著者
山岸 健三 佐々木 隆行 加藤 真梨奈
出版者
名城大学農学部
巻号頁・発行日
no.54, pp.7-16, 2018 (Released:2018-07-18)

2005年頃から愛知県豊田市で全身黒色のクマバチが見られるようになり,外来種のタイワンタケクマバチ(Xylocopa tranquebarorum)であることが判明した。本種は台湾のみならず,中国本土の長江(揚子江)以南に広く分布しており,竹を営巣基質として利用する。本種が日本国内に広がった場合,在来種であるキムネクマバチ(通称クマバチ)(X. appendiculata circumvolans)への悪影響が懸念された。そこで,筆者らは外来種であるタイワンタケクマバチが在来種と生態的に競合する可能性や,日本における今後の分布拡大を予測するため調査を行った。1)花資源をめぐる競合について調査したところ,2種のクマバチは同じ花に飛来するものの,種間で競合している様子は見られなかった。2)本種の分布状況を調査したところ,2009年時点では合併前の豊田市全域に広がっている程度であったが,2011年には愛知県全域に分布を拡大していた。3)本種が営巣のために利用する竹を調査したところ,直径19~25mmの直立した枯れ竹に営巣し,青竹は使わなかった。しかし,畑の竹の支柱,竹箒や竹製の垣根などにも営巣することで経済的被害が見られた。4)本種の生活史と営巣活動を調査したところ,キムネクマバチと同様の生活史を持ち,4月に越冬から目覚めた新成虫が交尾し,メスが単独で枯れ竹に営巣を開始し,5~7月に花粉団子を巣の中に溜め子育てをした。新成虫は7月下旬から8月に羽化し,その後,巣の中で越冬していた。1節間(巣)あたりの新成虫数は平均6~7頭,越冬している成虫数は巣内に残された育房跡数の約9割で,越冬までの生存率は非常に高いことがわかった。5)以上のように,2種の生活様式はほぼ一致しているものの,本種は枯れ竹に営巣し,キムネクマバチは枯れ枝に営巣するため,生態的に競合する可能性は低いことがわかった。また,本種の耐寒能力と日本の各地の年最低気温を比較したところ,将来的に本種は関東以西の西日本に広く分布することが予測された。
著者
大谷 吉雄
出版者
日本きのこセンター菌蕈研究所
巻号頁・発行日
no.28, pp.251-265, 1990 (Released:2011-03-05)
著者
岸 茂樹
出版者
日本生態学会暫定事務局
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.61-64, 2015 (Released:2015-07-06)

アレンの法則とは、恒温動物の種内および近縁種間において高緯度ほど体の突出部が小さくなる傾向をいう。アレンは北アメリカのノウサギ属を例にこの仮説を提唱した。しかしこの例を含めてアレンの法則は検証例が少ない。そこで本研究ではアレンの法則が書かれた原典からノウサギ属Lepusのデータを抜き出しアレンの法則がみられるか検証した。その結果、相対耳長と緯度には有意な相関はみられなかった。相対後脚長、および体長と緯度には正の相関がみられた。したがって、アレンが記録した北アメリカのノウサギ属にはアレンの法則はみられず、むしろベルクマンの法則がみられることがわかった。相対耳長と緯度に負の相関がみられなかった主な原因は、低緯度地域にも耳の短い種が生息することである。耳の長さには緯度以外にも生活様式や生息場所が大きく影響するためと考えられる。