著者
張 成年 丹羽 健太郎 岡本 俊治 村内 嘉樹 平井 玲 日比野 学 涌井 邦浩 冨山 毅 小林 豊 鳥羽 光晴 狩野 泰則
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.895-902, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
37
被引用文献数
3 5

2007 年に千葉県で突如発生した寄生性のカイヤドリウミグモ Nymphonella tapetis は愛知県,福島県でも確認された。これら 3 海域で採取した 110 個体の COI 塩基配列(562 bp)を決定した。個体間の塩基置換率は低く(0.2±0.07%),3 標本間で遺伝子型頻度に有意差は無かったことから,ごく最近に少数の同祖群から派生した個体群と考えられた。18S rDNA 配列による系統解析では,本種はトックリウミグモ属 Ascorhynchus より派生した分類群であることが示された。
著者
髙野 剛史 田中 颯 狩野 泰則
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1-4, pp.45-50, 2019-05-15 (Released:2019-06-06)
参考文献数
29

ハナゴウナ科Eulimidaeの腹足類は,棘皮動物を宿主とする寄生者である。同科のMucronalia属は形態および生態情報に乏しいグループで,タイプ種のフタオビツマミガイM. bicinctaは生貝での採集報告がなされていない。Warén(1980a)による殻形態に基づく属の概念では,つまみ状の原殻,内唇滑層,ならびに中央部の突出した外唇を有することが重要視されている。また2既知種がクモヒトデ寄生性であることが知られており,これが本属貝類に共通の生態とみなされている。本報では,神奈川県真鶴町の潮下帯より採取されたアカクモヒトデOphiomastix mixtaの腕に外部寄生するMucronalia属の1新種を記載した。Mucronalia alba n. sp.オビナシツマミガイ(新種・新称)原殻がつまみ状に突出すること,殻口内唇に滑層を有すること,また外唇は中央部が突出し横からみると大きく曲がることから,Mucronalia属の一種であると判断された。殻は本属としては細く塔型,最大5.5 mm,白色半透明である。後成殻は6.6巻,螺層は時に非対称に膨れ,螺塔は成長に伴い不規則に太くなる。外唇縁痕は不定期に現れ,僅かに褐色を呈する。殻口は細長い卵型。軸唇はまっすぐで,体層の軸から20°傾く。原殻は淡い褐色。本種の殻形は,同じく日本に産するヤセフタオビツマミガイM. exilisと,オーストラリアのクイーンズランドから記載されたM. trilineataに似る。一方これら2種は殻に褐色の色帯を有し,また軸唇の傾きが弱い。オマーンをタイプ産地とするM. lepidaとM. oxytenes,メキシコ西岸のM. involutaはいずれも本種と同様白色の殻をもつが,前2種は殻が太く螺層の膨らみが弱い点で,またM. involutaは本種と比してはるかに小型である点で区別される。タイプ種であるフタオビツマミガイM. bicincta,オマーンに産するM. bizonula,スリランカのM. exquisitaは,色帯のある円筒形の殻をもつ点で本種と明瞭に異なる。上述の種のほか,コガタツマミガイ“M.” subulaやヒモイカリナマコツマミガイ“M. lactea”がMucronalia属として扱われることがある。しかしながら,前者は殻口外唇が湾曲せず,カシパンヤドリニナ属Hypermastusに含めるのが妥当である。後者は,殻形態,寄生生態および予察的な分子系統解析(髙野,未発表)により,セトモノガイ属Melanellaの一種であると考えられた。しかしながら,Eulima lactea A. Adams in Sowerby II, 1854が同じMelanellaに所属すると考えられるため,ヒモイカリナマコツマミガイに対するlactea A. Adams, 1864は主観新参ホモニムとなる。そこで,ヒモイカリナマコツマミガイに対する代替名としてMelanella tanabensisを提唱した。東アフリカのザンジバル諸島産で,同じくヒモイカリナマコに内部寄生する“Mucronalia” variabilisもセトモノガイ属に含めるのが妥当と考えられ,本論文で属位を変更した(Melanella variabilis n. comb.)。
著者
髙野 剛史 田中 颯 狩野 泰則
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.45-50, 2019

<p>ハナゴウナ科Eulimidaeの腹足類は,棘皮動物を宿主とする寄生者である。同科の<i>Mucronalia</i>属は形態および生態情報に乏しいグループで,タイプ種のフタオビツマミガイ<i>M. bicincta</i>は生貝での採集報告がなされていない。Warén(1980a)による殻形態に基づく属の概念では,つまみ状の原殻,内唇滑層,ならびに中央部の突出した外唇を有することが重要視されている。また2既知種がクモヒトデ寄生性であることが知られており,これが本属貝類に共通の生態とみなされている。本報では,神奈川県真鶴町の潮下帯より採取されたアカクモヒトデ<i>Ophiomastix mixta</i>の腕に外部寄生する<i>Mucronalia</i>属の1新種を記載した。</p><p><i>Mucronalia alba</i> n. sp.オビナシツマミガイ(新種・新称)</p><p>原殻がつまみ状に突出すること,殻口内唇に滑層を有すること,また外唇は中央部が突出し横からみると大きく曲がることから,<i>Mucronalia</i>属の一種であると判断された。殻は本属としては細く塔型,最大5.5 mm,白色半透明である。後成殻は6.6巻,螺層は時に非対称に膨れ,螺塔は成長に伴い不規則に太くなる。外唇縁痕は不定期に現れ,僅かに褐色を呈する。殻口は細長い卵型。軸唇はまっすぐで,体層の軸から20°傾く。原殻は淡い褐色。</p><p>本種の殻形は,同じく日本に産するヤセフタオビツマミガイ<i>M. exilis</i>と,オーストラリアのクイーンズランドから記載された<i>M. trilineata</i>に似る。一方これら2種は殻に褐色の色帯を有し,また軸唇の傾きが弱い。オマーンをタイプ産地とする<i>M. lepida</i>と<i>M. oxytenes</i>,メキシコ西岸の<i>M. involuta</i>はいずれも本種と同様白色の殻をもつが,前2種は殻が太く螺層の膨らみが弱い点で,また<i>M. involuta</i>は本種と比してはるかに小型である点で区別される。タイプ種であるフタオビツマミガイ<i>M. bicincta</i>,オマーンに産する<i>M. bizonula</i>,スリランカの<i>M. exquisita</i>は,色帯のある円筒形の殻をもつ点で本種と明瞭に異なる。</p><p>上述の種のほか,コガタツマミガイ"<i>M.</i>" <i>subula</i>やヒモイカリナマコツマミガイ"<i>M. lactea</i>"が<i>Mucronalia</i>属として扱われることがある。しかしながら,前者は殻口外唇が湾曲せず,カシパンヤドリニナ属<i>Hypermastus</i>に含めるのが妥当である。後者は,殻形態,寄生生態および予察的な分子系統解析(髙野,未発表)により,セトモノガイ属<i>Melanella</i>の一種であると考えられた。しかしながら,<i>Eulima lactea</i> A. Adams in Sowerby II, 1854が同じ<i>Melanella</i>に所属すると考えられるため,ヒモイカリナマコツマミガイに対する<i>lactea</i> A. Adams, 1864は主観新参ホモニムとなる。そこで,ヒモイカリナマコツマミガイに対する代替名として<i>Melanella tanabensis</i>を提唱した。東アフリカのザンジバル諸島産で,同じくヒモイカリナマコに内部寄生する"<i>Mucronalia</i>" <i>variabilis</i>もセトモノガイ属に含めるのが妥当と考えられ,本論文で属位を変更した(<i>Melanella variabilis</i> n. comb.)。</p>
著者
狩野 泰則 佐々木 猛智 石川 裕
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.129-140, 2001-09-30 (Released:2018-09-01)
参考文献数
23

鹿児島県上甑島の汽水湖(貝池 : 模式産地)ならびに高知・愛媛県の3河川(赤野川・仁淀川・蓮乗寺川)河口域の礫下から得られたコハクカノコ科の新種Neritilia mimotoiツバサコハクカノコ(新称)を記載する。貝殻は白色半透明, 殻径2 mm内外で, 殻形は変異に富み, 内唇滑層後端には時にツバサカノコ(アマオブネ科)同様の翼状突起を備える。本種はジャマイカ産のNeritilia pusillaに近似するが, サイズがより大きく, また殻口がより広がる点で区別される。同属のその他の既知種はすべて有色(赤褐色&acd;黄褐色)の殻をもち, 本種と容易に区別される。
著者
加瀬 友喜 狩野 泰則
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-8, 1999-03-31 (Released:2018-01-31)
参考文献数
15

A bizarre gastropod species, Pluviostilla palauensis from a shallow-water, submarine cave (gloomy to totally dark inside) in Palau is described as a new genus and species based on the empty shells. The species is small in size and has unique shell features such as an overall inverse raindrop-shape, architectonicoidean-like planispiral early teleoconch whorls, abapically projected tube-like aperture and hollowed umbilicus completely closed by the whorls. Shell wall microstructure and protoconch morphology suggest a possible affinity to neritopsines, but it is very tentative and the systematic position of this species is still unknown. A sedentary mode of life, as in architectonicoideans, is inferred for the species.
著者
狩野 泰則 佐々木 猛智 石川 裕
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.129-140, 2001-09-30
被引用文献数
1

鹿児島県上甑島の汽水湖(貝池 : 模式産地)ならびに高知・愛媛県の3河川(赤野川・仁淀川・蓮乗寺川)河口域の礫下から得られたコハクカノコ科の新種Neritilia mimotoiツバサコハクカノコ(新称)を記載する。貝殻は白色半透明, 殻径2 mm内外で, 殻形は変異に富み, 内唇滑層後端には時にツバサカノコ(アマオブネ科)同様の翼状突起を備える。本種はジャマイカ産のNeritilia pusillaに近似するが, サイズがより大きく, また殻口がより広がる点で区別される。同属のその他の既知種はすべて有色(赤褐色&acd;黄褐色)の殻をもち, 本種と容易に区別される。
著者
加瀬 友喜 狩野 泰則
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-8, 1999-03-31
被引用文献数
2

A bizarre gastropod species, Pluviostilla palauensis from a shallow-water, submarine cave (gloomy to totally dark inside) in Palau is described as a new genus and species based on the empty shells. The species is small in size and has unique shell features such as an overall inverse raindrop-shape, architectonicoidean-like planispiral early teleoconch whorls, abapically projected tube-like aperture and hollowed umbilicus completely closed by the whorls. Shell wall microstructure and protoconch morphology suggest a possible affinity to neritopsines, but it is very tentative and the systematic position of this species is still unknown. A sedentary mode of life, as in architectonicoideans, is inferred for the species.
著者
川口 博憲 狩野 泰則 三浦 知之
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.45-53, 2006-07-20

This paper provides new knowledge on the geographic distribution, habitat preference and identification of Littoraria species on the tidal flats of mainland Japan. Littoraria ardouniana is first recorded from Kyushu and Honshu islands. Other mainland species include L. intermedia and L. sinensis, which have been frequently confused with each other in previous literature. The color of the kidney is used here as a new taxonomic character for the genus to distinguish the latter two taxa. A few juveniles of L. scabra have been collected from the Kii Peninsula in Honshu, but they presumably represent incidental occurrences of this tropical planktotrophic species. At the mouth of Honjo River in southern Kyushu, L. ardouniana, L. intermedia and L. sinensis abundantly co-occur on rocks and concrete walls in the upper littoral zone, while the first species is also found on reeds and tree branches in the supralittoral zone.
著者
狩野 泰則
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

深海の熱水噴出孔・冷湧水域の化学合成群集,クジラ骨・沈木などの生物遺骸群集に生息する腹足綱貝類の6系統(ユキスズメ科・ネオンファルス上目・ホウシュエビス上科・ワダツミシロガサ上科・ワタゾコニナ上科・ミジンハグルマ科)について, DNA塩基配列の比較に基づく分子系統樹を構築した.その結果,深海の化学合成生物群集がこれまでの一般的認識より開放的な系である可能性が示された.