著者
狩野 泰則 佐々木 猛智 石川 裕
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.129-140, 2001-09-30 (Released:2018-09-01)
参考文献数
23

鹿児島県上甑島の汽水湖(貝池 : 模式産地)ならびに高知・愛媛県の3河川(赤野川・仁淀川・蓮乗寺川)河口域の礫下から得られたコハクカノコ科の新種Neritilia mimotoiツバサコハクカノコ(新称)を記載する。貝殻は白色半透明, 殻径2 mm内外で, 殻形は変異に富み, 内唇滑層後端には時にツバサカノコ(アマオブネ科)同様の翼状突起を備える。本種はジャマイカ産のNeritilia pusillaに近似するが, サイズがより大きく, また殻口がより広がる点で区別される。同属のその他の既知種はすべて有色(赤褐色∿黄褐色)の殻をもち, 本種と容易に区別される。
著者
加瀬 友喜 狩野 泰則
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-8, 1999-03-31 (Released:2018-01-31)
参考文献数
15

A bizarre gastropod species, Pluviostilla palauensis from a shallow-water, submarine cave (gloomy to totally dark inside) in Palau is described as a new genus and species based on the empty shells. The species is small in size and has unique shell features such as an overall inverse raindrop-shape, architectonicoidean-like planispiral early teleoconch whorls, abapically projected tube-like aperture and hollowed umbilicus completely closed by the whorls. Shell wall microstructure and protoconch morphology suggest a possible affinity to neritopsines, but it is very tentative and the systematic position of this species is still unknown. A sedentary mode of life, as in architectonicoideans, is inferred for the species.
著者
奥谷 喬司 上村 清幸
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.39-_47-2_, 1973-07-31 (Released:2018-01-31)

房総半島勝浦沖南東10∿20浬に形成されるスルメイカ漁場から, 当業者が"アブライカ"と通称しているイカが屡々混獲される。著者の一人, 上村が1972年8月, 10月, 12月に同漁場の漁獲物中から見出した"アブライカ"の9標本(5♂, 4♀)につき研究した結果, これが日本未記録属Nototodarus PFEFFER, 1912に属する未記載の一種と判明したので, ここにNototodarus nipponicus n. sp.の新名を与え記載した。和名にはアブライカを採用したい。Nototodarus属とした根拠は, (1)漏斗溝に, 縦襞しかない(Todarodinaeの特徴), (2)側腕大吸盤角質環上の歯のうち最外縁の1歯が他のものより著るしく大きい, (3)両腹腕とも交接腕として変形していることである。同属には4既知種(N. sloani (GRAY)=属模式, ニュージランド∿フィジイ;N. gouldi (MCCOY)タスマニア∿オーストラリア;N. hawaiiensis (BERRY)ハワイ;N.philippinensis Vossフィリッピン∿南シナ海)があるが, 本新種は, それらとは(1)外套膜表面に一種のモザイク様又は小鱗様の彫刻がある, (2)外套膜が太短い, (3)鰭幅が外套長の70%に及ぶ, (4)鰭の後縁角が著るしく大きく, 120°∿130°であるなどの点から容易に区別される。なお, これらの特徴のうち(1)は, 本種の属するアカイカ科Ommastrephidae中には他の例を見ない。本新種に関して生物学的知見はほとんどない。しかし, これが勝浦南東沖を中心とする10∿20浬の大陸棚縁辺部に形成されるスルメイカ漁場から混獲される所から見ると, 1972年は黒潮の接岸傾向が強く, 魚群の滞泳する深度100∿250mの範囲は夏冬を通じて20°∿11℃(中心15℃)にあったので, 本新種もほぼこの付近に分布するものと考えられる。
著者
デビス ジョージ M.
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-36, 1969-05-31 (Released:2018-01-31)

従来, Tricula minima(BARTSCH)として知られて来た貝はgenus Oncomelaniaに属するものと考えられる。本種はDAVIS(1967)がすでに報告したPomatiopsinae亜科の特徴をすべて備えている。すなわち, 1)陰茎の乳頭 2)陰茎先端の繊毛部 3)貯精嚢はもつれた様になっていること 4)卵巣と精巣の構造 5)螺せん状の卵管 6)交接嚢の右側縁に発し嚢の前端にある通常みられるような受精嚢鞘 7)輸精管(sperm duct)の位置 8)pomatiopsineに共通である歯舌にみられる内縁舌尖の多いこと(7∿12)。などの特徴から本種をgenus Oncomelaniaに属させるのが妥当である。また, O. minimaとO. hupensisならびにO. hupensisの5亜種とは次のような種の特徴によって区別される。すなわち, 1)O. minimaでは陰茎の基部で輸精管は大きくしかも極度に発達するが, これは後者にはみられない。 2)O. minimaでは射精管の分岐小管は頸部"neck"の中にあるが, 後者のそれは陰茎の基部にみられる。 3)O. minimaの陰茎は腺状末端が著明であり, 陰茎前縁全体に分布するGl_3タイプの腺細胞が後者では認められない。 4)O. minimaの精巣は胃と重なりあっているが, 後者では重なっていない。 5)O. minimaの受精嚢の位置は交接嚢の右前側縁あるいは交接嚢の前方に寄っているが, 後者では輸卵管の捻転部と交接嚢の中央部背面の間におしこめられている。 6) O. minimaは内縁歯の歯尖が11-13であるのに対し, 後者は7-11である。
著者
Roland Houart
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1-4, pp.27-38, 2017-11-27 (Released:2018-01-11)
参考文献数
27

エントツヨウラク属Siphonochelus Jousseaume, 1880の日本産の2種,エントツヨウラクS. japonicus A. Adams, 1863とニッポンエントツヨウラクS. nipponensis Keen & Campbell, 1964の同定には著しい混乱があった。これはS. nipponensisのパラタイプの誤同定に寄るところが大きい。本タクソンのホロタイプは寺町コレクションに(現在は鳥羽水族館所蔵),パラタイプはスタンフォード大学の地学コレクションに保管されているが,後者の方がのちの多くの論文に図示されている。このたび,鳥羽水族館所蔵のS. nipponensisのホロタイプの写真を基に再検討を行った結果,パラタイプは未記載と考えられる別種の未成熟個体であることがわかった。一方のS. japonicusの方もホロタイプが失われていることで,混乱している状況があったため,ネオタイプを指定することで同定を確定させた。さらに,モザンビークからエントツヨウラクに近似した1新種を記載し,日本産の2種を含む既知種と比較を行った。Siphonochelus japonicus A. Adams, 1863エントツヨウラク本種は南アフリカのS. arcuatus(Hinds, 1843)の異名とされることが多かったが,より小型で膨らみが強く,縦張肋は尖らず丸みが強いことで区別される。波部(1961:続原色日本貝類図鑑)は初めて本種を正しく図示している。土屋(2017:日本近海産貝類図鑑第二版)がこの名前で図示しているのは,未記載の別種と思われる。Siphonochelus nipponensis Keen & Campbell, 1964ニッポンエントツヨウラク従来しばしばエントツヨウラクと混同されており,例えば土屋(2017:日本近海産貝類図鑑第二版)が本種として図示しているのは,エントツヨウラクである。エントツヨウラクと比較して,貝殻はより細長く伸び,後水管がやや平たく伸長する。Siphonochelus mozambicus n. sp.(新種)殻は本属としては小型,殻長/殻径比2.0,やや幅広い槍の穂先形。縫合下の段差は非常に狭く,弱く凹状となる。原殻はやや大きく1.5~1.75層,平滑で幅広い。成殻は最大4層。各螺層に4本の断面が丸い縦張肋がある。後水管は基部がやや平たく,開口部は丸く細まり,殻軸に対して70°の角度となる。殻口は小さく卵形で連続する。前水管は短く,殻長の19~21%,基部は太く,先端に向かって急激に細まり,直線的あるいは弱く背部へ曲がる。タイプ標本:ホロタイプMNHN IM-2000-33180,殻長6.1 mm。タイプ産地:モザンビーク海峡,25°11´S, 35°02´E,水深101~102 m。著者は当初本種をエントツヨウラクに同定していたが,のちに追加標本を調査することにより,種レベルで区別されることが分かった。エントツヨウラクは本種よりも明らかに大型で膨らみが強く,縫合下の括れが浅い。
著者
ダラール Y. M. パンジヤ G. T.
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.83-90, 1973-12-31 (Released:2018-01-31)

アシヒダナメクジの足腺から分泌される粘液の組織化学的研究を行ない又, 生活史の間における変化を見た。アシヒダナメクジの粘液腺は足の後端背側にあり, 腺は柱状の上皮細胞からなりこれから粘液を分泌する。成熟個体ではこの粘液は用いられたすべての組織化学的染色法によってよく染まったが, 幼若個体では染色反応は微弱であった。反応は性的成熟に伴い強さを増し, 成熟すると最大となる。粘液の成分は酸性粘液多糖と, 中性の粘液物質とサルファミュシンであった。これらの粘液物質の濃度は生活史中種々に変化をすることが判った。
著者
森井 悠太
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1-4, pp.15-26, 2019-05-15 (Released:2019-06-06)
参考文献数
33

森林の皆伐は森林生態系へ壊滅的な損害を与えうる。皆伐によって森林生態系の生物量や種多様性が著しく減少することが知られている。しかしながら,皆伐の長期的な影響を評価した研究は少ない。本研究では,原生林と二次林の林床土壌中の陸産貝類相を定量的に調査し,過去の皆伐の影響の評価を試みた。北海道,黒松内低地帯に位置するブナの優占する原生林と二次林をそれぞれ2箇所ずつ調査地とし,調査地それぞれの林床に50-cm × 50-cmの区画をそれぞれ6箇所,林床に設置した。リター層中の陸産貝類を目視で摘出したのち,双眼実体顕微鏡を用いて種を同定した。原生林と二次林との間で種密度と個体密度を比較したところ,種密度・個体密度共に二次林よりも原生林において有意に高い値が示された。原生林2箇所のうちのひとつ,歌才ブナ林では特に陸産貝類相の多様性が高く,50-cm × 50-cmの区画で平均239.2個体・7.2種もの陸産貝類が採集された。一方,二次林では2箇所の平均で12.3個体・4.8種を記録するのみであった。その中でも,殻長2.0 mm以下の微小貝の個体密度が二次林において有意に低かった。加えて,成長錐を用いて二次林の樹齢を推定した結果から,調査対象とした2箇所の二次林はいずれも100~150年前に伐採されたことが示された。これらの結果は,森林伐採が100年以上にも渡って林床の陸産貝類相に影響を与えることを示している可能性がある。
著者
陳 充 奥谷 喬司 梁 前勇 邱 建文
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1-4, pp.29-37, 2018-06-08 (Released:2018-06-29)
参考文献数
34

南シナ海北部,中国海南島南西沖で新しく見つかったメタン湧水域“海馬湧水”(水深1,372 m~1,398 m)からシロウリガイ類の未記載種が発見されたので新種として記載した。“Calyptogena” marissinica n. sp. ハイナンシロウリガイ(新種・新称)ホロタイプの殻長は103.7 mmであるが,パラタイプの一つ(死殻)は殻長188.0 mmに達する。この類としてはやや太短く,殻高は殻頂の後方で最大となり殻長の20%前後。殻皮は光沢のある藁色で,成長脈が著しい。月面も楯面も無い。靭帯は後背縁の1/2に達する。右殻の中央主歯(Fig. 3: 1; 以下同様)は三角錐状で殻頂下主歯前肢(3a)は弱いが後肢(3b)は強く,前肢と150°をなす。左殻の中央主歯は二叉し(2a, 2b),殻頂下前主歯は不明瞭であるが,後主歯(4b)は放射状に配置する。歯丘(nr)はよく発達する。殻頂下洞は無い。備考:本種のミトコンドリアCOI領域のデータから,本種は南海トラフの水深2,084 mから記載されたニヨリシロウリガイCalyptogena similaris Okutani, Kojima & Ashi, 1997と同じクレードに入ることが明らかである。ニヨリシロウリガイとは一層細長く湾入した腹縁を持つことなどから一見して区別ができるが,現在いわゆる広義のCalyptogenaは形態よりも分子系統解析によって属が細分化されつつあるのにも拘らず,ニヨリシロウリガイは何れの既存の“属”にも配置されていない現状から,本新種の属位は敢えてCalyptogenaのままとして扱った。
著者
高 悦勉 夏苅 豊
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.126-145, 1990-08-31 (Released:2018-01-31)

Karyological studies were made on the embryos of seven cephalopods using chopping method. Two sepiids (Sepia esculenta and Sepia lycidas) and three loliginids (Sepioteuthis lessoniana, Heterololigo bleekeri and Photololigo edulis) were all 2n=92. Their karyotypes and total length of chromosomes were slightly different from each other. Two octopuses (Octopus ocel-latus and O. vulgaris) were both 2n=60. Their karyotypes and total length of chromosomes were, however, remarkably different from each other.