- 著者
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藤山 英樹
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.1, pp.17-30, 2007 (Released:2007-08-03)
- 参考文献数
- 10
本稿では,利得が確率変数となっている囚人のジレンマ状況での,「開放的関係」と「閉鎖的関係」の相互補完的なメカニズムを明らかにする.「開放的関係」では,個々のプレイヤーはランダムにマッチングされ,1回限りのゲームを繰り返すことになる.「閉鎖的関係」では,ゲームの相手は固定され,協力行動が繰り返されると仮定する.結論としては,どちらか一方の関係しかないときよりも,両関係が存在し,相互間でダイナミクスが存在するときに,社会的効率性の向上が示された.すなわち,「開放的関係」において,社会の多様性が維持され,「閉鎖的関係」において,その望ましい関係が短期で終わらずに保護され,かつダイナミクスによって選択過程が果たされることによって,内生的な利得の向上が実現する.ただし,選択過程が機能するには,ランダムな「閉鎖的関係」の解消確率が十分に小さくなければならない.これまでは,開放的な社会関係(「一般的信頼」)と閉鎖的な社会関係(「コミットメント」)が対立的にとらえられてきた(山岸 1998).しかしながら,現実的にはその双方が社会に存在し,佐藤(2005)も示すように,それらは補完的に作用し,社会の効率性の向上に双方が寄与できるのである.