著者
神田 愛子 カンダ アイコ Kanda Aiko
出版者
同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
雑誌
一神教世界 = The world of monotheistic religions (ISSN:21850380)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.17-32, 2014-03-31

12世紀のユダヤ思想家マイモニデス(1138-1204)は、スペインのコルドバでラビの家系に生まれ育った。当時この地域はムワッヒド朝(1130-1269)下にあり、迫害を逃れるため一家はアンダルス南部と北アフリカを流転、モロッコのフェズ、イスラエルの港町アッコを経てカイロ旧市街フスタートに定住、自身はアイユーブ朝(1171-1250)の宮廷医となる。彼の著作には、アンダルス時代の『論理学』(Maqāla fī ṣināʿat al-manṭiq)や、ユダヤ暦に関する『置閏法』(Maʾamar ha-ʿibbur, 1157/1158)、転居後に執筆した『ミシュナー註解』(Pirush ha-mishnayot, 1161-1168)、『イエメン書簡』(Iggeret Teman, 1172)、『ミシュネー・トーラー』(Mishneh Torah, 1168-1177)、また哲学的著作『迷える者の手引き』(Dalālat al-ḥāʾirīn, 1185-1191)、『復活論』(Maʾamar tehiyyat ha-metim, 1191)の他、地中海沿岸のユダヤ共同体に書き送ったレスポンサや書簡が残存している。イスラーム王朝興亡の只中にあって、ユダヤ人のラビとして、またイスラーム王朝の宮廷医として、彼の遍歴が彼の著作にどう反映したのかを、『イエメン書簡』を中心に考察する。Moses Maimonides was born and grew up in Cordoba, Spain. At that time, Al-Andalus was under the control of the Almohad (1130-1269). Maimonides' family moved around Southern Spain and North Africa, through Fez and Acre, and finally settled in Fustat. He became a physician of the Ayyubid (1171-1250). His works include Treatise on the Art of Logic (Maqāla fī ṣināʿat al-manṭiq) and On the Jewish Calendar (Maʾamar ha-ʿibbur, 1157/1158), written during his stay in Al-Andalus; Commentary on the Mishnar (Pirush ha-mishnayot, 1161-1168), Epistle to Yemen (Iggeret Teman, 1172), and MishnehTorah (Mishneh Torah, 1168-1177) written after he settled in Fustat. His philosophical works include The Guide of the Perplexed (Dalālat al-ḥāʾirīn, 1185-1191) and The Treatise on Resurrection (Maʾamar tehiyyat ha-metim, 1191). Other works of Maimonides are responsa and epistles sent to the Jewish communities in the Mediterranean region. This essay will examine how his biography and the socio-political environment affected his works, in particular, Epistle to Yemen.
著者
瀧口 徹 カンダウダヘワ ギターニ ギニゲ サミタ 宮原 勇治 平田 幸夫 深井 穫博
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.513-523, 2008-10-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,発展途上にあって多宗教,多民族国家の一つであるスリランカにおける社会経済的要因と糖分摂取,歯磨き習慣,フッ化物歯磨剤および定期的歯科受診の4つの歯科保健行動との関連を分析することである.対象の西プロビンスは同国の9省(プロビンス)のうち管内の市町村間で最も社会経済的多様性がある.スリランカ国のうち最も都市化した西省の21小学校の12歳児男女949名が無作為抽出され,無記名自記式質問票を担任の監督のもと各家庭に配布し回収した.性別,地域差,民族,父母学歴,職業,収入,児童数,因子分析による社会経済的6因子,歯科保健情報源,および定期的歯科受診の10分類の要因系と前述の4種類の歯科保健行動との関連を多重ロジスティック回帰分析により分析し4つの歯科保健行動の要因系の違いを比較した.その結果,オッズ比が2.0以上を示した要因はタミール族がショ糖含有食品を制限していることが最大オッズ比(exp(-B)=5.44)を示し,次いでオッズ比が大きいものは最多民族であるシンハラ族のフッ化物歯磨剤使用(2.34)および歯科保健情報源としてのテレビ(2.32),生活必需品充足度(因子分析第1因子)と食間でのショ糖添加(2.16),シンハラ族の定期的歯科受診(2.11)であった.高有意性(p<0.001)を示す関係は6つあり,女性の歯磨き励行,生活必需品充足度と食間でのショ糖添加,ショ糖添加紅茶飲用およびフッ化物歯磨剤使用,定期的歯科受診と食事時・食間のショ糖追加摂取および歯磨き励行との関係であった.また2つ以上の歯科保健行動にかかわる指標は,民族,父親の学歴,生活必需品充足度および定期的歯科受診の4つであった.以上,本研究により性差,民族,父の学歴,生活必需品充足度および定期的歯科受診の5つが歯科保健計画策定,キャンペーンや活動に際して注目すべき要因であることが示された.
著者
丁 瑩娜 イスカンダル アルベルト 梅野 宜崇
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
計算力学講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp._261-1_-_261-2_, 2015

The sintering of nickel in the nickel and yttria-stabilized zirconia (YSZ) anode of a solid oxide full cell (SOFC) is investigated by molecular dynamics (MD) simulation. Low values of the work of separation (up to 500 mJ/m^2) between nickel and YSZ allows sliding of nickel nanoparticles. The sliding is significantly hindered when the work of separation increases up to 2500 mJ/m^2, which implies that the Ni surface diffusion and Ni(OH)_2 vaporization-deposition are supposed to be the main sintering mechanisms. Our MD simulations employing the reactive force field (ReaxFF) method indicate the possibility of the Ni(OH)_2 vaporization-deposition.
著者
瀧口 徹 カンダウダヘワ ギターニ ギニゲ サミタ 宮原 勇治 平田 幸夫 深井 穫博
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.524-533, 2008-10-30
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の目的はスリランカの12歳児DMFTの多寡に有意な歯科保健行動要因と社会経済的要因を確定し,重要な少数の予測要因に絞ることである.データはスリランカ国の西プロビンスの949名の学童からなる.3名の歯科医師がWHOの基準によって歯科健康診査を行った.DMFTを0と1以上の2区分にした指標を多重ロジスティック回帰分析(MLRA)の従属変数として用いた.MLRAの独立変数は4種類の歯科保健行動(4-DHBs),すなわちショ糖含有の食品もしくは飲料,歯磨き習慣,フッ化物歯磨剤使用,定期的歯科医療機関受診等,10種類の社会経済的要因からなっている.その結果,変数減少法によるMLRAで最終モデルと各変数のオッズ比が得られた.DMFTの分布は指数関数的な減少傾向を示した.男女間および3民族間のDMFTの違いは有意でなかった.フッ化物歯磨剤がDMFTに関連した最も影響力の強い保健行動であり,一方,最も重要な社会経済的要因は民族の違いであった.4-DHBsの組合せの違いは伝統的な宗教的な慣習や嗜好に由来するように思われ,う蝕に対して時に相加的効果,時に相殺的効果を及ぼすと考えられる.対象プロビンスとスリランカ全体の経済的発展に伴って将来のう蝕が増加する可能性は関連データの不足のため否定できない.それゆえ,今回明らかになったう蝕の要因をモニタリングし,西プロビンスの非常に低いDMFTの原因を解明するための疫学的研究が必要である.