著者
西條 辰義 西村 直子 広田 真一 樽井 礼 七條 達弘 草川 孝夫 瀋 俊毅
出版者
高知工科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

市場班では,実験により市場が理論どおり機能しないことを明らかにしている.たとえば,排出権取引において,投資の不確実性,投資のタイムラグがあると,効率性は達成できない.また,コメ市場においても,制度設計の失敗により,取引量が減少してしまうことを確認している.さらには,ノイズ・トレイダーによるバブル発生のメカニズムも明らかにしている.一方で,市場を公共財として捉え,そのような公共財が効率的に供給できる新たな仕組みのデザインに成功している.
著者
小林 盾 七條 達弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.142-155, 2017 (Released:2017-07-19)
参考文献数
3
著者
西本 真弓 七條 達弘
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.40, pp.37-49, 2007-05

我が国では,近年,未婚化や晩婚化,非婚化の進行が大きな社会問題となってきている。しかし,「一生結婚するつもりはない」と考えている未婚者はそれほど増加していないことから,未婚者の結婚意欲の変化が未婚化,晩婚化,非婚化の主たる要因とはいえない。そこで本稿では特に男性に注目し,結婚確率に影響を与える要因を明らかにすることを分析目的とする。推定には,総務省統計局が1986年,1991年,1996年に実施した『社会生活基本調査』の個票データを用いている。被説明変数に,既婚を1,未婚を0とする結婚ダミーを用い,プロビット分析を行った。推定結果から,非就業男性は,大企業の事務職と比較して結婚確率が50%以上減少することが明らかとなった。我が国の未婚男性における完全失業者やニートは増加傾向にあることから,結婚確率を上昇させるためには,失業者やニートを減少させるような対策が必要といえる。また,会社団体役員,管理職,そして商店主,工場主,サービス・その他の事業主,保安職は結婚確率が高いという結果が得られた。こうした収入が高く,安定している職業では結婚確率が高くなることが示されたといえる。
著者
七條 達弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.87-103, 2007 (Released:2007-08-03)
参考文献数
9
被引用文献数
1

囚人のジレンマゲームは、社会的ジレンマ状況を説明する単純化されたモデルとして、多くの研究がなされてきた。長期的な付き合い関係などで、協力が発生することが知れている。しかし、この結論を導くためには、強制的に同じ相手とゲームを継続するという仮定が必要である。現実には、パートナーの変更が可能であり、これにより協力の発生が阻害される可能性がある。そこで、本研究では、パートナー変更がある場合でも、協力が発生する事が可能であることを示す理論モデルを構築する。さらに、パートナーの分布変化がある場合を考慮すると、非協力の集団からの協力の発生という、協力の初期進化を説明することができることを示す。
著者
浜田 宏 七條 達弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.107-123, 2010

Boudon (1982)および Kosaka (1986)によって定式化された相対的剥奪の数理モデルは,主に同質なメンバーからなる集団のみを分析の対象としていたが,Yamaguchi (1998)およびReyniers(1998)の発展モデルにより,異質な成員からなる社会での相対的剥奪を分析できるようになった.本稿ではこれらのモデルを統合してさらに一般化することで,『アメリカ兵』に代表される経験的データをより体系的に説明することを目指す.モデルを分析した結果,投資コストについて恵まれた集団のほうが,恵まれていない集団に比して相対的剥奪率が常に高いという命題が得られ,この命題はデータによっても支持された.また理論的には,コストが連続分布に従う場合でも相対的剥奪率が昇進率の増加関数となる領域ならびに減少関数となる領域が存在する,というインプリケーションが得られた.
著者
七條 達弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.253-270, 2011 (Released:2012-09-01)
参考文献数
14

数理社会学における数理モデルと経済学におけるゲーム理論を対比しながら,社会学としての数理モデルについて論じる.意識変数を取り扱う等,主観的領域に一歩踏み込むのが社会学における数理モデルの特徴であると論じ,そのようなモデルは,たとえ,ゲーム理論の均衡分析で人々の行動を記述できる場合でも有意義であると論じる.さらに,数理社会学において土台となる基本原則を持つことを提案し,具体的に,三つの基本原則を使い,いくつかの数理モデルが,基本原則の派生型と解釈できる事を示す.
著者
浜田 宏 七條 達弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.107-123, 2010-03-31 (Released:2010-10-03)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Boudon (1982)および Kosaka (1986)によって定式化された相対的剥奪の数理モデルは,主に同質なメンバーからなる集団のみを分析の対象としていたが,Yamaguchi (1998)およびReyniers(1998)の発展モデルにより,異質な成員からなる社会での相対的剥奪を分析できるようになった.本稿ではこれらのモデルを統合してさらに一般化することで,『アメリカ兵』に代表される経験的データをより体系的に説明することを目指す.モデルを分析した結果,投資コストについて恵まれた集団のほうが,恵まれていない集団に比して相対的剥奪率が常に高いという命題が得られ,この命題はデータによっても支持された.また理論的には,コストが連続分布に従う場合でも相対的剥奪率が昇進率の増加関数となる領域ならびに減少関数となる領域が存在する,というインプリケーションが得られた.
著者
七條 達弘 西本 真弓
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.229-236, 2003-09-30 (Released:2009-01-20)
参考文献数
14

近年、我が国では少子化が急速に進行している。国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口―平成13(2001)~62(2050)年―』(2002)では、出生力低下の主な原因として、有配偶率の低下に加え、若い世代の夫婦における出生児数の減少が新たに認められている。 そこで本稿では、若い世代の夫婦がどのような要因により子供数を決定するのかについて明らかにすることを分析目的としている。推定には、総務省統計局が1996年に実施した『平成8年 社会生活基本調査』のうち、妻が20歳以上40歳未満のサンプルを用い、若い世代の夫婦において子供数を減少させる要因について考察する。 推定結果から、若い世代の夫婦が、非就業あるいは就業時間が比較的短い母親と同居している場合に子供数が多くなる傾向があることが示された。よって、家事や育児に関する外部サービスの充実が子供数上昇を促すと考えられる。
著者
七條 達弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.169-183, 2003-09-30 (Released:2009-01-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

進化ゲーム理論には、「生物系」「経済系」、「文化進化系」の三つの理論体系がある。「文化進化系」は、「経済系」の進化ゲーム理論を発展させたものである。「経済系」の進化ゲーム理論では、利得が高い戦略が広まっていくと仮定するが、「文化進化系」では、この仮定が成立しない場合についても取り扱うことができ、多数派同調の効果や、戦略表明の効果が存在する場合も考慮する。本論文では、それぞれの効果をもちいて、社会的ジレンマ状況における協力の発生を示すモデルを作成する。このモデルにより、繰り返しゲーム特有の戦略を考慮しなくても、協力が進化しえることが示される。
著者
大浦 宏邦 海野 道郎 金井 雅之 藤山 英樹 数土 直紀 七條 達弘 佐藤 嘉倫 鬼塚 尚子 辻 竜平 林 直保子
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

秩序問題の中核には社会的ジレンマ問題が存在するが、社会的ジレンマの回避は一般に二人ジレンマの回避よりも困難である。本研究プロジェクトでは、Orbel & Dawes(1991)の選択的相互作用の考え方を拡張して、集団間の選択的な移動によって協力行動が利得のレベルで得になる可能性を検討した。まず、数理モデルとシュミレーションによる研究では、協力型のシェアが大きければ選択的移動が得になる可能性があることが明らかになった。次に所属集団が変更可能な社会的ジレンマ実験を行った結果、協力的な人は非協力者を逃れて移動する傾向があること、非協力的な人は協力者がいるうちは移動しないが、協力者がいなくなると移動することが明らかとなった。この結果は、特に協力的なプレーヤーが選択的な移動をする傾向を持つことを示している。実験室実験の結果を現実社会における集団変更行動と比較するために、職場における働き方と転職をテーマとした社会調査を実施した。その結果、協力傾向と転職行動、転職意向には相関関係が見られた。これは、実験結果の知見と整合的だが、因果関係が存在するかどうかについては確認できなかった。方法論については、基本的に進化ゲームやマルチエージェント分析は社会学的に有意義であると考えられる。ただし、今回主に検討したN人囚人のジレンマゲームは社会的ジレンマの定式化としては狭すぎるので、社会的ジレンマはN人チキンゲームなどを含めた広い意味の協力状況として定義した方がよいと考えられた。広義の協力状況一般における選択的移動の研究は今後の課題である。