的健康との関連性が示唆された。CHS短縮版はコンパクトとなったので,個々の母親の育児幸福感の様子を表すプロフィールを母親自身にすぐフィードバックすることができ,母親たちが自分の子育てに対する気持ちを振り返る資料として今後役立てられることが期待できる。
著者
樋貝 繁香 遠藤 俊子 比江島 欣慎 塩江 邦彦
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Japanese Lournal of Maternal Health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.91-97, 2008-04-01
参考文献数
21
被引用文献数
1

生後1ヵ月の子どもをもつ父親の産後うつの実態と関連要因を把握することを目的に関東近郊の9ヵ所の医療機関で調査した。調査内容は,基本属性,子どもの出生時の状況,職場環境,職務内容,給与に関する満足感尺度,産後うつを測定する尺度はEPDSとCES-Dを用いた。配布数は592名で回収数は166名(28.04%)であった。EPDSでは13.75%,CES-Dでは18.67%の父親がうつ状態であった。産後うつとの関連要因は,職務内容や職場環境,給与であり,子どもの出生時の状況との関連性は認めなかった。父親への精神的サポートは,親としての自信がもてるアプローチの必要性が示唆された。
著者
清水 嘉子 関水 しのぶ 遠藤 俊子 宮澤 美知留 赤羽 洋子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.215-224, 2011

<B>目 的</B><br> 本研究の目的は,子どもが乳幼児期にある母親の育児幸福感を高めるために3か月間に2時間による6回の少人数参加型プログラムを開発し評価した。<br><b>方 法</b><br> 9人から10人を1グループとするプログラムを2回実施した。プログラム参加群(以下プログラム群とする)19人に対し,プログラムの初回参加前と最終回参加後および最終回参加後1か月に心理学的指標(心理尺度)による育児ストレスや育児幸福感,自尊感情と生理学的指標(自律神経活動,脳波,唾液CgA)によるリラックスやストレスの評価をした。さらに,プログラムに参加しない対照群16人を設定し,同様の評価を実施した。プログラムの内容は,自分について話し仲間作りをする,子どもへの思いを振り返る,育児の幸せな瞬間を大切にする,互いの頑張りを認める,自分を認め自信を持つ,人生設計を考える,自分の悩みについて聞いてもらうなどであり,毎回腹式深呼吸と,笑顔作りのストレッチを取り入れた。心理的指標と生理的指標についてはそれぞれ,群と時点の効果を検討するために二要因分散分析が行われた。<br><b>結 果</b><br> 本プログラムの心理学的指標には育児ストレスにおける心理的疲労の群主効果を除き有意な差はみられなかった。心拍数の群主効果,自律神経活動におけるHFの時点主効果,脳波における,α1とα3に交互作用が有意であった。<br><b>結 論</b><br> 今後は,より効果的なコースプログラムの検討が課題となる。とくに毎回のプログラム終了後に子どもを交えた雑談の時間や個別相談の時間を確保すること,プログラム終了後の継続的な支援の必要性が課題として残された。
著者
成田 伸 大原 良子 鈴木 幸子 遠藤 俊子 齋藤 益子 吉沢 豊予子 野々山 未希子 水流 聡子 跡上 冨美 矢野 美紀 西岡 啓子 加藤 優子 森島 知子 齋藤 良子 角川 志穂 段ノ上 秀雄 黒田 裕子 工藤 里香
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

望まない妊娠や性感染症罹患の予防を専門的に支援する避妊・性感染症予防カウンセラー育成プログラムを構築した。プログラムは6日間の集合教育と専用のウエブサイトを活用した自己学習からなり、2008年度と2009年度の2回にわたって助産師を対象に開催した。育成プログラムの成果を評価するために、受講者と非受講の比較群で学習成果を比較した結果、受講者に知識の増加や態度の変容がみられた。また受講者のカウンセリング能力が向上した。今後は、育成されたカウンセラーの実践自体を評価する研究が必要である。
著者
清水 嘉子 関水 しのぶ 遠藤 俊子 落合 富美江
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.367-375, 2010-07

本研究では,母親や末子の年齢,子どもの数といった属性が,母親の肯定的情動としての育児幸福感に影響があるかどうか,母親の就労状況別(フルタイム群,パートタイム群,家事従事群)に比較し検討する。参加者は,764名の0〜6歳の子どもをもつ母親である(フルタイム219名,パートタイム234名,専業主婦311名)。育児幸福感の測定には清水らが開発したChildcare Happiness Scale(以後CHSとする)用いた。母親年齢,子ども数,末子年齢を独立変数,8つの育児幸福感の下位尺度得点を従属変数としたモデルを,パス解析で多母集団同時比較を行い検討した。その結果,すべての群において子ども数は,CHSの8つの下位尺度得点に全く影響を与えなかったが,しかし末子年齢は,フルタイム群において「親としての成長」の得点に正の影響,そして専業主婦では負の影響があり,一方パートタイム群では影響がなかった。フルタイム群において,母親年齢は「子どもの成長」尺度得点に正の影響を与えたが,他の群においては影響がみられなかった。この結果より,フルタイムで働く母親にとって,母親や末子の年齢が増すことは「親としての成長」や「子どもの成長」の育児幸福感を高めることが示唆された。さらに,就労形態の異なる母親に対する育児教室における支援について検討した。