著者
矢沢 正士
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1979, no.80, pp.1-8,a1, 1979

成因の異なる3種の粘土質土壌(沖積土, 洪積土, 火山灰土)の乾燥収縮土塊を用いてその膨潤とスレーキング挙動に及ぼす吸着カチオン種の影響について実験的な検討を行った。その結果, 土塊の膨潤性は構成粘土鉱物種, 吸着カチオン種ならびに土塊の乾燥ステージにより大きく変動し, さらに膨潤性と土塊のスレーキングタンプは密接な関係のあることが明らかとなった。
著者
吉田 貢士 塩沢 昌 田中 幸夫 星川 和俊
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.967-970,a1, 2007

平成16年10月に発生した新潟県中越地震では, 中山間地域に散在した集落へ至る交通網等が寸断され, 新潟県旧山古志村をはじめとする各地で集落が孤立し,「孤立集落」の深刻さを浮き上がらせた。本研究では, 中越地震において被害が最も甚大であった旧山古志村および小千谷市, 川口町の信濃川右岸地域を対象として集落の孤立リスクを既存のGISデータをもとに検討した。また, 容易に入手可能な50mメッシュ標高データを用いて, 中越地震発生時の道路寸断に伴う集落の孤立状況を勘案し, 各道路の寸断リスク・集落の孤立リスクの分布図作成を行った。
著者
山崎 不二夫
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木研究 (ISSN:18847218)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.250-274, 1939

土壌の機械的組威は土壌の孔隙率pを變化させると共に比表面<I>U</I>を變化させることによつて滲透に影響する。<I>p</I>と<I>U</I>を含む滲透公式<BR>〓…(4)再出<BR>〓…(5)再出<BR>は<I>n</I>と<I>m</I>の値を如何にとるべきか, また<I>k</I>が<I>U</I>-2に比例する關係が粒徑の一様な部分砂に對して成立すると同様に粘土や粒徑範園の廣い土壌に對しても成立するか, などの問題を含んでゐる。<BR>筆者は土壌を粒徑によつて数箇の部分に分別し, 各分別部分及びそれらを人工的に配合した試料を用ひて變水頭透水試験装置により滲透試験行ひ, まつ上記の問題を検討し, 次にその結果を用ひて土壌の機械的組成とその締固め後における滲透との關係を考察し, 更に進んで滲透の側からTalbot公式の適用限界を吟味した。その要點は次の通りである。<BR>1) Darcyの滲透公式は砂から粘土に至る廣い粒徑範園を持つ配合試料に對してもよく適合する。<BR>2) <I>n</I>=2, 3, 4; <I>m</I>=0, 1, 2, 3;lq=0としてρ0<I>n</I>/(1-p)2を計算し, 何れの場合に(4)式が最もよく成立するかを検した結果, <I>n</I>=4, <I>m</I>=2或は<I>n</I>=4, <I>m</I>=3の場合が最もよく, <I>n</I>=3, <I>m</I>=3の場合がこれに次ぐことを知つた。實際にはlg=0でないから, これにある値を與へるとすると(筆者は假りにlg=1.5として計算してみた), 結局<I>n</I>=4, <I>m</I>=2前後が最も妥當性に富むと考へられる。しかし<I>n</I>=4, <I>m</I>=3或は<I>n</I>=3, <I>m</I>=3としても甚しい差がある鐸ではない。<BR>3) 滲透係数と比表面との關係<I>k</I>∞<I>U</I>-2は部分砂についてのみならず, 粘土に對しても, また砂から粘土に至る粒子の配合試料に對しても成立する。<BR>4) <I>n</I>=4, <I>m</I>=2, lg=1.5として(4)式をC. G.S.單位で計算すると, 粒形係数μ は比表面の小さい粒徑の一様な試料においては2~4, 粒徑範圍の廣い配合試料においては1前後のものが多い。<BR>5) 粘土(0.01<I>m</I><I>m</I>以下)含量が同じで機械的組成の異る諸配合試料の締固め後の滲透係数を比較してみると, 粘土含量10%以上の場合には比表面の影響よりも孔隙率の影響の方が大きい。即ち同じ粘土含量(10%以上)ならば配合がよく締固めのよいものほど滲透が小さい。<BR>6) 配合試料の締固め後の滲透係数は, 一般に粘土含量が多いほど小さい。しかし粘土含量が20%以上になると大差を示さない。<BR>7) 各種試料の有效直徑と締固め後の滲透係数とを兩對数紙にプロットすると, 粒徑範圍が狹くかつ一様な試料(<I>n</I>o<I>n</I>-graded <I>m</I>aterial)は一つの直線をなし, 大小粒子の配合の最もよい試料(well-graded<I>m</I>aterial)は他の一つの直線をなし, 粒徑範圍は廣いが配合のよくない試料(poorly-graded <I>m</I>aterial) は配合の良否に應じて兩直線の間に位置を占める。<BR>8) 土堰堤の許容滲透係数を0.0<SUP>5</SUP>5c<I>m</I>/secとすると, Talbot公式(1)の指数<I>n</I>の滲透の側からの制限は締固めの側からの制限<I>n</I>=0.25~0.50で充分である。即ち<I>n</I>=0.25~0.50においてTalbot配合は0.055c<I>m</I>/sec以下の滲透係数を與へる。
著者
齋藤 俊樹
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.931-935,a2, 2000

モンキーチークは, タイ国が国王の助言に基づいて実施している, 洪水対策を主目的としたプロジェクトである。タイ国でこれまで有効に利用されて来なかった広い土地に調整池を建設し, また, 水路の拡幅などにより河川および水路のピーク流量を低減させ洪水被害の軽減を図るものである。現在は, 土地所有者との合意が得られず, 水路のしゅんせっ, 拡幅, 樋門およびポンプ場の建設に重点がおかれている。また, 日本の技術協力による水理モデル解析が行われた。<BR>国王の助言で建設されたラマ9世調整池は, 掘削した土を民間に売ることで, 建設費の軽減が図られたモンキーチークのモデルである。国と地方が相互に協力し, このモデルを発展させる取組みが行われている。
著者
飯田 晏久 愈 炳強 北村 泰介
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1159-1162,a1, 1994

北海道は開拓の経過, 資源の賦存条件, 産業のあり方などから, 本州地域の中山間地域とは異なる形態を持っている。北海道の空知地方は, 積極的に農業土地基盤整備を行ってきたが, 基盤整備が立ち遅れているとみられる地域も多く存在している。これを分析の対象とすることで, 北海道型中山間地の振興施策の必要性を検証できると考え, その活性化の糸口を提示することを本報の目的とした。また, 従来の市町村レベルでの解析から一歩踏み込んで, 集落単位の独自のデータを用いた。<BR>中山間地域の活力は, 地域農業構造を表す代表指標を特性値とする主成分分析と質的データを統計的に扱う場合に援用される判別分析法を用いて解析を行った。
著者
宗岡 寿美 田頭 秀和 辻 修 土谷 富士夫 矢沢 正士
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.805-809,a2, 2005
被引用文献数
1

平成15年 (2003年) 9月26日午前4時50分ごろに発生した「平成15年 (2003年) 十勝沖地震」はマグニチュードM8.0かつ最大震度6弱の大地震であり, 農地・農用施設にも多くの被害が発生した。ここでは, 十勝管内で調査された十勝沖地震の農地被害状況を報告する。<BR>この地震に伴い液状化による噴砂現象が各地の圃場で認められ, 収穫直前の作物などに被害がもたらされた。これら噴砂土の物理的性質 (とくに粒度分布) は発生地域の違いにより異なっていた。また, 農地災害地区内の圃場を試掘調査することにより, 地震に伴う地すべりや地割れに起因して暗渠管の断裂や沈下といった被害が多く発生していたことなども確認された。
著者
岸川 健 本城 守義 増崎 一夫
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.819-824,a1, 1993

長崎県の雲仙普賢岳の噴火災害は, 平成2年の噴火以来, まだ, 火山活動を継続しているが, これによる被害は, 人的並びに物的に計り知れない状況である。<BR>本文は, 長崎県が平成4年度に被害農地の復旧・復興計画を樹立したところであり, その概要を述べたものである。<BR>計画の内容は, 有史後の噴火歴や今回の噴火災害の概要, 県内における島原半島の農業並びに被災地域の農業の状況, 土地利用と営農の現況と計画等を踏まえ, 今計画では, 被災地と周辺地域一体について, 区画整理と畑地潅概施設の整備を進めていくことにしており, 事業計画の項目ごとに計画の基本方針を述べている。
著者
安富 六郎 須藤 清次
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木研究. 別冊 (ISSN:05495652)
巻号頁・発行日
vol.1963, no.7, pp.86-91, 1963

土壌の混合および高分子の添加によって, 流動形式および降伏値の変化を土壌・水分系の充てんという立場から解釈した。<BR>(1) 関東ロームの表土および鶴岡土壌ではセン断速度チクソトロピーであるが, これに対し関東ローム心土の土壌ペーストは多くは逆セン断速度チクソトロピー流動である。<BR>(2) 風乾処理で高pF土壌水が脱水されて, ダイラタント流動がみられる。<BR>(3) 粒度の異なる粒子の混合では, 同一濃度でも降伏値の最低値をもつような混合比が存在する。<BR>(4) 高分子添加による降伏値増加は多量になると効果が少ない。降伏値増大の効果は関東ロームに対する添加では小さい。<BR>(5) 以上の諸現象は土壌粒子の非自由水の外力に対する自由水化による充てんの粗密で理解できる。
著者
吉田 昭治
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.599-606,a1, 1982
被引用文献数
1

新潟県のような冬期温暖, 湿雪の多雪・豪雪地帯における次のような雪とかかわる農業土木的課題の重要性について論じた。道路除雪・屋根雪処理に必要な消雪用水への農業用水の冬期転用, 畑作に対する根雪期間, 消雪期の制約条件緩和のための融雪促進法と融雪水圃場排水, 融雪出水による災害の特性と防災対策, 融雪水のダム貯留ないし地下水人工涵養による防災と水資源化, 地すべりに対する融雪水, 湛水田の影響などである。
著者
川本 治 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.385-393, 2009-08-25

粘性土から成る農地斜面の長期安定問題における初生破壊解析を念頭に置いて,地すべり崩土の力学特性と変形の局所化に関する実測値を示した.不攪乱試料の圧密・排水三軸試験結果における中位のひずみ(軸ひずみ15%程度)では,せん断帯幅は微小亀裂に囲まれた粘土土塊の変形集中領域の幅として評価するのが適切であり,粒子径が重要な役割を果たす粒状体材料の場合とは異なる機構によってせん断帯が形成されると考えられた.この結果に基づいて田中による弾塑性有限要素モデルのパラメータ決定と三軸圧縮試験の有限要素解析を行った.浅層すべりの斜面中央部付近で採取された複数の試料の応力-ひずみ曲線は,過去の地すべり履歴を反映すると考えられる多様なパターンを示しており,有限要素解はこれらの供試体における平均的挙動を表現すると考えられた.
著者
常田 岳志 宮崎 毅 溝口 勝
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 = Journal of the Japanese Society of Irrigation, Drainage and Reclamation Engineering (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.595-598, 2006-07-01

泥炭地湿原は, 生物多様性維持や世界の気候系に不可欠な水と炭素の貯蔵といった機能を有する貴重な生態系である。一方で温室効果ガスであるメタンの放出源としても泥炭地は注目されている。一見全く異なった観点から捉えられてきた泥炭地であるが, 地下水面下の泥炭土中で生成され, 気泡として存在するメタンが双方の観点から大きく注目されている。それは放出源の視点からは, 気泡の放出が重要なメタン放出経路であること, 湿原保全の観点からは, メタンバブルの存在が泥炭地の水文環境の形成に決定的な役割を演じていること, が証明されつつあるからである。本報では, 泥炭地科学の一つとして, メタンバブルに関する最先端の研究を紹介する。